« 2011年7月 | トップページ | 2012年10月 »

寒くなると頻尿・・・その理由

Naihaigaihai泌尿器科の外来は、寒くなると混雑します。
なぜなら、寒くなると頻尿になる方が多くなるからです。「寒くなるとオシッコが近くなる」という現象は、一般の人でも経験することです。では、なぜ寒くなるとオシッコが近くなる(頻尿)のでしょう?

では、発生学や生理学を元に医学的にその原因を考察してみましょう。

Naihaigaihai私たち体は、妊娠した細胞、つまり受精細胞が出発点です。
初期の受精卵(胚)の外側の部分が外胚葉、内側を内胚葉といいます。外胚葉は早い時点で細胞の中に陥入し脳・中枢神経の元になります。また、外側の部分ですから、皮膚や口・目・肛門の粘膜にもなります。
内胚葉は、もともと内側に存在しますから、内臓の主たる部分を構成します。(図)

外胚葉系の組織は、外の環境の刺激に対して強く反応します。その原始的な反応(外見上の生命現象)の主たる役目を担う部分が、皮膚・目・耳・口の感覚器やその中枢である脳・脊髄神経です。
生命は、一定の温度以上で活発に活動します。ですから、温度が高くなる、つまり暑くなると外胚葉系のシステムが活発に反応します。そのための自律神経が交感神経になります。交感神経が興奮すると、脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンが分泌され、腎臓での尿産生が抑えられ尿量が減少し、皮膚の汗腺が刺激され発汗が多くなります。

内胚葉は外胚葉に比較し、後から出来た組織です。生命が独立して自由に動き回るために必要なエネルギーを産生したり蓄積する組織です。生命が活発に活動している時には、生命の主役は外胚葉系の組織になりますが、生命が休止・安静の時には、主役は内胚葉系の組織、つまり内臓系、肝臓・腎臓・膵臓・消化管になります。外胚葉が活発に活動する暑い時の逆、つまり寒い時に活発に働くのが内胚葉系です。
内胚葉系が活発に働くと、副交感神経が興奮します。副交感神経も交感神経の後から出来上がった神経らしく、交感神経ほど緻密で丁寧なシステムになっていません。かなり大雑把の造りです。副交感神経が興奮すると脳下垂体後葉から抗利尿ホルモンの分泌が抑えられ、腎臓の抑制が解除され尿がたくさん作られます。そのため尿量が増えるのです。逆に発汗が抑えられ汗をかかなくなります。副交感神経の興奮は内臓を興奮させ、膀胱が過敏になり、尿量の増加と膀胱の過敏で、オシッコが近く(頻尿)になるのです。

話が長くなりましたが、これが「寒くなるとオシッコガ近くなる」理由です。

人間の体は、さまざまなシステムによって調節・維持されています。今回お話しした内胚葉系と外胚葉系のバランスが、体の反応を生き物らしく見せてくれます。まだまだ他にもたくさんのシステムが何重にも織りなしている筈です。これらを一つ一つ解き明かせば、原因不明の病気治療の解明に結びつくことでしょう。

| コメント (1) | トラックバック (0)

早漏の治療薬 「デパス」

泌尿器科を専門にしている開業医ですから、「早漏」を訴えられる患者さんが年に二人~三人くらいの頻度でいます。
「早漏」を訴える勇気も並大抵ではありませんが、ご本人にとってはそれを上回るほどの悩みです。
このような時には、私は抗不安剤である「デパス」を処方します。抗不安剤と謳っていますが、自律神経の安定剤でもあります。
射精は、性行為の最中の性器から微弱な信号を脊髄あるいは脳中枢で積算して、ある一定のエネルギーに達した時点で発火して射精するのです。「ある一定」のラインは人それぞれで、低ければ「早漏」に、高ければ「遅漏」という状態になります。
「デパス」は、この発火点のラインを上げて、なかなか発火点に達しないようにする薬剤です。もしも「早漏」で悩まれている男性がいましたら、地元の内科医でも構いませんから、デパスを処方していただいて下さい。行為の30分~1時間くらい前に服用すれば効果的でしょう。

下記はたまたま「早漏」の相談を受け、デパスを処方した患者さんからのメールの一部です。

『こんにちは、〇〇〇〇と申します。
・・・以前、ペニスの皮が切れやすいと診察に行った者で・・・因みに、診察時に早漏の相談をし処方していただいた薬は効果があり本当にありがとうございました・・・』

| コメント (11) | トラックバック (0)

« 2011年7月 | トップページ | 2012年10月 »