前立線

誤解

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今まで解説してきた下部尿路症は、基本的考え方は恐らくこうでしょう。

①前立腺肥大症は、前立腺肥大症が膀胱を刺激して、頻尿・残尿感・尿意切迫感が出現する。前立腺の手術をしても治らない人がいる。
②急性膀胱炎は、バイ菌が刺激して、膀胱粘膜が過敏に反応して、頻尿・残尿感が出る。若いご婦人のこの病気はセックスの後に起こる。しかし、高齢者の場合は原因不明である。
③慢性前立腺炎は、前立腺の炎症が膀胱を刺激して、頻尿・排尿痛・陰部の痛みが出る。抗菌剤を長期間投与しても治らない。
④間質性膀胱炎は、膀胱の粘膜に原因不明の炎症が起きで、頻尿・膀胱の強い痛みになる。萎縮した膀胱を水圧拡張しても治らない。
⑤過活動膀胱は、原因不明で頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁になる。
⑥膀胱疼痛症候群は、原因不明で軽い頻尿程度がある程度、主症状は排尿に関係なく膀胱の痛み。麻薬の痛み止めを服用しても治らない。

結局は、すべての病気の原因を膀胱が受け止めて、下部尿路症状を作っているのだろうという考え方です。その割には、原因と思われる病態を治療してもなかなか治りません。さらに原因が別としても、膀胱は同じですから、同じ症状でもいいと考えられませんか?何故いろいろと違う症状なのでしょう。明らかな膀胱粘膜の炎症である細菌性急性膀胱炎と同じ頻尿・残尿感・排尿痛にならないのでしょう?……どうしてでしょうか?
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これには、理由があるのです。
前回解説したように、疫学的調査で症状を比較すると、尿勢低下のみが「機能障害」です。一般的に、病気の症状は、機能障害が原因で、その他の症状を作っていると考えられます。機能障害で排尿時に膀胱括約筋と膀胱三角部が弛緩しないため、膀胱出口が開かないために排尿障害になります。弛緩しない膀胱括約筋と膀胱三角部は、縦走筋と力比べするために、膀胱括約筋・膀胱三角部が肥大化・肥厚化し、ますます排尿障害を悪化します。
①排尿障害が悪化すると、
ⅰ.膀胱内圧のエネルギーが、長期間前立腺を刺激したため、前立腺が対応反応して肥大化→「前立腺肥大症」になる。
ⅱ.膀胱内圧が長期間に渡って上昇するので、膀胱自身が疲弊する。疲弊の結果、
a)膀胱が弛緩する→「神経因性膀胱」
b)膀胱が萎縮する→「間質性膀胱炎」

さらに膀胱三角部は尿意を知覚するセンサーですから、肥厚化によって尿意エネルギーは大量に産生されるために、脊髄神経回路を介して、頻尿・残尿感・尿意切迫感・切迫性尿失禁・膀胱の痛み・陰部の痛み・シビレ・痒みになるのです。
①男性で不定愁訴があって、前立腺が大きくないと、→「慢性前立腺炎」
②尿検査で白血球/細菌が見つかると、→「慢性膀胱炎」
③検査結果がほぼ正常で精神的に落ち込むと、→「心因性頻尿」
④検査結果が多少異常があっても、痛みがとても強いと、→「膀胱疼痛症」
⑤痛みの領域が広いと、→「慢性骨盤疼痛症候群」
⑥検査結果がほぼ正常だと、→「過活動膀胱」

ご覧のように、下部尿路症で付けられた診断名の根拠が、如何にいい加減か分かります。診断名から治療しても、病気が治るとは思えません。診断名を考案した医師たちの短絡的な発想が情け無い。表向きの症状だけで病名を作るのは、素人でも作れることです。
イラストで示すように、病気の根本的原因は、排尿障害と膀胱括約筋・膀胱三角部の肥大化と異常興奮が原因です。そのために、排尿障害の治療薬であるα1ブロッカーと、膀胱三角部の興奮を抑えるβ3作動薬と抗コリン剤が必要になるのです。

