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尿意の秘密

1日に10回も20回もトイレに行かれて頻尿で苦しんでいる人からすれば、毎日何回も感じている尿意を泌尿器科医は熟知していると思うでしょう?
ところが、泌尿器科医を始めとして医学にたずさわるすべての人間で、膀胱のどこが尿意を感じているのか証明できる人はいません。理由が分からないにもかかわらず、尿意を抑える治療薬は存在するのです。おかしな話です。ここでは、先日の講演会で私が話した事を中心に「尿意」について解説しましょう。
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専門書によると、尿意はイラストのような仕組みで感じています。
つまり、膀胱粘膜が伸展すると、アセチルコリンAchやアデノ三リン酸ATPなどの生物活性物質が放出され、裸の膀胱感覚神経を刺激して尿意を知覚するというものです。

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他の文献にも、もっと簡単にイラストで示されています。
膀胱粘膜の伸展で、アセチルコリンAch、アデノ三リン酸ATP、プロスタグランディンPGが放出され、膀胱感覚神経を刺激して尿意を感じるというものです。
しかし、ここで、疑問が生じます。尿意を抑えるお薬は、すべて膀胱平滑筋を弛緩させる薬剤なのです。例えば、α1ブロッカー(ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)やβ3刺激剤(ベタニス)や抗コリン剤(ベシケア・トビエース・バップフォなど)やPDE5阻害剤(ザルティア)などです。
イラストで示すように、尿意には膀胱平滑筋はまったく関与していません。それなのに膀胱平滑筋を緩める薬剤が、なぜ尿意を低下させるのでしょうか?その理由として、膀胱平滑筋が緩むと膀胱内圧が低下するからだと専門書には解説されています。

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しかし、この解説は矛盾だらけです。なぜなら、膀胱平滑筋が緩むと膀胱内圧が低下する訳ですから、膀胱粘膜は伸展して生物活性物質がさらに大量に放出されます。その結果、尿意はさらに増すことになります。
膀胱平滑筋は筋肉だからという固定概念が間違いなのです。膀胱平滑筋は実は感覚装置でもあるのです。ですから膀胱平滑筋が緩むと、尿意が低下するのです。
膀胱平滑筋と自律神経の基本構造は、感覚器の基本構造と同じことから、膀胱平滑筋が感覚装置であることが示唆されます。
膀胱平滑筋が感覚装置と考えて治療を見直すと、治療の精度が飛躍的に増します。

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