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針生検を受けて11年間の苦悩

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平成18年にPSA値が4.0をチョッと越えたと言うことで、大分の病院で針生検を受けました。
結果は、悪性度の低いグリソンスコア6でした。そして、「何もしないで様子を見ましょう」と判断され、定期的にPSA検査を行ってきました。
その後、PSA検査を定期的に行いました。
平成18年~平成19年(大分)PSA値4.0~7.0
仕事の都合で各県を転々としていました。
平成20年~平成23年(熊本)PSA値6.0~8.0
平成24年~27年(大阪)PSA値8.0~10.0
平成28年~現在(広島)PSA値10.0~11.8
PSA値に一喜一憂しながら、上がると前立腺ガンが増えている?と悩みながら、この11年間悩み続けました。この状況で患者さんがご夫婦で広島から当院にお越しになりました。排尿に関してお聞きすると、排尿障害の症状が顕著に出ていました。排尿間隔が1.5時間に1回、1日10回以上、夜間頻尿2回~3回でした。
エコー検査の所見は、前立腺の大きさが44cc、前立腺が膀胱に突出していて、排尿障害を示唆しています。エコー検査の設定を前立腺ガン向けに変えて、前立腺を観察すると、矢印で示す部分に前立腺ガンを認めました。また、触診でも同じ部位に硬結が触れました。

総合的に考えて、大分でのPSA値の高さは、前立腺肥大症による排尿障害が原因でしょう。PSA値を理由に針生検したことで、ステージⅠのラテント癌が発見されてしまったのです。11年の間、大分→熊本→大阪→広島と四カ所で医師も4人が、ただひたすらPSA検査するだけです。前立腺触診もエコー検査もしていませんでした。その間、前立腺ガンが徐々に大きくなりエコー検査で確認できるようになったのでしょう。

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前立腺ガンは何処まで増えるか?

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前立腺ガンの発見数(罹患数)の推移

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国立がん研究センターの1975年から2013年までの前立腺ガンの罹患数(発見数黒い線グラフ)と死亡数(赤い線グラフ)の推移をグラフにしました。
❶前回、前立腺ガンの死亡者数の増加について解説しました。増加の要因は、PSA検診・検査の普及と、前立腺肥大症の治療がプロスタールからハルナールに取って代わった事が原因だろうと思われます。
罹患数の増加の要因もPSA検診・検査が深く関わっている事が、グラフから予想できます。特に、泌尿器科学が先導して行った前立腺癌撲滅キャンペーンが、強力に働きかけたと思われます。
ここで、問題になるのが、罹患数と死亡者数の乖離現象です。定点で比較すると、下記の通りになります。

【年代】・【罹患数】・【死亡数】・比率(罹患数/死亡者)
1975年・・・ 2412・・・1267・・・・・1.9倍
2003年・・・40062・・・8418・・・・・4.8倍
2011年・・・78728・・10823・・・・・7.3倍

❷PSA検診・検査が普及すればする程、無駄な寿命に影響しない前立腺ガンの発見が増えているように見えます。前立腺ガンの治療法が飛躍的に進歩している訳ではありませんから、罹患数と死亡者数の開きは、単に発見しなくてもいい前立腺ガンを見つけてしまったという事になります。

❸この背景には、近年の前立腺肥大症の増加が原因です。私が研修医の頃には、80歳までに2割の男性が前立腺肥大症になっていました。ところが最近では、80歳の男性の8割が前立腺肥大症になるのです。前立腺肥大症では、前立腺の密度が高く、さらに排尿障害が生じるので、当然PSA値が高くなります。PSA値が高い→前立腺ガンの疑い→針生検というルーチンで、寿命に影響しないラテント癌(潜伏ガン)が発見されてしまうのです。これが罹患数と死亡者数のギャップの原因です。

❹PSA検査を導入した健診・人間ドック・地域検診が前立腺ガンの患者さんを増やしたことになります。健診によって『俺は前立腺ガンなんだ❗️❗️❗️』と精神的に追い詰めたことになります。健康を維持するために受けた健診によって精神的不健康に、生活のQOLを低めたことになります。医師のやることは、もしPSA値が高ければ、前立腺肥大症・排尿障害を認め、かつ触診とエコー検査でステージⅡ・Ⅲ・Ⅳが否定出来れば、針生検を実施してはなりません。その際、念のために半年〜1年毎に定期的にチェックすれば良いでしょう。

