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神経因性膀胱の分類(治療から見た本質的な分類)

神経因性膀胱の患者さんで問題となるのが、弛緩性神経因性膀胱の治療で1日何回もの自己導尿です。生活の質(QOL)が低下して、活動範囲がどうしても狭まります。
主治医は「仕方がない」の一点張りです。自分の母親や父親だったら、やはり同じように対処し考えるのでしょうか。

排尿の仕組みをもう一度考え直すと、治療方法が見えてきます。
排尿の為には、①膀胱排尿駆出筋、②膀胱括約筋(内尿道括約筋)、③尿道括約筋(外尿道括約筋)の3つの要素の働きが重要になります。

――――――――――――――――――――――――――――――――
   要素         正常           神経因性膀胱
              A  B        C  D   E   F  G
              ⇓  ⇓        ⇓  ⇓   ⇓   ⇓  ⇓
――――――――――――――――――――――――――――――――
①膀胱排尿駆出筋  ○  ×       ○  ×  ○  ×  ×
②膀胱括約筋     ○  ○       ×  ×  ○  ×  ○
③尿道括約筋     ○  ○       ○  ○  ×  ×  ×
――――――――――――――――――――――――――――――――

○は機能が正常、×は機能不全を示します。

Aの組み合わせは、健全です。
Bの組み合わせは、①膀胱排尿駆出筋の機能不全はあっても、排尿そのものには問題がなく、患者さん本人は病気を自覚しません。自覚しないので医師にもかかりませんから、見かけ上、正常です。

C~Gの組み合わせが弛緩性神経因性膀胱と診断される排尿障害の状態です。
E・F・Gの組み合わせは、随意筋=骨格筋である③尿道括約筋の機能不全ですから、脊髄損傷やニューロパチィなどの神経障害があり、排尿障害よりも歩くことすら出来ないので、排尿障害に関する症状を患者さんのほとんどが受け入れることが出来ます。

一番問題なのが、CとDの組み合わせの患者さんです。歩行障害もなく五体満足で一見健康体に見えるのに、排尿が満足に出来ない患者さんたちです。
表から容易に分かるように、①膀胱排尿駆出筋の機能の有無にかかわらず、②膀胱括約筋の機能不全が排尿障害の重要な要因である事が分かります。

以上のことから、自己導尿を強いられている弛緩性神経因性膀胱の患者さんの多くは、膀胱括約筋の機能不全が問題になる訳です。つまり、排尿しようとする時に膀胱括約筋が緩まず閉まったままで、排尿出来ないというのが根本問題なのです。

治療としては、この膀胱括約筋を緩めてあげれば良いことになります。
薬剤では、エブランチルなどのα‐ブロッカー(ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)をまず試みます。
神経因性膀胱を専門としている医師たちは、ウブレチドという膀胱排尿駆出筋を補助する薬剤を使いたがりますが、表で分かるように、膀胱排尿駆出筋の機能不全が存在していても、膀胱括約筋が正常であれば問題がない訳です。逆にウブレチドにより膀胱括約筋が開かなくなることが多いので注意が必要です。

薬剤による治療では、十分な効果が得あられない場合に限り、内視鏡手術で膀胱括約筋を切開・切除します。
尿失禁の後遺症があるのでは?という疑問や恐れを感じる人もいるでしょう。一般の泌尿器科医も同じで、このような手術をしません。しかし、基本に帰って解剖学や生理学を勉強すれば理解できることですが、失禁しないように頑張っているのは尿道括約筋だけなのです。尿道括約筋に障害を加えなければ、尿失禁にはなりません。

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コメント

初めまして、62歳主婦です。
40年前胸椎と腰椎の境の所を圧迫骨折しましたが、今まで歩行障害もなく元気に暮らしていましたが、今年6月頃から異常にトイレが近くなり、足が痺れてきました。神経因性膀胱と言われ、エブランチルも効かなかったので、今1日5回導尿をしています。MRIを撮って脊髄円錐症候群・脊髄空洞症とも言われました。こんな私はこれからずっと自己導尿するしかないのでしょうか?
ご指導の程よろしくお願いします。
【回答】
このブログの関連した内容から判断できるように、私は内視鏡手術で神経因性膀胱を自己導尿しない生活にしています。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/urology/2013/07/469-39af.html

投稿: k.k | 2013/12/07 22:43

お忙しい中、早々に御回答頂き、有難うございます。
お陰様で希望が持てます。
今通っている総合病院の泌尿器科ではエブランチルが効かなかった為、初診から2回目で「一生自己導尿をする様」に言われ、整形外科では「今後の予防の為に脊椎狭窄の除圧と固定術」を薦められました。
9日に行った脳神経外科のある総合病院では「脊髄に空洞があるのでシャント手術と除圧手術同時(固定術は不要)がいいが、MRIを診る限り緊急性はない。手術にはリスクもあるので脳外では予防の為の手術はしない。空洞症の進行は遅いので今は経過観察の方が良い」と言われました。
12日に最初の病院の泌尿器科のデーターを貰って、20日に脳神経外科のある病院の泌尿器科に受診する事になっています。
 高橋クリニックはかなり遠方なので、もう少し此方の病院で脳神経外科と泌尿器科と総合的に診て貰うと思いますが、今後色々検査をしてもヤッパリ「一生自己導尿しかない」と言われたら、その時には何卒宜しくお願いします。

投稿: k.k | 2013/12/11 16:48

初めまして75歳の統合失調症を患らっている兄のことで相談させて頂きます。兄は20歳代から抗精神病薬を服用し続けています。昨年12月尿意はあるが、尿が出なくなり今年1月に泌尿器科医に神経因性膀胱による尿閉と診断されました。バルーンカテーテルを留置しユリーフ錠4mg、とウブレチド錠5mgを1日2回、10日間服用しましたが改善がみられずバルーンカテーテルはこの先一生留置し続ける必要があると言われました。今は月に1回バルーンカテーテルを交換するだけで治療らしい治療はして頂いていません。家族としては簡単に諦めることができず、インターネットで検索していたら先生の記事に出会い、まだ治療方法があるように思えてきました。先生の御見解を伺いたく投稿させて頂きました。なお精神科の医師には尿閉の出にくい抗精神病薬に徐々に切り替えて頂いているところです。
お忙しい中恐れ入りますがよろしくお願い致します。
【回答】
膀胱頚部硬化症の内視鏡手術をすれば改善する可能性はあります。

投稿: | 2015/05/06 23:31

初めまして。47歳、男性です。
3年前に脳梗塞で左半身麻痺の後遺症があります。
リハビリ病院に入院中から現在まで、ずっと頻尿(でも、トイレに行くと出ないことも多い)と、残尿感に悩まされています。泌尿器科では、前立腺肥大と言われ薬を服用していますがまったく改善されません。先生のHPを見て、何か脳梗塞の後遺症によって今の症状が出ているのでは?と思うようになりました。その可能性はありますでしょうか?
【回答】
多く質問される内容です。
脳梗塞などの脳血管障害の既往がある患者さんの多く経験することです。
医師は短絡的に原因を脳血管障害のせいにしますが、ほとんどが以前から隠れていた排尿障害の症状が顕在化したと考えます。
ですから、排尿障害の治療を積極的に行えば軽快するでしょう。

投稿: TM | 2015/09/20 12:28

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