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急性副睾丸炎と慢性副睾丸炎

男性患者さんで、睾丸を痛がる男性をみることが時々あります。
片側の睾丸がパンパンに腫れていて、発熱のある患者さんです。触診で触れると硬くなっていてとても痛がります。睾丸と副睾丸の境界線がなくなっていて副睾丸が腫れています。
この状態が急性副睾丸炎というものです。治療は積極的な抗生剤の投与と睾丸部の冷却です。副睾丸の腫れは、長い人であれば3か月くらい続きます。
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問題になるのは、睾丸が痛くなったにもかかわらず、睾丸は腫れてもいず、左右差がなく、熱も出ていない状態の慢性副睾丸炎と診断される患者さんです。抗生剤を長期に投与されても痛み症状は改善しないのです。ここに挙げた症例もそのような患者さんです。

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大学病院の泌尿器科も受診しましたが、慢性副睾丸炎と診断され治療を受けましたが治りません。
仕方がなく、高橋クリニックにセカンドオピニオンで受診されました。

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初診時の超音波エコー検査です。
前立腺は22㏄と正常ですが、全体的に丸みを帯びています。これは前立腺肥大症を示唆しています。尿道(白い直線)のそばに前立腺結石が認められます。排尿障害が存在します。膀胱括約筋は変形していて、尿道に垂直に交わっていません。これも排尿障害の所見です。そのため、膀胱三角部(赤い台形)が厚くなっています。膀胱三角部の肥厚は、膀胱刺激症状を示唆します。膀胱刺激症状とは、頻尿、残尿感、尿意切迫感などですが、この患者さんには、そのような膀胱刺激症状がありません。

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おそらく、この患者さんの場合、膀胱刺激症状が睾丸の痛みとして錯覚したのでしょう。
治療として排尿障害の治療薬であるαブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフなど)とβ3刺激剤(ベタニス)を処方しました。結果、予想通り睾丸痛は軽減し、治療5か月後には痛みは完全消失しました。

【備考】
慢性副睾丸炎という病名は存在しますが、急性副睾丸炎という病気の対照的に概念として存在するだけで、現実にはこの患者さんのように、違う原因の痛みであると私は考えています。
また、急性副睾丸炎になる原因も、細菌が本当の原因ではなく、隠れた排尿障害が原因だと私は考えています。ですから、一度急性副睾丸炎になった患者さんは、排尿障害の治療をしない限り、その後も繰り返す筈です。

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