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膀胱括約筋の変形

排尿時に、尿道括約筋が尿道側にけん引されます。その際に膀胱括約筋が収縮することによって、膀胱出口がロート状に開くことで、排尿します。
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この膀胱括約筋と尿道括約筋の連携が円滑にできないと、排尿障害になります。尿道括約筋は、ヒトの意志で収縮しますが、膀胱括約筋は自律神経の働きで、ヒトの意志ではコントロールできません。排尿障害の患者さんは、長年に渡って、膀胱括約筋の断端が、尿道括約筋によってけん引され続けるので、断端が変形します。今回、その変形した症例をいくつかご紹介しましょう。

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まずは、ほぼ正常な膀胱括約筋の姿です。正常であれば、膀胱括約筋の方向は一方向に向かっています。その方向は、膀胱出口です。膀胱括約筋によって膀胱出口が開けば、尿道括約筋のけん引力は、膀胱出口だけにかかるので、膀胱括約筋には影響は及びません。実は、50歳代の頃の私の膀胱括約筋の姿です。

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60歳代患者さんの膀胱括約筋の拡大写真です。
膀胱括約筋の末端の方向が2つに分かれています。
下の方向に分かれている部分は、尿道括約筋によって力強くけん引された結果です。

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30歳代患者さんのエコー検査所見です。
排尿障害が原因の慢性前立腺炎症状で苦しまれています。
やはり、膀胱括約筋が2方向に分かれています。

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70歳代患者さんです。
過去に前立腺肥大症の内視鏡手術を受けています。ところが、手術の後も、頻尿や痛みが治りません。
エコー検査の所見では、前立腺は削り取られていますが、膀胱三角部が手つかずで残っているので、症状がなくならないのです。
膀胱括約筋も2方向に分裂しています。

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この患者さんの膀胱括約筋は、実に大きく分裂しています。
長年かかって、繰り返し膀胱括約筋に物理的負担がかかると、こんなにも大きく開いてしまうのです。

排尿障害の患者さんが、皆んながみんな膀胱括約筋が変形している訳ではありません。多くの患者さんに認められます。2方向性の分裂所見のない患者さんの場合は、膀胱括約筋の方向が膀胱出口に向かずに、尿道括約筋の方向に向くことになります。いわゆる偏向型です。ご婦人の排尿障害の患者さんの場合は、ほとんどが分裂型ではなく、この偏向型が多いのです。

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