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切迫性尿失禁の本質

過活動膀胱の代表的な症状が「切迫性尿失禁」です。尿意を感じたと同時に尿意切迫感になり、急にオシッコが漏れてしまうのです。切迫性尿失禁のメカニズムについて解説します。

Bulubulu男女問わず、排尿機能障害が存在すると、膀胱出口周辺に物理的負担がかかります。膀胱出口が排尿時に十分に開かないでオシッコする訳ですから、腹圧が膀胱出口に必要以上にかかるのです。すると膀胱出口は細かく振動します。ちょうど、空気を吸って口から吹く時に口を閉じ気味にすると、唇(くちびる)がブルブル振える現象と同じです。結果、膀胱出口周辺の平滑筋(内臓筋)が振動します。この現象が長期間にわたって何度も繰り返し起きることで、平滑筋が次第に増殖して過敏になるのです。

膀胱出口周辺の平滑筋は、膀胱括約筋と膀胱三角部なのです。これら平滑筋は尿意のセンサーでもあります。膀胱に尿(オシッコ)が十分に溜まると、その圧力が膀胱出口周辺の平滑筋を刺激するので、尿意が生じてオシッコをするようになるのです。ところが、排尿機能障害によって、膀胱出口周辺の平滑筋が予想以上に敏感になると、わずかな尿の圧力で尿意を感じてしまうのです。

 

Ansinoabinc_20190827160701脊髄神経回路を介して、尿の圧力情報が脳中枢に伝達されます。脳中枢は、情報の回数を蓄積します。時間の経過とともに情報はかなりたまります。仮に例えば、3時間で20パルスの情報が脳中枢に伝達するとします。(イメージで言うと、トン・トン・トン・・・と3時間です。)一定のライン(閾値)を超え、20パルスが溜まると「尿意」を感じます。個人差がありますが、200〜300mlです。さらに時間が経過すると次のライン(閾値)を超え、50パルスが溜まると「尿意切迫感」として感じます。400〜500mlです。膀胱に尿が溜まると、膀胱内の圧力が高まるので、3時間かけて20パルスで尿意を感じてから、さらに2時間ほどで、30パルスが溜まります。結果、20+30=50パルスになるのです。すぐにオシッコに行くのです。これが基本的な生理反応なのです。

 

Ansinoabinc2_20190827160701ところが、排尿機能障害のために膀胱出口周辺の平滑筋が過剰に敏感であると、膀胱内の水圧(尿圧)に関係なく情報パルスが短時間で脳中枢に伝達されるのです。当然ですが、脳中枢の情報の蓄積速度も速くなります。例えば、1時間で20パルスの速さです。(イメージで言うと、トトトトトト・・・)そのため、短時間20パルスの情報刺激で尿意を感じます。膀胱内のオシツコの量は少ないけれど、平滑筋が敏感なので、さらに短時間で情報パルスが等比級数的に増加するのです。短時間で正常と同じ20パルス回数になるので尿意を感じるのです。さらに短時間で30パルスの追加があり尿意切迫感も感じるのです。これが過活動膀胱の裏の仕組みなのです。この状況が繰り返し起きると、生体内は無駄な時間やルートを省こうとします。それが、いわゆる条件反射です。この条件反射によって、初めの尿意と尿意切迫感が近接し、さらに時間が経過すると、尿意切迫感と排尿近接して、結果、切迫性尿失禁になるのです。

❶【初めの尿意→我慢→尿意切迫感→我慢→排尿】(1枚目のイラスト)というルートを省略して、

❷【初めの尿意→尿意切迫感→我慢→排尿】次第に、

❸【初めの尿意≒尿意切迫感→我慢→排尿】(2枚目のイラスト)そして最後に、条件反射が完成されて、

❹【初めの尿意=尿意切迫感→排尿】すなわち、切迫性尿失禁になるのです。

治療としては、尿意情報の速度を抑えるために、β作動薬(ベタニス・べオーバ)や抗コリン剤(ベシケア・トビエース)を使用するのです。これだけで、症状が軽快する患者さんもおられます。しかし、膀胱出口周辺の平滑筋が過敏になった原因である排尿機能障害を治療しなければ、難治性過活動膀胱になってしまうのです。

