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下部尿路症LUTS(Lower Urinary Tract Syndrome)

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下部尿路症と言われる症状は、ここに挙げるいろいろな代表的な症状があります。
始めの2つが排尿困難が原因の症状です。
次に挙げる赤線で囲んだ3つの症状は、主に尿意にかかわる症状です。
最後に痛み系の症状があります。

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これら症状を含んだ病気の一群を下部尿路症と診断します。
その診断手順は、イラストのごとくです。
つまり、下部尿路症を訴える患者さんのうち、男性で前立腺が大きければ前立腺肥大症と診断され、前立腺が小さければ慢性前立腺炎と診断されます。男女問わず残尿が多ければ、神経因性膀胱と診断されます。
ご婦人の場合、尿検査で白血球が認められると感染症がありと判断され、慢性膀胱炎と診断されます。白血球が認められなければ、感染症はないと判断され、昔であれば心因性頻尿、今で言えば過活動膀胱と診断されます。
膀胱粘膜に出血などの異常が認められれば、間質性膀胱炎と診断されます。
どの場合も、治療が上手くいかなかったり、検査所見に明らかな異常がなければ、気のせい、あるいは年のせいと診断されるのが落ちです。
ここに掲げた診断までのアルゴリズム(手順)では、患者さんの満足できる治療結果は50%程度です。なぜなら、症状別に鑑別する診断法で判別しているので、下部尿路症の本質をつかんでいないからです。それぞれの症状をそれぞれの専門分野の医師が診断し治療するからです。
前立腺肥大症の専門家は前立腺を除去すれば済むと考えていて、なぜ前立腺肥大症で頻尿や残尿感が出現するかを考慮していないからです。尿検査で白血球が見つかると細菌感染としか思いつかない感染症専門の医師がいるからです。人体で白血球が出現するのは感染症だけと限らない事実を無視しているからでしょう。炎症症状があれば、必ず感染症と考える頭の固い御仁もいます。

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このイラストは関連痛を示すために私が作ったものです。
ここで重要なのが脊髄神経です。私たち医師は脊髄神経内のソフトウェアを観察することはできません。そういう意味では脊髄はブラックボックスに他なりません。下部尿路で起きた現象は電気刺激として脊髄神経に送られます。通常脊髄神経は尿意を中心とした症状、頻尿・残尿感・尿意切迫感などの症状を作ります。しかし、患者さんによっては痛み症状だったり自律神経症状なども作るのです。それらの症状が下部尿路とは一見無関係な症状なので、誤診されることになります。

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これらすべてのことを考慮したうえで作ったのが、このイラストに示すアルゴリズムです。
平滑筋の興奮は、排尿障害による平滑筋の変性異状によっておきます。平滑筋の異常興奮が脊髄神経の神経回路を二分し、「尿意の神経回路」と「痛みの神経回路」を形成します。それぞれの神経回路を介して、さまざまな病気の症状となると考えられます。

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コメント

初めまして、宜しくお願い申し上げます。
小生千葉県在住の50代後半の者で、今現在はカテーテルによる自己導尿中であります。

長いですがこれまでの主な経過を記します。
今年の3月初旬に排尿困難となり、千葉県内の泌尿器科に掛かりました。1軒目は尿が出にくい事と尿検査で血液が出たとかで尿道狭窄症と言われ投薬も無くそのままでした。
その1週間後更に排尿が困難になり別の泌尿器科を受診しまして、尿検査、血液検査、エコー検査で即座にカテーテルによる排尿で1200ccも溜まっており、その後留置カテーテルで排尿パックを数日過ごし、今の自己導尿に至ります。

また昨年夏頃に膀胱炎を何度も再発、腎盂炎にも罹り今は完治している様です。
秋に腰椎間板ヘルニアから来る腰痛、右脚痛、痺れ等があり整形外科に通院して居りました。
12月中頃よりリリカを処方されまして、痛み軽減された様ですが反対に脚に力が入らず階段を降りる事が出来なくなり服薬は中止しました。この間約3週間は服用した事になります。気のせいかも知れませんがこの頃より段々と排尿が困難となり尿漏れ?による臭いも気にはなったのですが、何とか排尿できていたのでそのままに過ごして居りました。

そこで3月初旬にいよいよ排尿困難となり2軒の泌尿器科受診となったわけですが、2軒目の先生からは神経因性膀胱と言われました。
当時受診していた整形外科(リリカを処方された医院とは別ですが)の先生の話ではMRIを見る限りではヘルニアによる排尿障害は考えられないとの見解で、大学病院を紹介され整形外科を受診後、神経内科に回され排尿機能検査を受け、結果はヘルニアの影響は考えづらく、また膀胱の収縮が見られないとの所見で残念ながら効く薬が無いので自己導尿するしか無いとの事でした。

ところが、今まで内視鏡による尿道の検査や膀胱の状態、前立腺等の検査はしていない事も気掛かりでは有りますが、血液検査である程度は分かるのかなとも思い現在に至ります。
【回答】
血液検査では、分かりません。


今は何も処方されてなく、ずっと自己導尿が続くのかと考えている中で、ネット上で此処を見つけ自力排尿がもしかしたら出来るのかも知れないと思いコメントに書かさせて頂きました。どうぞ、宜しくお願い致します。