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見えてきた排尿障害の仕組み

過去にたくさんの排尿障害の仕組みを考察してきました。
検査所見の存在に対して、疑問点が常にありました。排尿障害の患者さんには、男女問わず、膀胱出口が硬く盛り上がっていました。その理由については、排尿障害のために膀胱出口が排尿時に振動するので、次第に膀胱出口が盛り上がると考えていました。でも実際に、内視鏡手術の際に膀胱出口を切開・切除すると、そこは必ず平滑筋組織です。もしも振動エネルギーで盛り上がっているのであれば、線維組織のはずです。つまり、盛り上がった膀胱出口の組織は、膀胱括約筋の二次的な姿なのです。排尿障害の患者さんの膀胱括約筋は、必ずマッチョなのです。

マッチョになるためには、振動エネルギーではなく、筋トレによるものだと考えられます。筋トレ?……膀胱括約筋の筋トレ相手は、排尿時に収縮する膀胱出口周囲の縦走筋です。つまり何らかの理由で、排尿時に膀胱括約筋が柔らかく弛緩しないので、縦走筋に引っ張られる際に鍛えられたのでしょう。

そう考えると、α1-ブロッカーであるユリーフやハルナールなどの即効性の理由が理解できます。α1-ブロッカーは、前立腺や尿道の緊張を緩めるのではなく、膀胱括約筋=内尿道括約筋の緊張を緩めるので、膀胱出口が開きやすくなるのです。
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膀胱の構造は、大きく分けて膀胱体部、膀胱三角部、膀胱出口(膀胱頸部)に分けられます。筋肉の観点から見ると、膀胱体部は二層構造で、内側が輪状筋、外側が縦走筋です。輪状筋は、膀胱の横方向の直径を小さくするように収縮させます。縦走筋は膀胱の外側に存在し、膀胱の天辺の部分が膀胱出口に向かうように収縮させます。この2つの筋肉の働きで、膀胱は膨らんだり縮んだりするのです。膀胱出口は複雑で、膀胱出口ギリギリまで輪状筋と縦走筋が到達し、その内側に膀胱括約筋=内尿道括約筋が位置します。先ほど説明したように、排尿障害のある人は、膀胱出口周囲の膀胱括約筋が発達・肥厚しています。これは、縦走筋と膀胱括約筋の排尿時の動きがシンクロせずに、逆にバランスが悪く、縦走筋が収縮する時に膀胱括約筋が緩まないで対抗している証拠です。

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この画像は、3Dエコー検査で観察した膀胱出口の所見です。
見て分かるように、膀胱出口を中心とした同心円状ではありません。
これを分かりやすく説明したのが、次のイラストです。


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イラストで見えるように、輪状筋は、膀胱三角部を挟んでブーメランの様な形をしています。
何故この様な形状をしているかは、それなりの理由があります。
発生段階で、尿管の原基を囲むように輪状筋が発達したからです。そして、尿管の原基から膀胱三角部が形成したのです。

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3Dエコー画像を元に、下部尿路の基本的構造を左のイラスト側面像で示しました。
膀胱出口周囲に存在する赤い部分が、どちらも膀胱括約筋です。
前の部分が膀胱出口前面で、後ろの部分が膀胱三角部に当たります。
膀胱内側の肌色の部分が輪状筋で、外側の空色の部分が縦走筋です。

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健常であれば、右のイラストで示すように排尿時に、前後の膀胱括約筋が先ず緩みます。
そして縦方向に収縮した縦走筋の意のままに膀胱出口は開き、オシッコがスムーズに出るのです。
一連の動作は自律神経によってコントロールされており、人の意識は息むだけです。
この排尿に関わるいくつかのステップに支障が出ると、排尿障害になるのです。

