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神経因性膀胱の治療#4 69歳のご婦人 留置カテーテル生活からの解放

69歳のご婦人です。(患者番号29681)
平成24年12月に下腹部痛出現し、婦人科を受診したところ、巨大な「卵巣のう腫」と診断されました。
平成25年1月に大学病院でMRI検査を実施したところ、卵巣のう腫ではなく、パンパンに腫れた膀胱であり、「弛緩性神経因性膀胱」と診断されました。

大学病院泌尿器科で1月から自己導尿の指導を受け何回か試みましたが、なかなかうまくいかず、留置カテーテルになりました。しかし、留置カテーテルが痛く、その後も別の大学病院泌尿器科で再度自己導尿を試みましたが、挿入時の痛みが辛く、結局、留置カテーテルの状態で悶々とした生活を送っていました。

お嬢さんがインターネットで探し、平成25年5月に高橋クリニックを受診しました。

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神経因性膀胱の治療#3 82歳の男性 自己導尿1日5回からの解放

82歳の高齢の男性です。(患者番号29354)
平成24年7月に突然尿が出なくなりました。(尿閉)
地元の大きな病院の泌尿器科を受診、前立腺は大きくなく、膀胱の力が足りない、「弛緩性神経因性膀胱」と診断されました。ベサコリン、ウブレチド、フリバスを処方されましたが、排尿障害はだんだん強くなり、平成25年2月から1日5回の自己導尿の指導を受け、途方に暮れ、インターネットで高橋クリニックを探し来院しました。

来院時には自分で排尿することは出来ず、1日に5回自己導尿を行っていました。自己導尿での採尿は、1回につき200ml~250mlです。
Nb29354m82echopre前立腺は大きくなく23ccと正常範囲内です。
早速、それまでの薬剤を中止にして、排尿障害の治療としてユリーフと、前立腺を軟らかくしようとプロスタールを処方しました。私の処方薬で、尿は少し出るようにはなりましたが、それでも1日4回の自己導尿が必要で、1回あたり150ml~200mlの尿が残っています。

自己導尿から解き離れたいという本人の強い希望で、内視鏡手術をすることになりました。

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神経因性膀胱の分類(治療から見た本質的な分類)

神経因性膀胱の患者さんで問題となるのが、弛緩性神経因性膀胱の治療で1日何回もの自己導尿です。生活の質(QOL)が低下して、活動範囲がどうしても狭まります。
主治医は「仕方がない」の一点張りです。自分の母親や父親だったら、やはり同じように対処し考えるのでしょうか。

排尿の仕組みをもう一度考え直すと、治療方法が見えてきます。
排尿の為には、①膀胱排尿駆出筋、②膀胱括約筋(内尿道括約筋)、③尿道括約筋(外尿道括約筋)の3つの要素の働きが重要になります。

――――――――――――――――――――――――――――――――
   要素         正常           神経因性膀胱
              A  B        C  D   E   F  G
              ⇓  ⇓        ⇓  ⇓   ⇓   ⇓  ⇓
――――――――――――――――――――――――――――――――
①膀胱排尿駆出筋  ○  ×       ○  ×  ○  ×  ×
②膀胱括約筋     ○  ○       ×  ×  ○  ×  ○
③尿道括約筋     ○  ○       ○  ○  ×  ×  ×
――――――――――――――――――――――――――――――――

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神経因性膀胱の分類(建前上から見た分類)

下部尿路や前立腺に問題なく、排尿が円滑に制御できない状態を神経因性膀胱とされています。
神経因性膀胱の分類は、今までにも様々定義されていましたが、大雑把に下記のように定義・分類されます。

①弛緩性神経因性膀胱(低活動膀胱)
膀胱の排尿筋の力が低下して、排尿出来ない状態です。
膀胱は尿意があってもなくても、残尿はとても多くなり、腹部腫瘤と誤診されることが多々あります。ご婦人の場合、巨大卵巣のう腫と誤診されるエピソードがあります。
また、溢流性尿失禁あるいは奇異性尿失禁の状態が多く出現します。つまり尿が出ないのに尿失禁するという矛盾した現象が起きるのです。

原因として、骨盤内手術による神経損傷、糖尿病、アルコール中毒、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、帯状疱疹などが挙げられています。もちろん原因不明もあります。

治療として、エブランチルやウブレチドなどの薬剤治療か自己導尿が標準的な治療です。

②痙性神経因性膀胱(過活動膀胱)
膀胱の排尿筋が、意識的にしろ無意識にしろ勝手に収縮して、尿意切迫性尿失禁になってしまいます。最近では過活動膀胱OABとしてテレビコマーシャルで有名になりました。

