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広汎子宮全摘手術の後遺症:神経因性膀胱の治療

様々な手術で、たまたま膀胱に関した神経を損傷すると「神経因性膀胱」という病態になり、自力で排尿するのが困難になります。
一般的に、神経因性膀胱は治らない病気ですから、一生、自己導尿の指導を受けます。しかし、神経因性膀胱そのものは治すことはできませんが、治療により健常者と同じように振る舞えることは可能です。
今回ご紹介する患者さんも、子宮頚癌の手術(広汎子宮全摘術)で膀胱の神経を損傷されて排尿障害を訴えた患者さんです。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

こんにちは。
11月30日に手術を受けた〇〇〇〇市の〇〇〇〇です。
経過報告を兼ねてメールさせていただきました。

その後、とても順調です!!!
2回目のカテーテルを抜いたあと3日ぐらい出血がありましたがそれ以降はなくて、おしっこは勢いよく出る時と、出にくい時がありましたが、最近になってだいぶ安定してきました。
一時かなりあった尿漏れも、今は溜まっているときにちょっと、ぐらいになり、このままいけばなくなりそうです。
おしっこはトイレに座ってから少し時間が経って出てくる感じです。「うんちをするときの感じで」という先生の言葉を思い出して、少し前傾すると出てきて、そのあとはけっこう勢いよく出る時もあります。
朝いちばんはやはりたくさん溜まっているせいか、少し出にくい感じですが、昼間調子いいときはじゃ~っと出て、これまでの人生で未体験の快感(笑)です。
おしっこが普通に出てくれるのって、本当に有難いなぁ・・・と痛感しています。

尿意も少し戻ってきたみたいです。
朝、トイレに行きたくて目が覚めるようになりました(夜中にトイレで起きることはほとんどありません)。日中は相変わらず時計を見て2時間おきぐらいにトイレに行ってますが、1時間半を超えると「溜まってきた」感があり、少し漏れやすくなります。

とにかく、日常生活で「おしっこ」のことをいつも考えている状態(考えざるを得ない状態)から解放されて幸せです!
手術前から考えると、もう本当に雲泥の差です。あの頃は、おしっこしてトイレから出てくる頃には、エネルギーを使い果たしてぐったり疲れてしまってました。
外出時のトイレでは、前傾したりあれこれやっている間にセンサーが作動し、何回も水が流れてしまい(電気が消えて真っ暗になっちゃったこともあります)、そうじゃなくてもえらい時間がかかっているので、外で待っていた人ににらまれたり、すごく長い列ができていたり・・・・そんなこんなでトイレに行くのが怖くなってました。

Nb26763f53flowじつは、手術前のウロフロメトリのときは、あの頃にしてはとても状態がよかったので、「こんなにおしっこがちゃんと出ていると、普段の状態を把握してもらえないかも・・・」と思ったのを覚えています。検査の前日から比べると、たぶん1.5倍ぐらいの勢いで、時間もかなり短めでした。結果を見た先生に「これは、かーなーりー(強調、笑)ひどいよー」と言われ、ええっ??これでもそうなんだ・・・とびっくりしました。

Nb26763f53flow2あのまま先生に出会うことなく、別の泌尿器科に行っても「これはもうしょうがないですね」とか言われて、排尿障害が進んでいってたら、と思うとぞっとします。

それから更年期の症状は大豆イソフラボンでばっちり収まってきました!
おしっこがどんどん出なくなって、頭痛・のぼせ・倦怠感・不眠etcが一挙に出てきたころが悪夢のようで、今ではたまに、あれ?ちょっとのぼせてる?と思う程度になりました。

先生には時間外に2回も処置していただき、深く感謝しています。
特に二回目は、もしかしたら落ち着いて何回かトライすれば大丈夫だったかもしれないのに、私がパニックになっちゃっていたのが原因だったような気がします。
私にとって先生は救いの神さまですが、そのせいで大切な用事をつぶしてしまい、申し訳ありませんでした。

時間外の対応を含む患者のフォローもさることながら、医学界的にコンセンサスとしては未だ認められていない手術を敢行する勇気と覚悟、無料相談を常時受け付けて情報をオープンにしてシェアする姿勢、それを何でもない事のようにこなしちゃう先生、すごいです。痺れます。