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排尿障害の患者さんは、どう言う訳か膀胱三角部も含め、排尿時に弛緩しないでギューっと収縮します。縦走筋が収縮して膀胱出口を開こうとしても十分に開かないのです。
この経過が長期間に渡ると、膀胱括約筋が縦走筋と筋トレしていることになり、イラストのように次第にマッチョになります。排尿障害の患者さんをエコー検査で観察すると、膀胱出口前部の膀胱括約筋と膀胱三角部の膀胱括約筋が厚くなり、膀胱側に突出しています。

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この膀胱括約筋の肥厚は、イラストで表現したように、まるで膀胱出口を鍵でロックした状態になるのです。
この状態が何十年も続けば、縦走筋や輪状筋は疲れ果てて、男女関係なく神経因性膀胱と診断されます。排尿時の圧力が前立腺を刺激して、前立腺肥大症になります。膀胱三角部が突出すると、中葉肥大型と判断される形状です。
排尿障害の患者さんの内視鏡手術の際には、この固くなった膀胱括約筋の切開・切除が重要になります。ところが、前立腺肥大症だと、「肥大症」とい言葉に翻弄されて前立腺しか手術しないので、手術後も排尿障害が続くのです。

以上のように排尿障害し続くと、何故に頻尿・残尿感・尿意切迫感などの症状が発現するのでしようか?実は、膀胱三角部の括約筋は、圧力センサーでもあるのです。通常は蓄尿で膀胱内圧が高まると、その圧力が膀胱三角部の圧力センサーを刺激して尿意を感じるのです。ところが、膀胱三角部が肥厚したために膀胱三角部の組織密度が高まり、膀胱内圧の反応閾値に関係なく、圧力センサーが過剰に反応してしまうのです。

治療としては、膀胱括約筋の緊張を緩めて上げれば良いのです。そのために、ユリーフ・ハルナール・フリバスなどのα1-ブロッカーの処方です。ご婦人の場合は、エブランチルしか処方できません。
次に膀胱三角部に特異的に作用するベタニスなどのβ3刺激剤が有効になります。
また、膀胱内圧を下げることで、膀胱三角部の圧力センサーを二次的に刺激しないように、輪状筋の過敏性収縮を抑えることです。そのために、ベシケア・ステーブラ・トビエースなどの抗コリン剤が必要になります。
一般的に抗コリン剤で膀胱収縮力が低下するというデータはありませんから、縦走筋には抗コリン剤の作用するムスカリン受容体は、おそらく分布が少ないのでしょう。ですから、膀胱内側の薄い輪状筋だけに抗コリン剤が作用するのです。

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グリソンスコア5+5=10のラテント癌

今回、ご紹介するのは、PSA値が高く心配になり、平成29年6月に来院した72歳の男性患者さんです。
平成28年にPSA値が5以上になり、診療所や大学病院で前立腺針生検をすすめられました。当院初診時には、超音波エコー検査でも触診でも、前立腺癌の所見は認められませんでした。

夜間頻尿(2回~6回)があり、超音波エコー検査で前立腺結石と膀胱三角部の肥厚を認めたので、排尿障害によるPSA値上昇と判断したのでした。
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その後も超音波エコー検査と触診を2回実施しましたが、前立腺癌の所見は得られませんでした。
その間、PSA検査を受け、その値が11を超えることもあり、患者さんは悩みました。また、周囲の友人のアドバイスも受け、私に内緒で、某がんセンターで前立腺針生検を受けてしまったのです。その結果、12本中2本に前立腺癌が発見されてしまいました。それもグリソンスコア5+5=10の悪性度の一番高い前立腺癌でした。
エコー検査や触診で確認できなくて、針生検で12本中2本ですから、ステージⅠのラテント癌ということです。問題なのは、悪性度の高いグリソンスコア10の前立腺癌を針生検で刺激してしまったことにあります。患者さんは、急いで当院を受診して今後の方針を相談に来られました。半ば後悔をしているようです。
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先ず、針生検した病院での治療方針が決まるまで、骨シンチ、MRI検査の結果待ちで3週間ほどありました。主治医は何も考えずに、計画を立てて待っています。
その間に針生検による傷害を治すために、体内の免疫・炎症システムが活発になります。結果、免疫細胞に傷付いた癌細胞は、マクロファージに貪食されるか、別の場所に運ばれてしまいます。それが、前立腺癌の骨転移や前立腺癌の浸潤になる可能性もあるのです。