※神経因性膀胱ってある意味便利な病名ですね。多岐に渡る原因が考えられるので。
【回答】
神経因性膀胱と診断されただけで、それ以上の治療法を考えない医師が多過ぎます。
神経因性膀胱=治らない病気=自己導尿という図式です。


投稿: 50代男性 | 2016/05/05 16:40

 以前、コメント欄での相談で排尿障害による前立腺炎ではないかとアドバイス頂いたものです。それから、通院中の病院でエブランチルを処方され朝1錠飲んでいました。ただ、あまり良くなっていないのが現状です。尿の出も悪く(尿道でひっかかるような感覚があります、うまく言えずすみません)、排尿中尿道に焼けるような不快感があります。残尿感もあります。会陰部の灼熱感も常にある状態です。あと射精時に精液が詰まった感じになり出ないときがあります。絞り出すように出すと、精液は黄色く固まっていている状態です。この症状も前立腺炎の影響でしょうか。
【回答】
はい。

投稿: よっちゃん | 2016/05/07 18:25

 たびたびすいません。現在エブランチルを朝一錠飲んでいるのですが、適切でしょうか。
【回答】
排尿障害の治療薬としてはOKです。
30歳以上であれば、もっと効果のある前立腺肥大症の治療薬であるハルナールを保健薬で処方できますが。」

それと気になるのは尿道狭窄にならないか心配なのですが大丈夫でしょうか。どういった状態になれば尿道狭窄の恐れがあるのでしょうか。
【回答】
尿道狭窄症の原因は、淋病性尿道炎と尿道外傷だけです。
心当たりがあるのですか?

投稿: よっちゃん | 2016/05/08 18:25

 以前、尿道炎を患ったことがあります。ただ、その時は中学生で恥ずかしく治療せずに放置してしまいました。後に現在のような症状で通院するようになり、血液検査などで炎症反応を調べたのですが異常はありませんでした。自然治癒したのでしょうか。それと小学生の時に鉄棒などにまたがって遊び会陰部のあたりを強打することが何回かありました。尿道外傷の原因に「何かにまたがったときの外傷」と書いてあったのを見て不安になりました。
 2つ、原因に当てはまるので心配です。現在は30歳になりますが、何年も経って尿道狭窄症になることは考えられますか。
 尿の出が悪く、勢いがないので尿道狭窄なのではないかと相談させていただきました。
【回答】
尿道狭窄のでの悪さと、膀胱頚部硬化症のでの悪さは、違います。
区別はウロフロメトリー尿流曲線で確認できます。

投稿: よっちゃん | 2016/05/09 15:46

 返答ありがとうございます。尿流量測定ウロフロメトリー検査を受ける必要があるのですか。2年くらい前に市民病院で尿道狭窄の不安を訴えたところレントゲンをとり、狭窄はないといわれました。ただ、2年以上前ですし、尿流量測定ウロフロメトリー検査を受けていないので不安です。
【回答】
それなら尿道狭窄の心配はありません。」

 先生の以前の記事で膀胱頚部硬化症と慢性前立腺炎は同義であると書いてありましたが、私も上記の疾患による排尿障害ということなのでしょうか。
【回答】
おそらく。」

 およそ半年エブランチルを朝一錠飲んでいるのですが、治癒できるでしょうか。
【回答】
可能です。

投稿: よっちゃん | 2016/05/09 22:27

 治癒できると聞いて安心しました。エブランチルをこのまま飲み続ければ治癒できるということでしょうか。
【回答】
治癒というのは語弊があります。
症状を抑えるということです。」

 現在通院しているところで、尿の出が悪いことを言ったところ、朝一錠と夕一錠に増やすことを提案されたのですが、増やすのは良くないでしょうか。
【回答】
さほど変わらないでしょう。

投稿: よっちゃん | 2016/05/10 21:40

 完治することはないのです加…。うまく付き合っていくしかないのですね。
 以前先生に相談させていただき、排尿障害だと知りエブランチルを処方してもらうことができました。本当に感謝しています。それから、半年ほど飲み続けていますがここ1か月ほど症状が良くないのです。以前は会陰部の灼熱感や尿のキレや出が悪いといった症状はありましたが、調子の良い日は尿の勢いもありました。ところが最近は尿道が焼けるような感覚が排尿時に常にあり、出の悪さもひどくなっています。トイレに行くときはかなり憂鬱になります。このままの治療でよいのでしょうか。
【回答】
薬を変えるべきでしょう。

投稿: よっちゃん | 2016/05/11 18:48

 前にハルナ―ルを挙げられていましたが、この薬を処方してもらえばよいのでしょうか。
【回答】
はい。」

 エブランチルが効かないのは、それだけ症状が悪化しているということなのでしょうか。
【回答】
はい。」

 私のような症状の先生の患者さんの中で薬を飲まずに生活できるようになった方はおられますか。
【回答】
いないでしょう。

投稿: よっちゃん | 2016/05/11 22:15

本日は受診させて頂き有難う御座いました。
また尿閉なってから約2ヶ月間、何も処方されずずっと自己導入かと諦めていましたが、診察して原因を説明頂き何か光の様なものが見えてきた様に思います。処方も頂きこれからの状況次第ですが、宜しく致します。

昨年の腰痛の際にボルタレンサポが全く聞かず不思議でしたが先生の説明で納得致しました。

本日は有難う御座いました。

投稿: 50代男性 | 2016/05/12 21:05

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