原因として脳梗塞、脳出血、パーキンソン病とされています。
もちろん原因不明もあります。

治療薬はベタニスなどがありますが、どれも対症療法です。

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神経因性膀胱の治療#2 広汎子宮全摘手術の後遺症

様々な手術で、たまたま膀胱に関した神経を損傷すると「神経因性膀胱」という病態になり、自力で排尿するのが困難になります。
一般的に、神経因性膀胱は治らない病気ですから、一生、自己導尿の指導を受けます。しかし、神経因性膀胱そのものは治すことはできませんが、治療により健常者と同じように振る舞えることは可能です。
今回ご紹介する患者さんも、子宮頚癌の手術(広汎子宮全摘術)で膀胱の神経を損傷されて排尿障害を訴えた患者さんです。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

こんにちは。
11月30日に手術を受けた〇〇〇〇市の〇〇〇〇です。
経過報告を兼ねてメールさせていただきました。

その後、とても順調です!!!
2回目のカテーテルを抜いたあと3日ぐらい出血がありましたがそれ以降はなくて、おしっこは勢いよく出る時と、出にくい時がありましたが、最近になってだいぶ安定してきました。
一時かなりあった尿漏れも、今は溜まっているときにちょっと、ぐらいになり、このままいけばなくなりそうです。
おしっこはトイレに座ってから少し時間が経って出てくる感じです。「うんちをするときの感じで」という先生の言葉を思い出して、少し前傾すると出てきて、そのあとはけっこう勢いよく出る時もあります。
朝いちばんはやはりたくさん溜まっているせいか、少し出にくい感じですが、昼間調子いいときはじゃ~っと出て、これまでの人生で未体験の快感(笑)です。
おしっこが普通に出てくれるのって、本当に有難いなぁ・・・と痛感しています。

尿意も少し戻ってきたみたいです。
朝、トイレに行きたくて目が覚めるようになりました(夜中にトイレで起きることはほとんどありません)。日中は相変わらず時計を見て2時間おきぐらいにトイレに行ってますが、1時間半を超えると「溜まってきた」感があり、少し漏れやすくなります。

とにかく、日常生活で「おしっこ」のことをいつも考えている状態(考えざるを得ない状態)から解放されて幸せです!
手術前から考えると、もう本当に雲泥の差です。あの頃は、おしっこしてトイレから出てくる頃には、エネルギーを使い果たしてぐったり疲れてしまってました。
外出時のトイレでは、前傾したりあれこれやっている間にセンサーが作動し、何回も水が流れてしまい(電気が消えて真っ暗になっちゃったこともあります)、そうじゃなくてもえらい時間がかかっているので、外で待っていた人ににらまれたり、すごく長い列ができていたり・・・・そんなこんなでトイレに行くのが怖くなってました。

Nb26763f53flowじつは、手術前のウロフロメトリのときは、あの頃にしてはとても状態がよかったので、「こんなにおしっこがちゃんと出ていると、普段の状態を把握してもらえないかも・・・」と思ったのを覚えています。検査の前日から比べると、たぶん1.5倍ぐらいの勢いで、時間もかなり短めでした。結果を見た先生に「これは、かーなーりー(強調、笑)ひどいよー」と言われ、ええっ??これでもそうなんだ・・・とびっくりしました。

Nb26763f53flow2あのまま先生に出会うことなく、別の泌尿器科に行っても「これはもうしょうがないですね」とか言われて、排尿障害が進んでいってたら、と思うとぞっとします。

それから更年期の症状は大豆イソフラボンでばっちり収まってきました!
おしっこがどんどん出なくなって、頭痛・のぼせ・倦怠感・不眠etcが一挙に出てきたころが悪夢のようで、今ではたまに、あれ?ちょっとのぼせてる?と思う程度になりました。

先生には時間外に2回も処置していただき、深く感謝しています。
特に二回目は、もしかしたら落ち着いて何回かトライすれば大丈夫だったかもしれないのに、私がパニックになっちゃっていたのが原因だったような気がします。
私にとって先生は救いの神さまですが、そのせいで大切な用事をつぶしてしまい、申し訳ありませんでした。

時間外の対応を含む患者のフォローもさることながら、医学界的にコンセンサスとしては未だ認められていない手術を敢行する勇気と覚悟、無料相談を常時受け付けて情報をオープンにしてシェアする姿勢、それを何でもない事のようにこなしちゃう先生、すごいです。痺れます。

なんだかすごく長くなってしまいました。
先生のおかげで、今年は私にとってこれまでで最高の年になりました。
本当にありがとうございます。

年明けに1か月検診に伺う予定です。
ではでは、よいお年をお迎えください。

〇〇〇〇
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

【考察】

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神経因性膀胱の治療#1 1日4回の自己導尿の患者さん

福島県在住の74歳の男性患者さんです。
人間ドックで両側の水腎症(すいじんしょう:尿の流れに障害があり腎臓がパンパンになること)を指摘され、地元の有名な病院の泌尿器科で精密検査したところ、「神経因性膀胱」と診断されました。
要するに膀胱に力がないための排尿障害と診断されたのです。治る病気ではないと告げられ、今年の4月から毎日4回~5回の自己導尿(じこどうにょう:自分で尿道から膀胱へカテーテルを挿入して排尿すること)を指導されて行なっているそうです。
患者さんは何とかならないものかと高橋クリニックを受診しました。