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能力の高い前立腺癌細胞が、自分たちの受けている状況を何もせずに傍観している訳がありません。癌細胞にとって、出来ることは、細胞分裂しかありません。癌細胞が細胞分裂をすればするほど悪性度が増すのです。癌細胞は通常3〜6週間に1回バラバラに分裂しますから、放置できません。
治療方針が決まるまで、エストラサイトを週1回1カプセルの低容量を服用してもらいました。その後、重粒子線治療を決めたのですが、人気で混んでいるため9月に開始することになりました。それまで、エストラサイトを続けて服用していただきました。

今回の記事は、この患者さんからのご希望で掲載しました。いろいろな体験をされる患者さんがおられます。記事を参考にベストの選択をされてください。


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PSA値141で悩む患者さん

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健診の血液検査で、PSA値が何と141も高かかったので、医療関係者の娘さんとご一緒に60歳代の患者さんが心配そうな面持ちで来院されました。
エコー検査の所見は、写真で示すように、前立腺の外腺に相当な体積(3.44㏄)で前立腺ガンを確認できます。赤い矢印➡が前立腺ガンで青い矢印➡が精嚢腺です。
触診でも右葉〜中央にかけて硬結が触れます。間違いなく前立腺ガンです。触診の硬さからすると、グリソンスコア7〜8でしよう。

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患者さんは、針生検は受けたくないが、手術か放射線治療を選択したいという雰囲気です。しかし、針生検を受けないと、希望する治療法は選べません。私が唱える、「針生検が逆に前立腺ガンに火をつけて、悪性度が増すかもしれない」という理論にも納得しているので、決断がつかないのです。
グラフで示すように、前立腺針生検直後から悪性度の高い前立腺ガンの患者さんの生存率は極端に低下します。前立腺針生検するまでに、隠れていた悪性度の高い患者さんがすでに多く亡くなっていあたというデータはありません。どう考えても前立腺針生検が引き金になっていたのでしょう。

そこで、患者さんに提案をしました。針生検の2日前と前日の2日間だけエストラサイト(女性ホルモン+抗ガン剤)を1カプセル服用して、針生検によるガンの興奮を一時的に抑えること。術後、毎週1回1カプセル服用して、その後のガンの興奮を抑え込もうというものです。患者さんは、私の提案を承諾して頂けました。


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陰部の痛みを「歳のせい・気にせい」と言われた高齢者

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以前からオシッコが近い70歳過ぎのご高齢の患者さんです。ご家族3人でお越しになりました。
昨年の夏頃から陰部がピリピリ痛くて仕方がありません。そこで、診療所や病院を3軒受診しましたが、前立腺肥大症の診断で、ハルナールとセルニルトンを処方されましたが、症状は改善しません。
最近では、肛門まで痛くなり、肛門科を受診しましたが、いぼ痔があるだけで、特に問題なしと診断されたのです。
泌尿器科の医師は、「歳のせい・気のせい」とまで言われてしまいました。
早速、超音波エコー検査を行いました。この写真だけでは分かりにくいので、下にコメントを記しました。

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すぐに分かることは、膀胱括約筋ふが四方に分裂していることです。これは、排尿障害によって、膀胱括約筋に物理的負荷がかかった結果です。そのため、膀胱三角部が厚くなり、膀胱刺激症状がいくつも作られても不思議ではありません。陰部のピリピリ感も肛門の痛みも膀胱刺激症状の一つと考えられます。
前立腺も大きさは31㏄と若干大きいだけです。治療薬としては、
①ユリーフ
排尿障害を改善させるため
②アボルブ
前立腺を柔らかくすることで、前立腺から膀胱三角部への緊張がゆるませるため
③ベタニス
膀胱三角部の緊張をゆるませるため