これまでの解説は、全て私のオリジナルです。教科書的な内容ではありません。教科書的な解説では、過活動膀胱を完璧に理解出来ないので、私の想像力で、矛盾のない整合性を得られました。膀胱の情報は常に神経で伝達されます。その神経情報が、私たちのようにスマフォで話しているとは思えません。また、症状が激しいから、神経のエネルギーが倍以上に強くなったとも思えません。生命エネルギーですから、常に一定(フォメオスターシス)の筈です。そう考えると、一定のエネルギーで情報を伝達するためには、単位時間当たりのパルスの数で表現するしかないでしょう。脳中枢は単位時間当たりのパルスの数で判断するように、おそらく作られているのでしょう。

皆さん、いかがですか?切迫性尿失禁について、素人でも理解できたでしょう?単なる膀胱の過敏さだけが、過活動膀胱→切迫性尿失禁を作っている訳ではないのです。生命の幾重にも重なる複雑なシステムが病気を作っているのです。ひとつひとつの症状・現象を正確に考察すれば、複雑な現象も理解出来るようになります。

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追っかけ漏れ

Bcf68c1909f04569baec95aa6478d057テレビのCMなどで、男性がトイレから出て来た直後にズボンにオシッコのシミが付くことがあります。「尿漏れ」、「追っかけ漏れ」と呼ばれています。尿漏れパッドの購入をススメていますね。

医学用語では「遺尿enuresis」と言います。これは尿失禁の現象ではなく、オシッコ直後に尿道に残った(遺留)尿が、体の動きで尿道が圧迫されて漏れ出て来る現象なのです。泌尿器科学会では、体質的であると考えられていますが、実は明確な理由があるのです。

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初めのイラストは男性の下部尿路(膀胱・前立腺・尿道)を表しています。排尿の前には尿道(青色のライン)全体は必ず閉じています。排尿の際には(2枚目のイラスト)、膀胱出口と前立腺が、それぞれ膀胱括約筋と尿道括約筋によって開きます。

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尿の勢いによって尿道全体も直径が大きく太くなります(青いライン)。しかし、尿道は尿の勢いだけに依存しているばかりでなく、排尿の際に反射的に尿道の緊張が緩んで、尿道が太くなるのです。そして、排尿が終わると、膀胱出口から尿道口の尿道全体が収縮閉じて、尿道内の尿を無くすのです。

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排尿機能障害があると、本人が自覚あるいは自覚していないに関わらず、尿道は必死になって太くして、尿流抵抗を極限まで下げるのです。ところが、排尿が終わっても尿道は『まだまだ終わっていないよ!』と誤解して、尿道を閉じないで太いまま継続するのです。当然、尿道内に尿が残ってしまいます。これが「遺尿」です。排尿が終わってペニスを一生懸命に振っても、ペニスの根元から前立腺にかけての尿道球部は振れませんから、尿道球部にタップリの尿が残って(赤いスペース)しまうのです(3枚目のイラスト)。この現象は、排尿機能障害の患者さんに形成される条件反射と言えます。ある意味で、ネガティブな条件反射です。

膀胱の排尿が終わる時間と尿道が閉じる時間とが、ほぼ一致するのが、正常です。しかし、排尿障害があると、両者に時間が次第に延長して、さらに時間差が出てきます。経過が長ければ長いほど、この時間差のギャップが開いて来るのです。それが、遺尿という現象になるのです。

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「遺尿」の対策としては、排尿後にミルキング(Milking牛の乳しぼり)を行えば良いのです。ミルキングとは、会陰部(陰嚢〜肛門の間)を手を使って、圧迫しながら前方に押して、尿道球部に残った遺尿をペニスの方向にしぼり出すのです(4枚目のイラスト)。その直後にペニスを振ることで移動した遺尿を外に出すことが出来ます。この操作を2〜3回行えば、尿道球部の遺尿は無くなります。結果、下着などにオシッコのシミが出来なくなります。