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前立腺ガンの死亡者数増加の理由

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このグラフは何回も提示しています。前立腺ガン患者さんの発見数(罹患数)と死亡数の推移です。
発見数と死亡数の乖離現象が問題になっています。発見数の増加の伸びに比較して、死亡数の増加はわずかにしか見えません。実は、ここに問題が隠れているのです。

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このグラフは、国立がん研究センターの情報データを元に私が作成したグラフです。前立腺ガンの死亡者数の推移だけをグラフにしてみました。
初めのグラフの印象と随分と違うでしょう?1990年位から急激に増加しているのが分かります。
1960年には480人だった前立腺ガン死亡者数が、2016年には11803人にもなっています。実に24.6倍にも増加したのです。
1960年から1980年までの増加率の角度と、1980年から1990年までの角度と、1990年以降の角度とだんだん急な角度になっています。これを理解するには、時代背景を調べると判明します。

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まずは、1980年頃から、前立腺腫瘍マーカーのPAP検査が泌尿器科医の世界では一般的になりました。前立腺肥大症の患者さんについでに検査して、高ければ針生検を行ったのでしょう。
1990年頃から、アメリカで開発されてPSA検査が普及して、泌尿器科医のみならず一般内科医にも広まったのです。当然、針生検の件数は増えます。
1993年に排尿障害の治療薬として画期的な薬ハルナールが発売されました。それまでの前立腺肥大症の治療薬に比べ物にならない程速効性のある薬です。服用すれば数日で効果が出るので、それまで処方されて来たプロスタールの売上げがガクッと落ちました。プロスタールは、効果が出るまで長期間かかりました。当時、前立腺肥大症の大きさは触診のみでした。触診のみでは、前立腺の大きさがどのように変化したかは不明瞭でした。現在は、エコー検査で前立腺の大きさが、逐一確認できるようになりました。今現在、プロスタールの効果が実感できるようになりました。プロスタールを開始して、半年間で前立腺の大きさが、何と1/2〜1/3までになる患者さんがいるのです。そういう患者さんの前立腺を触診所見では大きさが変化していないこともあります。
2002年頃から、泌尿器科学会が前立腺ガン撲滅キャンペーンを始め、さらに呼応するかのように行政検診・人間ドック・会社健診でPSA検査が導入され、一気に針生検の件数が増えたのです。

まとめると、医師が良かれと思って企画・政策したPSA検診によって、針生検の急増をバックに前立腺ガンの死亡者の数が増えたように思えてなりません。
プロスタールの処方は、ある程度、前立腺ガンを抑えてくれていたのです。

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排尿のメカニズム

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小さな前立腺肥大症でも、あるいは前立腺肥大症がなくてもオシッコの出が良くない、排尿障害の患者さんに遭遇することは多々ある事です。
一般的に泌尿器科医も含めて医師は、前立腺が大きくなければ排尿障害はないと思い込んでいます。前立腺のないご婦人は尚の事です。しかし、物事はそんな単純ではありません。解剖学を土台に機能を考える解剖機能学=構造機能学という観点から考えると、病気の原因が見えてきます。生命の機能を漠然と捉えて病気を考えるので、正確な診断と適確な治療が出来ないのです。そこで、排尿のメカニズムを構造機能学から考えてみましょう。

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❶膀胱内に尿が十分に溜まると、排尿の命令が脳中枢から発せられます。自分の意思で出来ることは、尿道括約筋を開いて、腹圧をかけることです。尿道括約筋は、実際には開くというより前立腺を尿道側(外側)に向かって引っ張る動きをします。その動きに連動して膀胱出口が引っ張られます。(赤い点線)その際に膀胱出口の付近に接続している膀胱括約筋が膀胱全体が収縮するのと連動して緊張・収縮します。出口の内腔は尿道括約筋に引張られ、膀胱出口は膀胱括約筋に引張られた結果、膀胱出口はロート状に開き、尿が流出するのです。

