検査

PSAの原因



Psasyst1PSAは前立腺の腺腔に溜められているタンパク質分解酵素です。精子が自由に動けて妊娠の可能性を高くする酵素です。精液をサラサラにするのです。

PSAがタンパク分解酵素ですから、目的の精液以外に触れると悪影響があるかもしれません。そのために前立腺細胞で囲まれているのです。しかし初めのイラストに示すように漏れ出てしまうことがあるのです。
❶前立腺肥大症や膀胱頚部硬化症があると排尿の都度前立腺に圧力がかかりPSAが漏れ出ます。
❷前立腺ガン細胞だあると、正常の前立腺細胞よりもシールドが不完全なのでPSAが漏れ出てしまいます。
❸過去にPSAが高いと前立腺針生検をされていると、後遺症で穴が開いてPSAがさらに高くなります。すると、前立腺ガンが増加したと、何回も前立腺針生検をしてしまうのです。
❹生まれつき前立腺にすき間の開いている人がいます。当然、PSAは高くなります。



Psasyst2 以上のことから分かるように、PSAは前立腺ガンだけで高くなる訳ではありません。ですからPSAが高いからと言って何も考えずに前立腺針生検を行うのは・・・問題です。
私は2枚目のイラストのように対処しています。
❶触診で前立腺ガンが触れなければ、PSAが高くなる原因のほとんどが排尿障害です。前立腺に隠れた前立腺ガンを発見するために針生検を行うと、刺激されたガン細胞が増殖し、さらに悪性度が増すのです。
❷触診で前立腺ガンが触れても、針生検をしないで治療を行えば、寿命に影響しません。

これらを色々考えて治療方法を考えるべきです

 

 

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残尿量正常値の意味

一般的に泌尿器科医が、残尿量の正常範囲は50ml以下と判断しています。

ところが、この数値は嘘です。解剖学や生理学の教科書には、排尿後の残尿量はゼロ(0ml)が正常と明確に記載されています。にもかかわらず、臨床の泌尿器科医は、何故50mlまで正常と断定するのでしょう。臨床医学と基礎医学は違うのでしょうか?

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これには、ある訳があるのです。
今でこそ前立腺肥大症の手術は一般的で、日本中どこの泌尿器科でも実施されている手術です。内視鏡手術、レーザー光線手術などいろいろです。出血もなく、私などは日帰り手術で行っています。
ところが、その昔、前立腺肥大症の手術は開腹手術でした。イラストで示すように、下腹部を切開して前立腺を露出します。前立腺被膜に平行に6か所に太い縫合糸で事前に予防的止血縫合をします。前立腺被膜下の動静脈を予め縛って止血することで、術中術後の出血を出来るだけ抑えるための処置です。止血縫合糸の間を切開して前立腺を摘出するという方法です。

この方法が確立するまで、前立腺手術には術中・術後も、かなりの出血でした。そのため、大量の輸血や出血死する患者さんがいました。当時の日本は、泌尿器科の専門医は確立されておらず、外科医が前立腺の手術を行っていました。ある外科医が臨終間際に息子の外科医に遺言を残したそうです。「前立腺だけは、手を出すな!」と。泌尿器科専門医が確立された後も、安全な手術法は確立されていませんでした。そのため、どうしても手術しなければならない程、具合の悪い人だけを手術することにしたのです。

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そのための具体的な基準の一つに、排尿障害の程度を決めたのです。それが、残尿50ml以上だったのです。つまり、無暗やたらに手術での被害者を作らないための方策が、残尿50ml以上だったのです。
その50ml以上の基準が独り歩きして、残尿量50mlまでは正常=排尿障害なしと間違った解釈に進んでしまったのです。

基礎医学の生理学・解剖学に記載されている様に、排尿直後の残尿量は、ゼロ(0ml)が基準です。残尿量が、例え10mlであっても正常ではなく、排尿障害が必ず存在します。

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超音波エコー検査で分かる前立腺・膀胱の形態学的変化

私は、排尿に問題をかかえた患者さんに対して、必ず超音波エコー検査を実施します。
一般的に、泌尿器科医は、エコー検査なるものを正式には学習していません。大学病院などの大きな病院では、放射線科の医師や検査技師が、ルーティンの方法でエコー検査し、その診断を放射線科医が読影し、診断結果を泌尿器科医が参考に読んでいるだけです。
放射線科医も画像を見ているだけで、実際の患者さんを診ずに診断しています。実際の患者さんの訴えや他の所見をフィードバックなしで診断しています。ある意味、画像だけの机上の空論を報告書に書いているだけです。
私は、大学病院勤務時代はエコー検査に重きを置いていませんでした。研修医の頃のエコー検査機器は、大した画像ではなかったからです。

ところが、救急病院に転職したら、そんなことは言っていられませんでした。急患の状態を正確に把握するためには、血液検査、レントゲン、心電図、CT検査、聴診器、身体的所見、エコー検査しかありません。これらの検査情報を駆使して、患者さんの状態を正確に把握して、緊急手術するかしないかを、短時間に決断するのです。

その際に、エコー検査がとても重宝しました。そのころには、エコー機器も進歩し、画像はとても鮮明でした。リアルタイムに所見が得られ、患者さんの顔を見ながら、患部に直接アプローチ出来るのです。患者さんの症状とエコー所見の一致を何度も経験しました。そんな状況で、エコー検査を毎日5件以上実施し、年間1500件、救急病院の3年間で4500件以上研鑽しました。すると、その救急病院の毎日のエコー検査担当は、外科医の私になったのです。

開業医になってからは、年間500件✖️28年=1万4000件もの多くの患者さんを診ています。ですから、初診の患者さんが過去のエコー検査で異常なしと診断されたと言われても私は信じませんし、異常のなかった患者さんに遭遇したこともありませんでした。
そこで、エコー検査所見の主な要点を解説しました。

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