「遺尿」現象は、排尿機能障害が原因で起こった条件反射ですから、排尿機能障害の治療薬であるα1ブロッカーを服用すれば多少とも改善します。なぜ完全に改善しないかと言えば、一度作られた条件反射は生涯残るからです。

 

 

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難治性過活動膀胱の実態

Oabsystem過活動膀胱と診断されて、抗コリン剤(ベシケア・トビエースなど)やβ3作動薬(ベタニス・ベオーバ)を処方されても治らない患者さんが、悩んだ末にインターネットで当院を探し当てて遠方から来院される方が多くいます。
過活動膀胱の治療薬を服用しても治らないので、主治医から「気のせいですよ!」「ストレスが原因です!」と診断される方が多いのです。治らないのは、それなりに理由がある筈で、気のせいやストレスが原因ではありません。第一、過活動膀胱そのものの原因も泌尿器科学会では定かではないのに、そんな診断をして結果が得られないから、すべてを患者さんのせいにすること自体が医師として情けないことです。

抗コリン材やβ3作動薬は、膀胱、特に膀胱三角部の興奮を鎮めるお薬です。しかし、その治療はあくまでも対症療法です。原因を治していないので治る訳がありません。まるで虫歯の治療を痛み止めだけで治療しているのと同じです。膀胱の訴える症状は、基本的に排尿に問題を抱えているからと連想し想像するべきです。排尿困難ほどの明確な症状がなくても、微妙な排尿障害でも、人によっては強い関連症状を作るのです。ある意味で、患者さんの個性です。医師から見れば、軽微な排尿障害であっても強い症状を作る人がいるのです。標準診断、標準治療にこだわっていると、患者さんを救うことはできません。

Oab36619f56pp過活動膀胱の治療は、膀胱三角部の興奮を鎮める抗コリン剤・β3作動薬はもちろんのこと、排尿機能障害の治療薬であるα1ブロッカーの併用が必須です。ハルナール、ユリーフ、フリバス、エブランチルが代表です。

ここで症例をご紹介しましょう。患者さんは56歳のご婦人です。平成29年3月に頻尿と下腹部の痛みで「膀胱炎」と診断され、その後から頻尿(20回)と尿意切迫感などで地元の泌尿器科を何軒か受診しましたが、細菌感染は認められず、「過活動膀胱」の診断で抗コリン剤を処方されましたが治りません。そこで1年半経過した平成30年8月に当院を初診で訪れました。

超音波エコー検査では、写真のように膀胱排尿筋が膀胱出口に向いていません。(黒し→)これは排尿機能障害の後遺症です。相対的に膀胱三角部が厚く肥厚し(赤い↔)、膀胱三角部の形状も台座のように厚く広いスペースになっています。膀胱三角部は尿意センサーですから、頻尿症状・尿意切迫感=過活動膀胱症状が出現しても不思議ではありません。

そこで、排尿機能障害の治療薬であるα1ブロッカーと頻尿治療薬であるβ3作動薬を処方しました。すると、20日後には頻尿が20回→6回に激減しました。1カ月後には排尿回数が3回、痛みはほぼ無くなりました。難治性過活動膀胱も原因の本質を把握すれば、容易に軽快するのです。

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尿失禁の原因

Stressinc中年以降になると、ご婦人で咳やクシャミなどでオシッコを漏らしてしまう方がいます。医学用語で『腹圧性尿失禁』と呼びます。その原因は明確ではなく、ほとんどが「歳のせい」と思われています。

このような患者さんをエコー検査で調べてみると、過活動膀胱や間質性膀胱炎の患者さんと同じ所見が得られます。つまり、膀胱排尿筋が膀胱出口には向いていなく、外側の尿道口の方向に向いていて、さらに膀胱三角部が厚くなっています。結果、排尿機能障害が隠れていることが分かります。

