« 前立腺ガンの年齢階層別推移 | トップページ | 膀胱の基礎医学#3(生理学的観点) »

膀胱の基礎医学♯2(解剖学的観点)

Img_0890
膀胱は膀胱頚部、膀胱三角部、膀胱体部に分けることができます。ところが、膀胱三角部は、現在膀胱に位置しますが、前回解説したように本当の出身地は尿管なのです。左右両側の尿管が、胎児期に成長と共に膀胱内で左右が結合したのです。その結果、三角形になり膀胱三角部と称される部分になったのです。
四つ足動物、四足歩行だった頃、排尿時にかかる圧力は、ちょうど膀胱出口に当たるように設計されていました。ところが、人間が二足歩行に進化すると、その圧力は膀胱出口の後ろ側、つまり膀胱三角部に直接当たるようになってしまったのです。要するに、四足歩行の動物に比べて膀胱三角部への負担が大きいのです。これが、人間の排尿に関する産まれながらの欠陥なのです。
膀胱三角部は尿管由来ですから、膀胱の中で一番敏感な部分です。その敏感な部分が産まれてから1年前後で二足歩行になり、排尿の度ごとに膀胱三角部に負担をかける訳です。40〜50年も生きれば、膀胱三角部の過敏症になってもおかしくはないでしょう。それが、過活動膀胱、間質性膀胱炎、慢性膀胱炎、慢性前立腺炎、前立腺肥大症の症状になるのです。

Img_0891
膀胱三角部の直下に膀胱括約筋が存在します。
しかし、このイラストで分かるように、膀胱括約筋は膀胱三角部の直下とそれ以外の周囲に存在するものとに分けることができます。
この膀胱三角部直下の膀胱括約筋が排尿時に収縮し、それ以外の周囲の膀胱括約筋が緩むと、膀胱出口が開きます。しかし、尿道括約筋と同時に活動しないと膀胱出口は開きません。
Cc34860f47ps
膀胱三角部は、知覚のセンサーと駆動力の膀胱括約筋の2つの顔を持っているのです。その割には、泌尿器科学会では、重要視されていません。その理由は膀胱三角部を客観的に観察できないからです。内視鏡検査、いわゆる膀胱鏡検査で観察しても、表面を見ているだけなので、医師が異常に気付かないのです。
超音波エコー検査で、膀胱三角部は詳細に観察することが出来ます。膀胱三角部の厚さ、膀胱括約筋の形態的変化などです。この写真は間質性膀胱炎症状の47歳のご婦人の超音波エコー所見です。膀胱三角部が非常に厚くなり、さらに膀胱括約筋があさっての方向に向いています。この所見は排尿障害を示唆しています。

« 前立腺ガンの年齢階層別推移 | トップページ | 膀胱の基礎医学#3(生理学的観点) »

コメント

はじめまして。69歳の義母について相談いたします。
平成28年1月に腸閉塞で手術、入院した際、排尿時に尿が出きらずに膀胱に多く残っていることが判明。神経因性膀胱と診断され、生涯導尿をしなければ生きられないと言われました。以降1日5回自己導尿を行っています。一回の尿量は自尿が約0~200ml、導尿による採尿が約200~400mlです。薬はエブランチル15mgを1日2回服用しています。
先生のブログを拝見し、先生の手術を受けることで、義母にも自己導尿の生活から解放される可能性があるのではないかという期待感を持ちました。
家族も本人も、当然QOLの改善を強く希望しております。そして同時にできるだけ良い健康状態を維持したいという意思も持っております。
以下数点質問させていただきます。

● 先生の手術を受けることで、義母が自己導尿から解放される可能性はどの程度ありますか?
★回答
80%です。」

●手術のリスク、デメリットは何かありますか? (尿失禁の後遺症の心配については、先生のブログから尿道括約筋に障害を加えなければ尿失禁にはならないという認識をしています。)
★回答
特にありません。」

●仮に手術を受け、導尿しないまたは導尿の回数が減る場合、現在の1日5回の導尿できっちり尿を排出している状態と比べて、腎臓や膀胱など体に対する負担が増すことは考えられますか?
★回答
特にありません。」

すみません、分かりづらいですね。QOL改善を優先させ自然排尿に近づくことで、義母の体調が悪化してはならないという私の心配があるのです。変な質問で申し訳ありません。

最後に必要あるか分かりませんが義母の病歴を書かせていただきます。
平成4年頃卵巣嚢腫で片方破裂し摘出、子宮筋腫摘出
平成11年頃から高脂血症の薬を1日1回服用
平成24年顔に帯状疱疹で1週間入院

どうぞよろしくお願いいたします。
★回答
まずは、飲み薬を工夫すれば、導尿の回数が減る患者さんもいます。

投稿: 岐阜県Y | 2018/02/11 12:26

高橋先生
お忙しい中こんなに早くご回答下さりどうもありがとうございます。
とても勇気づけられた気がいたします。
まずは義母とじっくり話をし、今後のことを考えたいと思います。

投稿: 岐阜県Y | 2018/02/11 16:54

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 前立腺ガンの年齢階層別推移 | トップページ | 膀胱の基礎医学#3(生理学的観点) »