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2D超音波エコー検査では大きな前立腺肥大症を認めます。
その大きさ、何と77cc!、正常の大きさが25cc以下ですから普通の男性の3倍以上の容積です。
誰が何と言おうと押しも押されぬ立派な前立腺肥大症です。


Bph21272m742

3D正面画像です。
ゲイン(感度)を調節して前立腺組織は透けていますから、大きな洞窟が見えます。
メジャーで洞窟の中ごろを間口と高さで測ると、4.37cm×2.65cmです。手前の方がもっと広いですから、膀胱内に突出した前立腺肥大症ということが分かります。


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上図を線画風に強調したのがこの写真です。

★印が膀胱平滑筋の肥厚した部分です。

前立腺内にまで膀胱平滑筋が浸入しているようにも見えます。


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3D背面画像では、最大径で同様に4.78cm×4.36cmというかなりの広さです。

さらに詳細に観察すると、2時と10時~8時の位置にシコリが確認できます。恐らく膀胱平滑筋の肥厚でしょう。


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上図を線画風に強調した写真です。

★印が膀胱平滑筋の肥厚したと思われる部分です。
膀胱側から尿道側まで肥厚した膀胱平滑筋が浸入しているように見えます。前立腺内の平滑筋が肥厚したという話は聞いたことがありませんし、前立腺肥大症そのものが3D画像では透明になるので、このようには描出されません。
前立腺肥大症というと、前立腺の大きさしか議論されませんでしたが、3D画像の登場により、画像による前立腺肥大症の分析が詳細にできます。
これにより、きめ細かい治療法が確立するかも知れません。
例えば、肥厚した膀胱平滑筋にボトックス注射をするのです。むやみやたらに注射するに比べたら、効果も絶大でしょうし、副作用も出ないでしょう。

排尿障害は神経因性膀胱が原因ではなく、容積77cc(重量77g)という前立腺肥大症からくるものでしょう。
たとえ、神経因性膀胱があったとしても、結論を出すのは前立腺肥大症の治療を行なってからの判断です。
この主治医は初めから神経因性膀胱という誤診で治療した可能性があります。1日4回の自己導尿を患者さんに科すという重大な過ちを犯したことになります。

取りあえずα-ブロッカー(ユリーフ)を1ヶ月処方して様子を見ることにしました。

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思い込み 「神経因性膀胱は治らない?」

この命題は、ある意味「本当」で、ある意味「嘘」です。
医師は、神経因性膀胱そのものは元の健全な膀胱に戻ることはないし、神経因性膀胱による症状(排尿障害)も治ることはないと、考えています。
私は、膀胱が元の健全な膀胱に戻ることはないと思っていますが、神経因性膀胱による排尿障害という症状は「治る」と考えています。
膀胱に力がないから排尿できないというのが神経因性膀胱の一般的な概念です。
私はこの概念を否定しています。例え本当に神経因性膀胱であっても治療法が的確であれば、排尿障害は治るというのが、私の自論です。

下記にその実例を上げましょう。

患者さんは岩手県在住の73歳男性です。
たまたま受けた健康診断でPSAが4.2(正常値は4.0以下)とわずかに高く、前立腺癌を疑われ、病院に入院して前立腺針生検を受けました。
12ヵ所の生検で1ヵ所から偶然に(12分の1ですから偶然と考えてよいでしょう)癌細胞が発見され、その後お決まりのホルモン療法を受けています。
前立腺癌の骨転移を調べる骨シンチ後に、まったくオシッコが出ない尿閉状態になり、それ以来6ヵ月間1日6回の自己導尿(自分でカテーテル・管を尿道から膀胱まで挿入し排尿する操作)を続けています。
大学病院から定期的に来る「神経因性膀胱専門」の偉い泌尿器科医は「神経因性膀胱」と当たり前のように診断し、自己導尿は一生続ける必要があると誰でも思いつく判断です。
患者さんにしてみれば、それまで自分の力で排尿できたのに、針生検や検査後から自然排尿できなくなったことを考えると納得がいきません。神経因性膀胱も以前からあったものだとの医師の判断です。
前立腺癌腫瘍マーカーのPSAは1を前後しています。患者さんの悩みは前立腺癌ではなく排尿障害であるにもかかわらず、主治医は執拗に放射線治療をすすめます。

さてさて、その患者さんが業を煮やして岩手から東京の高橋クリニックに来院されました。
検査で頑張って自尿が85ml、残尿が500ml以上です。患者さん曰く、「何とか自然排尿できた時は、直後の自己導尿での残尿は必ず500ml以上」という状態です。

ここで問題点を整理しましょう。・・・

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