Stressinc2膀胱の出口は、二重構造になっています。手前が膀胱括約筋で外側が尿道括約筋です。自分の意志(随意神経=運動神経)尿道括約筋が開くと、自動的(不随神経=自律神経)に膀胱括約筋が開くのです。

Stressinc3しかし、何かの原因で膀胱括約筋が自動的に開かないと、尿道括約筋が開いても十分に排尿が出来なくなります。この状態が何年も何十年も繰り返し繰り返し行われることになります。

当然、必要以上の腹圧が毎回かかります。すると膀胱の下端のラインが少しずつ下位に下がります。また、尿道括約筋も次第に下位に下がります。

Stressinc4そして、下位の位置で次第に膀胱や尿道括約筋が固まり固定されてしまうのです。その状態は、ちょうど排尿の際の膀胱の位置と尿道括約筋の形に似てくるのです。そのため、咳やクシャミで腹圧が少し高まるだけで、尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁になるのです。

腹圧性尿失禁の手術は、テフロン糸やテフロンパッチなどで膀胱の下端を吊り上げる手術なのです。でも、執刀医は、何故下がったのかを考えずに手術しているだけです。当然として、元の位置に戻るので、オシツコのでは悪くなり、患者さんは苦しむのです。

もしも、手術後オシッコが出にくくて辛ければ、α1ブロッカーを服用してください。出来れば、前立腺肥大症の排尿障害の治療薬であるユリーフ・シロドシンがおススメです。しかしながら、男性向けのクスリですから保険適応外です。

保存的の治療手段としては、骨盤底筋の訓練をして、尿道括約筋の位置を上に挙げることと、α1ブロッカーを服用してください。

ですから、排尿機能障害が原因の「頻尿や尿意切迫感」のある人は、早めに治療しないと、必ず腹圧性尿失禁になるのです。

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条件反射

病気には、条件反射で症状が出るものがあります。

条件反射とは、見たり聞いたり感じたりすると、脊髄神経回路を介して特定の反応することです。

Reflexhiza条件反射の例としては、❶梅干しを見ただけで、酸っぱい唾液が出るアレです。❷寒かったり恐ろしかった時に起こる鳥肌、❸目にゴミが入った瞬間に涙目になる、❹失恋した彼女と姿が似た人を見ると、失恋した当時の気持ちを思い出してしまう、❺犬にエサをあげる時に鈴を鳴らすと、鈴の音がすると犬にヨダレ出る、❻曲げたヒザを叩くと、ヒザがのびる(膝蓋腱反射)。

ご覧のように、「条件」は単純な物や事ばかりですが、出てくる「反射」反応は脊髄神経回路(ソフトウエアー)を介するので、千差万別です。

Reflex病気の条件反射も同様のことが言えます。私の専門分野での排尿障害が原因の病気では、この条件反射が多々あるのです。

❶水を飲む(条件)と、急に尿意や尿意切迫感が出る(反射)。❷トイレに入ろうとする(条件)と、尿意切迫感が強く出て、漏らしてしまう(反射)。❸歯を磨いたり(条件)、水の音や水に触れる(条件)と尿意切迫感(反射)が出て、人によっては切迫性尿失禁(反射)になる。

このような現象を患者さんが主治医に訴えても、「気にし過ぎです」と言われることが多いのです。長い期間に排尿障害を経験していると、このような条件反射が起きることを主治医は習っていないから知らないのです。生物学の基本的概念を知っていれば、素人でも想像できることです。医師と言えども、自らの想像力を活かさないで、過去の教わった事しか考えないのです。……本当に情け無い⤵︎。

これらの反射症状は、排尿障害を連想しやすい症状です。しかしながら、脊髄神経回路の特性によっては個性的な反射症状の出る人がいます。例えば、水をたくさん飲むことによって、睾丸の痛み、陰部のかゆみ、錯覚の尿臭、舌の痛み、胃の痛み、坐骨神経痛、腰痛などです。また、これらの条件反射は瞬間的に出現するのではなく、ある程度の時間差で出現するので、条件反射と思えないのです。

