膀胱炎を繰返すご婦人
2004年から、膀胱炎を毎年4回〜5回起こしてきたご婦人が、ご夫婦で来院されました。
2018年までの15年間に、少なくても、のべ65回の膀胱炎に苦しんでいるのです。当然、当院に来院するまで、たくさんの病院・診療所を受診し、その都度その都度、尿検査でバイ菌(大腸菌・肺炎桿菌・プロテウス菌など)が確認されて「膀胱炎」と診断されました。いろいろな抗生剤(アミカシン・クラビッド・ミノマイシン・ST合剤・ホスミシン・セファレキシンなど)の処方を繰り返されていました。(患者さんから頂いたメモ用紙から)
しかし、数ヶ月で膀胱炎は、すぐに再発してしまうのです。そして、最近では次の膀胱炎まで、1カ月も持たなくなりました。患者さんは、重複腎盂尿管があるために慢性腎盂腎炎を心配されています。抗生剤の効かない耐性菌が検出されたと、さらに心配はつのるばかりです。
早速、超音波エコー検査を行いました。
膀胱を横から観察した所見です。
膀胱括約筋が、膀胱出口ではなく明後日の方向に向いています。本来ならば、点線の矢印のように膀胱出口に向いていなければなりません。これは排尿障害による膀胱括約筋の形状変化です。
その結果、膀胱三角部が厚くなっています※。正常であれば、膀胱三角部の厚さは2mmですが、この患者さんの場合は9㎜と4倍以上厚くなっています。
膀胱三角部は、尿意を感じるセンサーですから、厚くなればなるほど頻尿になります。2㎜=5回とすると、9㎜=20回以上ということになります。ところが、患者さんの頻尿は1日15回ですから、毎日5回以上の頻尿のエネルギーが隠れていることになります。そのため、定期的に溜まったエネルギーを発散するのです。それが、繰り返される膀胱炎になるのです。
さて、このご婦人は、毎日なんと3リットルもの水分を摂取していました。医師がよく言う「膀胱炎だから、水分を多く取りなさい。」という言葉に翻弄されたのです。バイ菌が原因ではない膀胱炎の場合、水分を多く取ることで、ますます症状は悪化します。
まずは、水分摂取を控えることを指導しました。次にα−ブロッカー(ユ…)で排尿障害の改善を図り、ベタニスで膀胱三角部の過敏さを抑えることを目標にしました。
コメント