なんだかすごく長くなってしまいました。
先生のおかげで、今年は私にとってこれまでで最高の年になりました。
本当にありがとうございます。

年明けに1か月検診に伺う予定です。
ではでは、よいお年をお迎えください。

〇〇〇〇
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

【考察】

上記に示したグラフは、この患者さんの尿流量測定検査(ウロフロメトリー)の結果です。
約600mlの尿を5分(300秒)かけて排尿しています。排尿曲線の山は全部で大小合わせて58個です。これは、5分の間に58回息んだことを示しています。健常者であれば、1回の息みで少なくても平均毎秒15ml以上の速度で排尿できますから、600mlであれば40秒で排尿が終わる計算になります。私が「か~な~り、ひどいよ」と告げた根拠です。
一般的に泌尿器科医は、「神経因性膀胱」というものは治らず、そのQOL(生活充実度合い)はカテーテルの留置か自己導尿で管理するものと信じています。しかし、これは大きな誤解であり、この誤解のためにたくさんの患者さんがしなくてもよい苦労を強いられています。

例えば、足の骨折をしてやむなく足を切断した人がいたとしましょう。1年たっても10年たっても足は治りません。そのままであれば、歩行障害のために生活のQOLがかなり低下します。しかし、ひとたび義足を装着すれば、その人は歩行はもちろんのこと、走ることさえ可能になります。場合によっては健常者よりも身体能力が高くなる人も出てきます。
つまり、「神経因性膀胱」も同様で、病気そのものを治すことはできませんが、この患者さんのように生活のQOLを健常者と同じようにすることは可能です。

排尿機能、特に膀胱出口について泌尿器科医が誤解しているところに問題があります。膀胱出口は膀胱括約筋と尿道括約筋によって制御されています。膀胱括約筋は内臓の筋肉=平滑筋で構成されていて、神経支配は陰部神経を中心とする自律神経がコントロールしています。
ところが、尿道括約筋は骨格筋=横紋筋であり、神経支配は運動神経がコントロールしています。この患者さんのように骨盤内の外科的手術で傷ついた神経は排尿の自律神経であり、コントロールできなくなったのは膀胱括約筋であって、運動神経で支配されている尿道括約筋ではありません。したがって、尿道括約筋は無傷で機能する訳ですから、膀胱括約筋の麻痺で開放しなくなった膀胱出口を内視鏡手術で人工的にオープンしてあげれば済むことです。

イメージして下さい。膀胱括約筋が「自動ドア」で尿道括約筋が「手動ドア」です。正常であるならば、手動ドアを開けると連動して自動ドアが開くのです。しかし骨盤内手術のために自動ドアのコントロールパネルが故障してしまい、手動ドアを開けても自動ドアが連動して開きません。連動しない自動ドアのためにみんな困っています。ここで私が登場です。手動ドアを開けて、ピッタリと閉じている自動ドアの戸の部分を人が通れるくらいに穴を開けます。するとどうでしょう、手動ドアを開けるだけで人が通れるようになりました。自動ドアのコントロールパネルは手つかずですが、これで人が出入り出来る目的は達しました。こんな簡単なことを「神経因性膀胱」の専門医らは、「この病気は治らないから・・・」とさじを投げているのが現状なのです。

実際、一般的に実施されている前立腺肥大症の内視鏡手術(経尿道的前立腺手術TUR-P)の場合、執刀医は前立腺とともに膀胱出口の膀胱括約筋を無意識に削っている場合が多く、逆にその方が術後排尿状態が改善します。名人と呼ばれる泌尿器科医は、前立腺肥大症の内視鏡手術であれば、膀胱括約筋には決して触れずに前立腺しか削らないので、かえって排尿機能が改善しないことがあります。皮肉な現象です。教科書通りの手術をするので失敗するという見本です。

【追記】
Nb26763f53flow3内視鏡手術の6週間後の尿流量測定検査(ウロフロメトリー)の結果です。
初診時の排尿曲線と比較すると、同じ人間ではないくらいオシッコの勢いは良くなっています。
425ml(術前600ml)の排尿があり、24秒(術前5分=300秒)で済ませています。その間に6回(術前58回)の息みが認められます。
前回最大流量率(排尿速度) 7.9mL/秒が32.6mL/秒に、平均流量率(排尿速度) 2.3mL/秒が17.6mL/秒に著名改善です。
神経因性膀胱は治らないと考える医師に見せたいくらいです。

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コメント

神経因性膀胱にはエブランチルよりもユリーフ、ハルナール等の方が効果的である可能性は高く副作用も少ないのにも関わらず、保険適応にならないのはなぜでしょうか?
【回答】
薬事申請の時に前立腺肥大症の治療薬として申請し承認されたからです。
ですから、前立腺肥大症の適応しか許可されていないのです。

投稿: | 2012/10/25 20:51

排尿で困ってる若い人もたくさんいるのに・・・。救われる人も救われないですね。

投稿: | 2012/10/26 13:16

神経因性膀胱というのは、機能性膀胱頸部硬化症の1番悪い状態ですよね?そうすると、再び硬化する可能性も1番高いですよね?
【回答】
他の何に対して「1番」高いという質問ですか?