生き物の行動は、ある意味で全て条件反射が基本です。河の流れがあれば、鮭は上流に泳ぎ、草原でメスの鹿が目に入れば、オスが交尾に走り、深夜に光があれば虫が集まるのです。この条件反射を何度も繰り返し複雑に経験することで、脊髄神経回路が発達して、結果的に知性のある人間になったのでしょう。

泌尿器科の病気に限らず。あらゆる分野で様々な条件反射がある筈です。そしてそれが原因不明の病気として処理されている可能性もあるのです。

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ガンの利点

Noiroze毎年、平均寿命が延びています。その関係か、ガンで亡くなられる患者さんも増えているのです。統計学的に言えば、死亡原因がガンの人が、2人に1人〜3人に1人の割合なのです。単純な考え方では、年齢を重ねれば重ねるほど、ガンのリスクが高まる訳です。逆にガンにならないで長生きすればするほど、今度は老衰や認知症の患者さんが増えるのです。厚労省の方針で、生活習慣病を回避して健康寿命を期待すればするほど、老衰や認知症の患者さんが増えるのです。

ところで、厚労省は病院での高齢者入院を避けて、自宅で家族に見守ってもらう方針でもあります。一見理想的なのかも知れません。専門医である他人に任せないで、素人である家族に、老衰や認知症の患者さんを任せようとしているのでしょう。これは裏の考え方をすれば、国家の医療費負担を抑え、家族=国民の所得財産から消費させようとしているのです。

Nintiこれからすれば、ガンの患者さんは、家族に負担をかける老衰や認知症を回避できるのです。老衰や認知症の患者さんの家族は、精神的にも肉体的にも金銭的にも時間浪費的にも、ものすごい負担がかかるのです。長期間続くと、『早く死んで欲しい』、『やっと死んでくれた、ホッ!』あるいは、介護する家族によって殺人事件まで起きるのです。そうなると、患者さんもご家族もとても不幸になります。

それに比べて、ガンの場合は寿命が確実に制限されます。頭は正常ですから、自分の過去を振り返ることが出来ます。その頃の思い、感情、後悔などを十分に堪能できます。また、周囲の家族から心配されることに本当に感謝します。そして、生前の予想通り、みんなに惜しまれ悲しまれながら、天国に旅立たれるのです。人生の終末のクオリティの観点からすれば、目の前の事しか見えない長生きの老衰・認知症患者さんと、ガン患者さんのどちらが良いと思われますか?

以上は、私の奇想天外の考え方ですから、参考程度にお読みください。

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排尿機能障害の証拠

排尿機能障害が原因で、見せかけ上の様々な病気が発症します。前立腺肥大症、慢性前立腺炎、慢性尿道炎、慢性膀胱炎、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症、慢性骨盤疼痛症候群などです。

これらの病気の検査で排尿機能障害を確認するための、尿流曲線検査ウロフロメトリー、膀胱内圧測定検査を行っても、極端な後遺症が出なければ、異常と認められません。明確に確認される場合は、その時点で「神経因性膀胱」と診断されだけです。それまでは、初めのたくさんの病気として苦しまれるだけなのです。そして、神経因性膀胱と診断されても、治療方法がないのです。

そのような経過にならないように、事前に知るべきなのです。その検査が、エコー検査なのです。そこで、エコー検査の主な特徴的な所見を解説しましょう。

Ef77601868eb4e1c82f3ee62ccc752b3❶膀胱出口がVの字:健常であれば、膀胱出口は少し凹んでいるか、ほぼ平の筈です。ところか、排尿機能障害が長期間継続すると、出口の周囲が膀胱サイドに飛び出てくるのです。