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❷ところが、何らかの原因で膀胱括約筋が十分に収縮しないと、膀胱出口はロート状に開いてくれません。つまり、膀胱出口がスボまった状態状態で排尿することになります。その状態で排尿すると、膀胱出口は小刻みに振動します。このスボまりと振動を抑えるのがαブロッカーのユリーフ・ハルナール・フリバス・エブランチルです。
❸膀胱は排尿のたび毎に圧力を掛けなければならず、膀胱はダンダン疲れ疲弊します。その状態が顕著であると肉柱形成が起き残尿が多くなり、いわゆる「神経因性膀胱」と診断されます。
❹膀胱からの物理的圧力は膀胱出口に直接かかり、出口の裏側に存在する前立腺に全てかかります。その結果、その負荷に抵抗して前立腺が大きくなり「前立腺肥大症」と診断されます。
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❺膀胱出口の振動は、膀胱出口近くの膀胱三角部も振動させます。その結果、膀胱三角部は過敏になり、「心因性頻尿」、「過活動膀胱」、「間質性膀胱炎」、「慢性前立腺炎」と診断されます。男女同じです。この過敏を抑えるのが、ベタニス・ベシケア・トビエース・ウリトスです。
❻膀胱の圧力により膀胱出口部分が、膀胱側に突出して来ます。突出部に前立腺肥大症が連携すると「前立腺肥大症の中葉肥大型」に、前立腺肥大症が伴わないと「膀胱頚部硬化症」、「神経因性膀胱」と診断されます。

以上のことが理解できれば、前立腺肥大症の内視鏡手術の応用に利用できます。
大きさを二の次にして、まずは膀胱出口をロート状に開くように切開・切除します。前立腺肥大症を全て削り取らなくても排尿はスムーズにできます。

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ステージⅣの前立腺ガン患者さん

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今回ご紹介するのは、平成26年3月に来院した60歳の患者さんです。(#31455)

平成25年8月に、地元でPSA検査を実施したところPSA値が何と702!でした。
早速、大病院で前立腺針生検を含め精密検査した結果、グリソンスコア4+4=8と低分化型の悪性度が高い前立腺癌が見つかり、しかも骨転移(両側鎖骨・背骨・左大腿骨)まで病気は進行していました。いわゆるステージⅣです。
平成25年9月には、治療を開始しました。ゴナックス注射、カソデックス内服を続けました。その甲斐あって、鎖骨と背骨の転移は消失しましたが、大腿骨は残ったので放射線治療を追加して、効果が出て消失しました。そして、セカンドオピニオンで平成26年3月に当院を受診したのです。
当時は、治療を開始して半年位で、状態も落ち着いていたので、このまま治療を続けるのが最良でしょうと回答しました。

あれから、4年8ヵ月経った本日に、再び64歳になった患者さんが来院されました。外見からは、とても元気そうで、4年以上経過した前立腺癌のステージⅣの患者さんとは思えません。
現在の患者さんの悩みは、平成27年11月からPSA値1.0以下であったのが、今年平成29年9月からPSA値が1.0を越え、1.66~1.347に上昇し、主治医から再度放射線治療をやりましょうと強要されているとのこと。そこで、今後の治療について相談されました。

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まず驚くべきことは、前立腺癌ステージⅣの5年生存率は、この表で示すように43.6%です。56%以上の確率でお亡くなりになっているのです。それからすると、目の前の患者さんは、まだまだ元気で(私よりも元気!)、あと5年以上は生きれるでしょう。

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この患者さんが一番心配しているのが、ホルモン抵抗性前立腺癌(去勢抵抗性前立腺癌CRPC)です。
前立腺癌は、男性ホルモンであるテストステロンによって活性化します。
この男性ホルモンであるテストステロンを制御することで、前立腺癌を制御できると考えます。

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この患者さんの治療法のように、ゴナックスはテストステロンが作れないようにし、カソデックスはテストステロンレセプターを完全ブロックします。そうすることで、テストステロンが癌細胞内に侵入し、核を刺激して活発になるのを防ぎます。
しかし、ホルモン治療を続けていると、隠れていた生き残った既存の前立腺癌が悪化し、男性ホルモンを遮断されても癌細胞内で自ら男性ホルモンを造れるようになるのです。

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ホルモン抵抗性前立腺ガンの予防として、癌細胞の中まで効果のあるイクスタンジを毎週1回〜2回少量服用することを提案しました。イクスタンジであれば、細胞膜のレセプターとレセプターから細胞への浸入経路と細胞内の男性ホルモンが核内に浸入もブロックしてくれるのです。その結果、細胞内で男性ホルモンが造られてもブロックされるので、変身途中の前立腺ガンを押さえ込んでくれます。

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