投稿: | 2012/11/10 10:54

「機能性膀胱頸部硬化症」の中でです。先生の昔の記事で、手術の後遺症以外の神経因性膀胱と呼ばれるほどの排尿障害は、三角部の過敏症状が起きず、違和感を感じず、そのまま放置した場合になるといったものがあったように思います。また、機能性膀胱頸部硬化症の方は自律的に膀胱頸部を開くことができないので、再硬化しやすいのであれば、神経因性膀胱と呼ばれるほど、自律的に開くことができなくなってしまった方は、先生が呼ぶ「膀胱頸部硬化症」の中でも最も再硬化しやすいと感じたのです。
【回答】
症状が出ないで神経因性膀胱になる人が、症状が出て慢性前立腺炎症状になる人よりも再硬化しやすいということにはなりません。
単に症状が出ないということだけです。

投稿: | 2012/11/13 13:50

母が40年前の子宮癌の手術により、1ヶ月前より尿閉となり1ヶ月前より自己導尿していますが、自己導尿しても1時間位で、尿意がおきイライラするようで悩んでいます。
今は3・4時間毎に導尿していますが、回数を増やすと痛みもあり、困っています。
【回答】
排尿障害の治療薬であるα-ブロッカー(エブランチル)を服用すると良いでしょう。

投稿: ヒロリサ | 2012/11/17 22:02

42才女性大阪在住です。カイロプラクティックを受けてから、おしっこが出るのに30秒以上かかるようになり、ふだんも尿もれパットが手放せません。便も気張る力をいれたらなく、出るそうな寸前までまたなけらばならず、とても苦痛です。
カイロプラクティックの人は自分が骨盤を強く押しすぎたため、神経がおかしくなったかもと
いいます。
【回答】
そんなことは起きません。』

自分なりに調べてみたら神経いんせい膀胱が当てはまる気がしますが治らないのかと絶望していたときに先生のブログに出会いました。この先生にと思ったのですが東京でした。
勝手申しますが、大阪で先生のような治療を受けることかわできる先生を紹介いただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
【回答】
存じません。
阪大などの大学病院に行かれてはいかがですか?

投稿: りんりん | 2013/06/04 00:21

2013年2月に広汎子宮全摘を受け、術後抗がん剤治療中です。現在時折尿意は感じるのですが、排尿は全くできず100%自己導尿です。治療して頂いている病院では現在排尿障害のフォローは何もないです。先生の診察を受けたいのですが、体調が安定せずこちらから質問させて頂きます。排尿時に腹圧は少しもかけてはいけないと言われているのですが、排便時くらいの圧は問題ないでしょうか?
【回答】
問題ないでしょう。』

手術の後遺症による排尿障害はどれくらいまでの期間回復が見込めるものなのでしょうか?先生の診察を受けるのに適した時期(早すぎる、遅すぎる)というのはありますか?
【回答】
半年くらいで改善しなければ、進展はないでしょう。』

投稿: きく | 2013/06/15 17:00

ご回答のお礼が遅くなりました。ありがとうございます。
度々の質問で恐縮ですが、広汎子宮全摘から半年経った時点で、自尿が全くない場合でもこの記事の内視鏡手術の適応はありますでしょうか?
【回答】
はい。
手術後神経損傷の神経回復を期待して、3ヵ月以上は様子をみます。
半年経過しているのであれば、後遺症の神経損傷の神経回復は見込めないと判断して、私は内視鏡手術の適応を考えます。

投稿: きく | 2013/07/20 16:24

抗がん剤治療が終了し、無事に経過観察に入れたら手術を考えたいと思います。
手術という方法もあることを知れたことで、精神的にとても救われました。
度々のご回答ありがとうございました。

投稿: きく | 2013/07/22 17:08

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