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膀胱括約筋の変形

排尿時に、尿道括約筋が尿道側にけん引されます。その際に膀胱括約筋が収縮することによって、膀胱出口がロート状に開くことで、排尿します。
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この膀胱括約筋と尿道括約筋の連携が円滑にできないと、排尿障害になります。尿道括約筋は、ヒトの意志で収縮しますが、膀胱括約筋は自律神経の働きで、ヒトの意志ではコントロールできません。排尿障害の患者さんは、長年に渡って、膀胱括約筋の断端が、尿道括約筋によってけん引され続けるので、断端が変形します。今回、その変形した症例をいくつかご紹介しましょう。

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まずは、ほぼ正常な膀胱括約筋の姿です。正常であれば、膀胱括約筋の方向は一方向に向かっています。その方向は、膀胱出口です。膀胱括約筋によって膀胱出口が開けば、尿道括約筋のけん引力は、膀胱出口だけにかかるので、膀胱括約筋には影響は及びません。実は、50歳代の頃の私の膀胱括約筋の姿です。

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60歳代患者さんの膀胱括約筋の拡大写真です。
膀胱括約筋の末端の方向が2つに分かれています。
下の方向に分かれている部分は、尿道括約筋によって力強くけん引された結果です。

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30歳代患者さんのエコー検査所見です。
排尿障害が原因の慢性前立腺炎症状で苦しまれています。
やはり、膀胱括約筋が2方向に分かれています。

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70歳代患者さんです。
過去に前立腺肥大症の内視鏡手術を受けています。ところが、手術の後も、頻尿や痛みが治りません。
エコー検査の所見では、前立腺は削り取られていますが、膀胱三角部が手つかずで残っているので、症状がなくならないのです。
膀胱括約筋も2方向に分裂しています。

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この患者さんの膀胱括約筋は、実に大きく分裂しています。
長年かかって、繰り返し膀胱括約筋に物理的負担がかかると、こんなにも大きく開いてしまうのです。

排尿障害の患者さんが、皆んながみんな膀胱括約筋が変形している訳ではありません。多くの患者さんに認められます。2方向性の分裂所見のない患者さんの場合は、膀胱括約筋の方向が膀胱出口に向かずに、尿道括約筋の方向に向くことになります。いわゆる偏向型です。ご婦人の排尿障害の患者さんの場合は、ほとんどが分裂型ではなく、この偏向型が多いのです。

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平滑筋のスイッチ

前立腺肥大症・慢性前立腺炎・過活動膀胱・間質性膀胱炎などの治療に使用される薬剤のほとんどが、平滑筋に影響する薬理作用を持っています。
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平滑筋は、すべての内臓を構成する筋肉です。体を動かす時に使う筋肉は骨格筋(横紋筋)です。内臓の筋肉とはいえ、筋肉ですから、収縮と弛緩を繰り返します。収縮=緊張、弛緩=リラックスの状態です。その動きの典型的なものが胃や大腸の蠕動運動です。これらの動きは、骨格筋に比べてとても複雑です。その理由は、たくさんの平滑筋細胞がお互い密接に連絡しあって情報交換をしているからです。一部の平滑筋は自律神経(交感神経・副交感神経)と連絡しており、そこから得た情報を隣接する平滑筋に次々と伝達するのです。まるで、伝言ゲームのようです。

自律神経に関わらないのが、一酸化窒素NOです。一酸化窒素が平滑筋にそばに存在すると、受容体を介さないで無条件で平滑筋内に侵入します。一酸化窒素は、平滑筋をリラックスさせる作用があるのですが、平滑筋の中で、直ぐに消滅してしまいます。
何の受容体かは不明ですが、大豆イソフラボンの受容体、正露丸の受容体、タガメットがブロックする受容体(H2レセプター)なども、長年の臨床経験上ある筈です。