Oab36619f56pp❷膀胱排尿筋の走行異常:膀胱括約筋に柔軟性が無くなり、排尿する際に膀胱出口が開かないまま、尿道括約筋の方向にオシツコの度に引っ張られます。すると、膀胱排尿筋が出口と一緒に尿道サイドに引っ張られるので、膀胱排尿筋の方向が偏位するのです。この偏位が、膀胱三角部に影響を与えるのです。

6e0bc90c56b14b66a8f85be81f86547b❸膀胱排尿筋の形態変形:引っ張られる力のエネルギーベクトルの幅が広いと、膀胱排尿筋が変形してしまいます。ヘビの口だったり、お団子状になるのです。この写真では、まるでヘビが大きな口を開けているように見えます。患者さんの苦しんでいる姿を見ると、ヘビに憑かれているように思えて仕方がありません。

❹膀胱三角部の肥厚:膀胱排尿筋が引っ張られると、膀胱粘膜と膀胱排尿筋の間に隙間が空きます。生体ですからスペースをそのままにはしません。そこに周囲の細胞が増殖して埋め合わせをするのです。それが膀胱三角部の肥厚です。

Calprostpp❺前立腺結石:膀胱出口が十分に開かないで排尿すると、尿道内に流れる尿流は、ジェット流になります。ジェット流は尿道粘膜に傷害を与え、粘膜がボロボロになったために、そこに尿中のシュウ酸リン酸カルシウムが付着して石灰が出来ます。石灰が大きくなると尿道が塞がるので、それを避けるために石灰が少しずつ前立腺に吸収されます。それが積もりに積もって前立腺結石なるのです。

Calurethpp❻尿道周囲結石:前立腺結石と同じ理由で、ご婦人の尿道周囲にも石灰・結石が蓄積します。写真は、なかなか治らない慢性膀胱炎で来院した37歳のご婦人の超音波エコー所見です。尿道の知覚に明確な結石が認められます。

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❼膀胱頸部の静脈瘤:一般的に瘀血(おけつ)と呼ばれる状態です。排尿時に膀胱出口が十分に開かないと、排尿の圧力(腹圧・膀胱圧力)がすべて膀胱出口=膀胱頚部に物理的負荷がかかります。当然、膀胱頚部周囲の血流が悪くなり、うっ血状態になります。その結果、静脈が拡張して、静脈瘤になるのです。写真の赤い矢印がすべて静脈瘤です。瘀血に対して血流を良くするために、漢方薬である桂枝茯苓丸を処方されますが、原因を解決しないで、血流だけを良くして何の効果があるだ?と思います。

Bnspp❽膀胱出口の硬化像:排尿の際に、膀胱出口が十分に開かないでオシッコをすると、膀胱出口はブルブル震えて振動します。その状況が毎日何回も何年も起きれば、膀胱出口は振動に負けないように硬くなるのです。硬くなればなるほど膀胱出口の振動は強くなりますから、膀胱出口はますます硬くなるのです。その結果、エコー検査の所見では、出口部分が白く見えるのです。

61c385b29a234f628b9234a0f1e47f27❾前立腺肥大症:前立腺の健常な大きさは、20CCです。これを少しでも超えたら前立腺肥大症と診断されます。この写真は、大きさが60CCを超えています。さらに膀胱出口がVの字で膀胱三角部が膀胱側に飛び出ており、膀胱排尿筋が膀胱出口から距離があり、だるま状に収縮しています。

以上のどれか一つでも所見があれば、排尿機能障害が隠れていると判断して治療するべきです。

 

 

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難治性の慢性尿道炎

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今年の2月に遊んで、フェラチオをされてから尿道炎にななった患者さんが来院されました。地元の泌尿器科で性病検査を行いましたが、陰性でした。雑菌性尿道炎の診断で抗生剤の投与を受けました。尿検査を行っても炎症の所見は認められませんでしたが、尿道のムズムズ感と絵陰部の痛みが出てきて治りません。何回も抗生剤を変えられたのですが治らないのです。

 

