排尿機能障害の証拠
排尿機能障害が原因で、見せかけ上の様々な病気が発症します。前立腺肥大症、慢性前立腺炎、慢性尿道炎、慢性膀胱炎、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症、慢性骨盤疼痛症候群などです。
これらの病気の検査で排尿機能障害を確認するための、尿流曲線検査ウロフロメトリー、膀胱内圧測定検査を行っても、極端な後遺症が出なければ、異常と認められません。明確に確認される場合は、その時点で「神経因性膀胱」と診断されだけです。それまでは、初めのたくさんの病気として苦しまれるだけなのです。そして、神経因性膀胱と診断されても、治療方法がないのです。
そのような経過にならないように、事前に知るべきなのです。その検査が、エコー検査なのです。そこで、エコー検査の主な特徴的な所見を解説しましょう。
❶膀胱出口がVの字:健常であれば、膀胱出口は少し凹んでいるか、ほぼ平の筈です。ところか、排尿機能障害が長期間継続すると、出口の周囲が膀胱サイドに飛び出てくるのです。
❷膀胱排尿筋の走行異常:膀胱括約筋に柔軟性が無くなり、排尿する際に膀胱出口が開かないまま、尿道括約筋の方向にオシツコの度に引っ張られます。すると、膀胱排尿筋が出口と一緒に尿道サイドに引っ張られるので、膀胱排尿筋の方向が偏位するのです。この偏位が、膀胱三角部に影響を与えるのです。
❸膀胱排尿筋の形態変形:引っ張られる力のエネルギーベクトルの幅が広いと、膀胱排尿筋が変形してしまいます。ヘビの口だったり、お団子状になるのです。この写真では、まるでヘビが大きな口を開けているように見えます。患者さんの苦しんでいる姿を見ると、ヘビに憑かれているように思えて仕方がありません。
❹膀胱三角部の肥厚:膀胱排尿筋が引っ張られると、膀胱粘膜と膀胱排尿筋の間に隙間が空きます。生体ですからスペースをそのままにはしません。そこに周囲の細胞が増殖して埋め合わせをするのです。それが膀胱三角部の肥厚です。
❺前立腺結石:膀胱出口が十分に開かないで排尿すると、尿道内に流れる尿流は、ジェット流になります。ジェット流は尿道粘膜に傷害を与え、粘膜がボロボロになったために、そこに尿中のシュウ酸リン酸カルシウムが付着して石灰が出来ます。石灰が大きくなると尿道が塞がるので、それを避けるために石灰が少しずつ前立腺に吸収されます。それが積もりに積もって前立腺結石なるのです。
❻尿道周囲結石:前立腺結石と同じ理由で、ご婦人の尿道周囲にも石灰・結石が蓄積します。写真は、なかなか治らない慢性膀胱炎で来院した37歳のご婦人の超音波エコー所見です。尿道の知覚に明確な結石が認められます。
❼膀胱頸部の静脈瘤:一般的に瘀血(おけつ)と呼ばれる状態です。排尿時に膀胱出口が十分に開かないと、排尿の圧力(腹圧・膀胱圧力)がすべて膀胱出口=膀胱頚部に物理的負荷がかかります。当然、膀胱頚部周囲の血流が悪くなり、うっ血状態になります。その結果、静脈が拡張して、静脈瘤になるのです。写真の赤い矢印がすべて静脈瘤です。瘀血に対して血流を良くするために、漢方薬である桂枝茯苓丸を処方されますが、原因を解決しないで、血流だけを良くして何の効果があるだ?と思います。
❽膀胱出口の硬化像:排尿の際に、膀胱出口が十分に開かないでオシッコをすると、膀胱出口はブルブル震えて振動します。その状況が毎日何回も何年も起きれば、膀胱出口は振動に負けないように硬くなるのです。硬くなればなるほど膀胱出口の振動は強くなりますから、膀胱出口はますます硬くなるのです。その結果、エコー検査の所見では、出口部分が白く見えるのです。
❾前立腺肥大症:前立腺の健常な大きさは、20CCです。これを少しでも超えたら前立腺肥大症と診断されます。この写真は、大きさが60CCを超えています。さらに膀胱出口がVの字で膀胱三角部が膀胱側に飛び出ており、膀胱排尿筋が膀胱出口から距離があり、だるま状に収縮しています。
以上のどれか一つでも所見があれば、排尿機能障害が隠れていると判断して治療するべきです。
« 難治性の慢性尿道炎 | トップページ | ガンの利点 »
コメント