毎月の膀胱炎に苦しむ高齢のご婦人
今日、新潟から80歳のご婦人がお嬢さんに連れられて来院されました。3年前から何度も何度も膀胱炎を繰り返したのです。ほぼ毎月1回の頻度です。その都度、抗生剤・抗菌剤を処方されて多少は軽快しましたが、またすぐに膀胱炎になるのです。
現在の症状は、毎日25回の頻尿と、オシツコに関係なく常に感じる尿道の痛みです。泌尿器科の専門医に2件受診しましたが、初めは「膀胱炎」という診断でしたが、次に「歳のせい」、「気のせい」という診断でした。
苦しんでいるお母さんを見て辛くなったお嬢さんがインターネットで当院を見つけて来院されたのです。お話しをお聞きして、早速超音波エコー検査をおこないました。予想通りでした。膀胱排尿筋が本来膀胱出口に向いている筈が、見当違いの方向(黒い→)に向いています。尿道口に向いていると思われます。
これは相当以前から排尿機能障害が存在していて、排尿の都度、膀胱排尿筋が尿道括約筋に引張られるので、次第に方向が変異したのです。
そのために相対的に膀胱三角部が厚く肥厚(赤い↔)します。膀胱三角部の厚さは、通常では膀胱排尿筋の先端から約2mmです。この患者さんの場合は、厚さが10mmを越えています。通常よりも5倍以上も厚いのです。例えば、膀胱三角部の厚さ2mmで排尿回数5回だとすれば、単純計算で10mmあれば、5×5=25回になっても不思議ではありません。
排尿機能障害にもかかわらず、以前の主治医が、「膀胱炎だから、水分をたくさん飲みなさい!」と言うので、症状はさらに悪くなるのです。
病気の原因をお話ししたら、患者さんご本人とお嬢さん二人が涙していました。それまでさんざん主治医に相談したにもかかわらず、「歳のせいだ!気のせいだ!治る訳がない!」と怒るように言われていたのだそうです。原因が分かり治療法も分かったので、喜びのあまり泣いてしまったのでした。
治療としては、排尿機能障害の治療薬であるα1ブロッカーと、膀胱三角部の興奮を鎮めるβ3作動薬を基本に処方しました。さらに強い痛みが生じた時のために、一般的な鎮痛剤ではなく、脊髄神経回路をブロックするトラムセットを処方しました。効果があることを期待します。
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