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インターネットで当院を探して来院しました。排尿回数は1日5~6回、夜間には2回オシッコで起きるそうです。現在服用しているお薬は、エビプロスタット(50年前からある前立腺の一般的病気の薬)、ザルティア(前立腺の血流を改善する)、桂枝茯苓丸(瘀血の治療薬)でした。処方内容は、原因の分からない前立腺の病気にいい加減に処方する調味料的内容です。

初めの超音波エコー検査で分かるように排尿機能障害の見られる前立腺です。膀胱出口がVの字、膀胱排尿筋が2つに分裂、膀胱頚部周囲の血管が静脈瘤になっていまさう。

2枚目の写真でも、膀胱出口がVの字、膀胱頚部周囲の血管が静脈瘤になっています。以上の事から、この患者さんには排尿機能障害があるにもかかわらず、頻尿症状がほぼ無いのです。体としては、頻尿にならないので、何とかあらゆる手段を使って、本人に警告しようとしていたのです。その時に遊んだことをキッカケに、尿道炎に感染したのです。その際に症状を作るために使用した特定の脊髄神経回路と膀胱・前立腺の神経支配の脊髄神経回路が合体(シナップス結合)して、難治性の非細菌性慢性尿道炎になったのです。細菌感染はなくても、頻尿情報を尿道炎の神経回路に流出させるので、水を飲めば飲むほど、頻尿の代わりに尿道炎症状になるのです。

治療としては、排尿機能障害の治療薬であるユリーフ・シロドシンと、情報発信している膀胱三角部の興奮を抑えるβ3作動薬ベタニス・べオーバを処方しました。

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毎月の膀胱炎に苦しむ高齢のご婦人

今日、新潟から80歳のご婦人がお嬢さんに連れられて来院されました。3年前から何度も何度も膀胱炎を繰り返したのです。ほぼ毎月1回の頻度です。その都度、抗生剤・抗菌剤を処方されて多少は軽快しましたが、またすぐに膀胱炎になるのです。

現在の症状は、毎日25回の頻尿と、オシツコに関係なく常に感じる尿道の痛みです。泌尿器科の専門医に2件受診しましたが、初めは「膀胱炎」という診断でしたが、次に「歳のせい」、「気のせい」という診断でした。

Oab37301f80pp苦しんでいるお母さんを見て辛くなったお嬢さんがインターネットで当院を見つけて来院されたのです。お話しをお聞きして、早速超音波エコー検査をおこないました。予想通りでした。膀胱排尿筋が本来膀胱出口に向いている筈が、見当違いの方向(黒い→)に向いています。尿道口に向いていると思われます。
これは相当以前から排尿機能障害が存在していて、排尿の都度、膀胱排尿筋が尿道括約筋に引張られるので、次第に方向が変異したのです。

そのために相対的に膀胱三角部が厚く肥厚(赤い↔)します。膀胱三角部の厚さは、通常では膀胱排尿筋の先端から約2mmです。この患者さんの場合は、厚さが10mmを越えています。通常よりも5倍以上も厚いのです。例えば、膀胱三角部の厚さ2mmで排尿回数5回だとすれば、単純計算で10mmあれば、5×5=25回になっても不思議ではありません。

排尿機能障害にもかかわらず、以前の主治医が、「膀胱炎だから、水分をたくさん飲みなさい!」と言うので、症状はさらに悪くなるのです。


病気の原因をお話ししたら、患者さんご本人とお嬢さん二人が涙していました。それまでさんざん主治医に相談したにもかかわらず、「歳のせいだ!気のせいだ!治る訳がない!」と怒るように言われていたのだそうです。原因が分かり治療法も分かったので、喜びのあまり泣いてしまったのでした。

治療としては、排尿機能障害の治療薬であるα1ブロッカーと、膀胱三角部の興奮を鎮めるβ3作動薬を基本に処方しました。さらに強い痛みが生じた時のために、一般的な鎮痛剤ではなく、脊髄神経回路をブロックするトラムセットを処方しました。効果があることを期待します。

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