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交感神経に反応するのが、膀胱・前立腺の平滑筋のα₁−受容体、β₃−受容体です。
副交感神経に反応するのが、平滑筋のM−受容体です。
交感神経が興奮すると、膀胱出口・前立腺にあるα₁−受容体を刺激し、オシッコを出にくくします。さらに、膀胱三角部にあるβ₃−受容体を刺激し、尿を我慢させます。受容体は平滑筋に変化を促す【スイッチ=受容体】です。逆に副交感神経が興奮すると、膀胱体部の平滑筋にあるM−受容体を刺激して膀胱を収縮させます。

この仕組みを考慮して病気の治療を考えると、次のようです。
排尿障害が病気の原因ですから、膀胱出口・前立腺をリラックスさせるために、α₁−受容体をブロックするクスリとして、ユリーフ・ハルナール・フリバスを使用するのです。
また、膀胱三角部をリラックスさせるために、β₃−受容体刺激剤のベタニスを使用するのです。
さらに、膀胱体部をリラックスさせるために、M−受容体をブロックするクスリとして、ベシケア・ステーブラ・ウリトス・トビエースを使用します。
ただし、平滑筋の数々の受容体の分布は、患者さんの膀胱や前立腺の位置によって異なるので、その組合せの影響で、とても効くヒトもいれば、まったく効かないヒトもいます。

平滑筋の緊張をリラックスさせることで、膀胱や前立腺の過敏な症状が軽減できるのかと言えば、平滑筋は筋肉としての動力装置でもありますが、実はセンサー・感覚器でもあるのです。

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レーザー光線手術をしたのに、頻尿・痛みが治らない患者さん

70歳代の男性患者さんがご夫婦で来院されました。
2年前から恥骨部分が痛くて仕方がないそうです。5年前に尿閉を繰り返したので、レーザーを使った前立腺肥大症の手術を行いました。
しかし、手術後も頻尿は改善せずに、毎日15回の頻尿と、夜間2回の頻尿です。さらに、恥骨の痛みが加わり、患者さんは苦しみ悩んでいるのです。
複数の病院を受診して、CT検査などの精密検査をしたにもかかわらず治らないので、精神科にも受診させられました。
娘さんが、インターネットで高橋クリニックを見つけて来院しました。
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早速、超音波エコー検査をおこなうと、写真のような所見です。
これをご覧になっただけでは、ハッキリ分からないでしょう。
そこで、説明を加えたのが、次の写真です。

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黒く見える大部分が尿の見えるところです。
レーザー光線で手術を行い、切除された部分が三角形線で示す部分です。
口を開けたヘビのように見える膀胱括約筋の上に、膀胱三角部(赤い→)がハッキリ確認できます。
これで、患者さんの痛み症状と頻尿症状が、前立腺肥大症の手術を行ったにもかかわらず治らなかった理由です。

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排尿障害→前立腺肥大症→頻尿になる理由を解説しましょう。
排尿障害によって、排尿中に膀胱出口は十分に開きませんから、膀胱出口が振動します。
その振動により、膀胱三角部が過敏になり肥厚します。
膀胱三角部は、尿意のセンサーですから、ここが過敏になると、頻尿や痛みが作られます。

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最先端のレーザー光線手術で、前立腺肥大症の主な部分(腺腫)を摘出して、それを細かくスライスして膀胱から除去します。
前立腺肥大症の手術だから、前立腺さえ除去すれば良いと、未熟な医師が考えるのです。

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ところが、前立腺は小さくなって、オシッコの出は良くなりましたが、過敏になった膀胱三角部が手付かずです。結局、過敏になったセンサーはそのままですから、症状が治る訳がありません。
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【前立腺肥大症=排尿障害→頻尿+痛み】
と考えて、短絡的に前立腺肥大症を手術さえすれば、症状がなくなる!と思い込んでいるのです。病気は、そんなに単純ではありません。
本当は、
【排尿障害→前立腺肥大症+膀胱三角部の過敏→排尿障害の悪化+頻尿+痛み】
というのが、この病気の仕組みなのです。
治療は、前立腺肥大症と膀胱三角部の処置が必要になります。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
この状態を解決するためには、膀胱三角部を落ち着かせることを目標とします。
①膀胱出口の緊張を緩めるために、ユリーフ
②膀胱三角部を直接に緩めるために、ベタニス
③残っている前立腺の硬さを柔らかくするために、アボルブ
④痛みは脊髄中枢で合成された痛みなので、脊髄中枢の興奮を抑える、トラムセット

