検査

残尿量正常値の意味

一般的に泌尿器科医が、残尿量の正常範囲は50ml以下と判断しています。

ところが、この数値は嘘です。解剖学や生理学の教科書には、排尿後の残尿量はゼロ(0ml)が正常と明確に記載されています。にもかかわらず、臨床の泌尿器科医は、何故50mlまで正常と断定するのでしょう。臨床医学と基礎医学は違うのでしょうか?

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これには、ある訳があるのです。
今でこそ前立腺肥大症の手術は一般的で、日本中どこの泌尿器科でも実施されている手術です。内視鏡手術、レーザー光線手術などいろいろです。出血もなく、私などは日帰り手術で行っています。
ところが、その昔、前立腺肥大症の手術は開腹手術でした。イラストで示すように、下腹部を切開して前立腺を露出します。前立腺被膜に平行に6か所に太い縫合糸で事前に予防的止血縫合をします。前立腺被膜下の動静脈を予め縛って止血することで、術中術後の出血を出来るだけ抑えるための処置です。止血縫合糸の間を切開して前立腺を摘出するという方法です。

この方法が確立するまで、前立腺手術には術中・術後も、かなりの出血でした。そのため、大量の輸血や出血死する患者さんがいました。当時の日本は、泌尿器科の専門医は確立されておらず、外科医が前立腺の手術を行っていました。ある外科医が臨終間際に息子の外科医に遺言を残したそうです。「前立腺だけは、手を出すな!」と。泌尿器科専門医が確立された後も、安全な手術法は確立されていませんでした。そのため、どうしても手術しなければならない程、具合の悪い人だけを手術することにしたのです。

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そのための具体的な基準の一つに、排尿障害の程度を決めたのです。それが、残尿50ml以上だったのです。つまり、無暗やたらに手術での被害者を作らないための方策が、残尿50ml以上だったのです。
その50ml以上の基準が独り歩きして、残尿量50mlまでは正常=排尿障害なしと間違った解釈に進んでしまったのです。

基礎医学の生理学・解剖学に記載されている様に、排尿直後の残尿量は、ゼロ(0ml)が基準です。残尿量が、例え10mlであっても正常ではなく、排尿障害が必ず存在します。

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超音波エコー検査で分かる前立腺・膀胱の形態学的変化

私は、排尿に問題をかかえた患者さんに対して、必ず超音波エコー検査を実施します。
一般的に、泌尿器科医は、エコー検査なるものを正式には学習していません。大学病院などの大きな病院では、放射線科の医師や検査技師が、ルーティンの方法でエコー検査し、その診断を放射線科医が読影し、診断結果を泌尿器科医が参考に読んでいるだけです。
放射線科医も画像を見ているだけで、実際の患者さんを診ずに診断しています。実際の患者さんの訴えや他の所見をフィードバックなしで診断しています。ある意味、画像だけの机上の空論を報告書に書いているだけです。
私は、大学病院勤務時代はエコー検査に重きを置いていませんでした。研修医の頃のエコー検査機器は、大した画像ではなかったからです。

ところが、救急病院に転職したら、そんなことは言っていられませんでした。急患の状態を正確に把握するためには、血液検査、レントゲン、心電図、CT検査、聴診器、身体的所見、エコー検査しかありません。これらの検査情報を駆使して、患者さんの状態を正確に把握して、緊急手術するかしないかを、短時間に決断するのです。

その際に、エコー検査がとても重宝しました。そのころには、エコー機器も進歩し、画像はとても鮮明でした。リアルタイムに所見が得られ、患者さんの顔を見ながら、患部に直接アプローチ出来るのです。患者さんの症状とエコー所見の一致を何度も経験しました。そんな状況で、エコー検査を毎日5件以上実施し、年間1500件、救急病院の3年間で4500件以上研鑽しました。すると、その救急病院の毎日のエコー検査担当は、外科医の私になったのです。

開業医になってからは、年間500件✖️28年=1万4000件もの多くの患者さんを診ています。ですから、初診の患者さんが過去のエコー検査で異常なしと診断されたと言われても私は信じませんし、異常のなかった患者さんに遭遇したこともありませんでした。
そこで、エコー検査所見の主な要点を解説しました。

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