医師の使命
風邪や怪我などは、1週間から数カ月で治りますから、患者さんの将来の人生に影響を与えません。
ところが、原因不明の病気にかかると、患者さんの人生はガラッと変わります。治らないために、長い間の病気によって、患者さんが想像できる将来の自分の人生は、おそらく地獄でしょう。医師は患者さんのその病気を完璧に治せないまでも、日常生活に支障のないまでに軽快させることです。
ところが医師には、経験を重ねる毎に名声・社会的地位・趣味・お金に目標を持つ人間がかなり多いのです。テレビドラマの「白い巨塔」は、その典型的イメージでしょう。本来ならば、「赤ひげ先生」であるべきです。医師は人を助けること、そのヒトの人生を幸福にさせることが第一の使命です。
しかしながら、そうはならない理由があります。医師になるためには、人よりもたくさんの勉強と、人を押しのけて受験を勝ち続けなければならないのです。幼少期から、それらの事を繰り返し繰り返し行なって、医学部に入るまで12年以上も勝ち抜いてきた人間に、困っている人を助けようとする気持ちに、果たして自然になると思いますか?
自分で得た知識や技術が『これで全てだ!』と勘違いしてしまうから、次の目標(名声・名誉・社会的地位・趣味・金銭)に興味が移ってしまうのです。「甘〜い!」神さまの作ったこの世界や人間の体が、たかが人間の知識だけで、全てが理解できる訳がないでしょう!混沌としたこの世界を単純な科学や医学知識を寄せ集めて理解しているだけのことです。それらの知識が全てを網羅する訳がありません。さらに、的を得た知識であっても、学会発表で何回も何百人症例も報告し、常識的な知識の医師に理解してもらわなければ、標準的知識にはならないのです。結局、社会的地位の高い常識的な考えの医師が、たくさんの部下に意味のないデーターを集めさせた報告しか表に出ないのです。
私は認められなくても、一人でコツコツと自分の使命を果たしたいと思います。医学会に認められることがなくても、たくさんの人々を救うことができれば、使命を果たせ、死ぬ間際でも十分に満足です。
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