以上の治療で改善が得られなければ、内視鏡手術で膀胱三角部を処置すればよいのです。


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去勢抵抗性前立腺ガンCRPCの発現率

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前立腺ガンを標準治療でテストステロン(男性ホルモン)を抑制するホルモン治療を行うと、4年~5年で効かなくなります。この状態の前立腺ガンを去勢抵抗性前立腺ガンCRPCと呼びます。

どの程度の頻度で、この状態になるのか明確に記された文献がないので、いろいろ調べてみました。すると、こんな表を見つけました。癌が骨転移する確率と、その予後(生存期間)です。
前立腺ガンの場合、骨転移が発現する確率が、【65%~75%】とかなりの高さです。2人に1人以上の危険率で骨に転移したということになります。ただし、初めから骨に転移した人は別です。ホルモン治療しているにもかかわらず、骨にガン細胞が転移すると言う事は、すなわち、ホルモン治療では抑えることが出来なくなった前立腺ガンと言うことになります。つまり、【骨転移≒去勢抵抗性前立腺ガン】ということです。

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先の表と同じサイトには、前立腺ガンの治療経過を示すイラストが併記されています。
このように、治療法・治療経過がイラストで表示できるほど、決まりきった前立腺ガンの個性なのです。では、どうして前立腺ガンは、このような性格が出てくるのでしようか?

前立腺ガンに、この特有な個性を促した要素かあるかもしれません。治療する前と後では、何が違うかと言うと、毎日のホルモン治療がキッカケです。ホルモン治療は、前立腺ガンを相当抑えることは出来ますが、完璧ではありません。そのために、ガン細胞がバージョンアップして、去勢抵抗性前立腺ガンが生まれるのです。「毎日」の治療がいけないのです。ガン細胞に治療を気付かせるのが去勢抵抗性前立腺ガンが生まれる原因だと私は考えています。

もしそうだとしたら、毎日ではなく、ガン細胞が気付かせない治療法を選択すれば良いと思います。つまり、密かに計画的に気付かないようにガン細胞の食事に毒を盛るような暗殺をするのです。
もう1つの考え方として、毎日大量の薬を間断なく連続して治療を続けると、ガン細胞の変身のストッパーを毎日1個ずつ外してしまうのではないでしょうか?そのため、治療を少量で1週間に1錠、2週間に1錠であれば、ガン細胞の変身ストッパーを外す時間がかかって、7年〜14年以上延ばすことが出来るかもしれません。
教科書的の知識だけが、常に正しいとは限りません。教科書的な知識の境界線を超えるような柔軟な発想で、目の前の事実の本質を見極めるべきです。

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予想以上に早く確認された前立腺ガン

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72歳の男性患者さんです。
去年の8月にPSA値が5.61と高く心配になり、関西からお越しになりました。
超音波エコー検査や触診で、前立腺ガンは確認できませんでしたから、経過観察にしました。

ところが9カ月後の5月に、PSA値が8.658と若干高くなったので、心配になり再度患者さんがお越しになりました。超音波エコー検査では、以前確認できなかった陰影が前立腺の左に(赤い矢印)確認されました。陰影の大きさは0.89ccの体積です。触診でも、前立腺の左に硬結が触れました。明らかに前立腺ガンです。

前立腺ガンは、倍加速度が速いもので2年と言われていましたが、例外もあると認識さました。前回、エコー検査でも触診でも認識できなかった前立腺ガンが、たった9カ月で確認できるまでになった訳ですから、倍加速度2年というのは正直安心できません。注意深く観察するためには、出来れば半年に一度のペースが良いのでしょう。

遠方から飛行機に乗って、3か月に一度来院される患者さんもおられますが、さすがに半年に一度で十分でしょう。交通費が勿体ないと思います。

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