神経因性膀胱と誤診され1日6回自己導尿している前立腺肥大症の患者さん
栃木からご夫婦で来院された60歳代の男性患者さんです。
現在、自力で排尿は50ccほどで、残尿は常に400cc〜500ccも残っています。地元の大学病院では「神経因性膀胱」の診断で、一日6回の自己導尿を指導され実施しています。
しかし、一生自己導尿を行わなければならないことに、患者さん本人はひどく落胆していました。
いろいろお話をお聞きし、超音波エコー検査を行いました。
前立腺の大きさは32㏄と正常範囲の20㏄前後と比較しても、約1.5倍の大きさです。いわゆる前立腺肥大症の範疇に入ります。
超音波エコー検査の所見を詳細に観察すると、右の写真の如くです。
赤い矢印の線が、本来の膀胱のラインです。この患者さんは、膀胱のラインよりも膀胱側に前立腺が突出(緑の矢印)しています。いわゆる中葉肥大型前立腺肥大症の所見です。膀胱頚部硬化症の範疇に入ります。
この患者さんが、前の主治医に前立腺肥大症の手術をすれば、導尿しなくてもよくならないかと尋ねました。
すると、主治医は神経因性膀胱になった膀胱は治らないので、手術をしても無駄だと答えたそうです。
前の主治医は試みもしないで諦めてしまう、杓子定規の応用の効かない冒険心のない医師です。前立腺の詳細な検討もしないで出した結果でした。前立腺肥大症でも中葉肥大型は、この患者さんのように強く排尿が障害されます。まずは前立腺肥大症の治療が優先です。
神経因性膀胱はダメになってしまった膀胱の状態を示しているに過ぎません。膀胱がダメになってしまった原因を追究しないで、ダメなものはダメという判断は、医学ではありません。その原因を除去することで、治るかも知れません。この患者さんは恐らく治るでしょう。まずは、排尿障害の治療薬であるユリーフと前立腺肥大症治療薬であるプロスタールを処方しました。この治療で軽快しなければ、内視鏡手術を考慮しました。
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