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治らない亀頭包皮炎の理由

他の医療機関で治療したが治らないと来院する若者(中には中年も)が多くいます。
病気は亀頭包皮炎です。ほとんどの患者さんがカンジダ性亀頭包皮炎です。

Candida【実験シャーレで培養されたカンジダ菌】
カンジダはカビ・真菌です。カビは植物に分類される病原体あるいは常在菌です。私たち人間は動物細胞の集合体である多細胞生物です。動物細胞は、原初のころ、葉緑体で光合成をおこないエネルギーを産生する植物細胞に全面的に依存していた存在ですから、動物細胞の究極体である人間は、植物細胞の血をひくカビ・真菌を攻撃・拒絶・否定することはできないのです。そのためカビに対して免疫を持っていません。

Candida16118243【患者さんの分泌物から採取したカンジダ菌】
では、なぜ我々人間は全身カビだらけにならないのでしょう。
それはバイ菌(細菌)のお陰なのです。人間の体には無数のバイ菌とカビとウィルスが一つの宇宙を形成しています。そして各々が微妙なバランスで拮抗して安定しているのです。特にバイ菌とカビは二大勢力です。

何かの原因でこのバランスが崩れると、どちらかが勢力を拡大し秩序が保てなくなります。この秩序の乱れを体が感知し炎症を起こします。
バイ菌が勢力を拡大した時には、白血球免疫(先天免疫)が働いてバイ菌を殺してくれます。しかし、カビが勢力を拡大したときには、白血球免疫や抗体免疫(獲得免疫)がいくら働いても、カビを殺すことができません。カビを殺せなくても、無駄だとわかっていてもバランスが崩れている間は炎症が止むことはありません。つまり延々と炎症は続き悪化していきます。

この現象は亀頭包皮炎についても同じことが起きます。それがカンジダというカビが原因のカンジダ性亀頭包皮炎です。
患者さんは一生懸命にペニスを洗います。石鹸を使いただひたすらに洗うのです。実はこの洗い過ぎがカンジダ性亀頭包皮炎の治りを悪くしている原因でもあります。「洗い過ぎが原因?」と不思議に思うでしょう。これには次のような訳があるのです。
石鹸で洗ってきれいになるのはバイ菌だけです。植物であるカビ(カンジダ菌)は、皮膚に根がはっていて洗っても取れません。結果としてバイ菌だけがいなくなりカンジダ菌は残るのです。カビとバイ菌の勢力バランスは崩れ、カビだけがドンドン増殖します。カンジダ性亀頭包皮炎は一層悪化します。

泌尿器科医や皮膚科医がファーストチョイスとして処方する軟膏、リンデロンVG軟膏やゲンタシン軟膏は、バイ菌の炎症を抑えるための治療薬ですから、カビであるカンジダ菌には効き目がありません。効き目がないどころか、バイ菌を殺しますので、カンジダ性亀頭包皮炎はますます悪化します。

では、カンジダ性亀頭包皮炎の治療法について説明しましょう。
まず、おチンチンを洗い過ぎないこと、石鹸は絶対にダメです。お湯でササッとすすぐ程度にして下さい。洗えば洗うほどカンジダ性亀頭包皮炎は治らないと心に念じましょう。

薬は水虫の薬を塗ります。お勧めは「ラミシール軟膏」です。「ラミシールクリーム」が医師の処方箋なしに薬局で購入できます。医師の処方する「ラミシール軟膏」に比較して濃度が薄いですが効果があるでしょう。1日2回薄く(本当に薄く)縫って下さい。経過が長い人は、カンジダ菌が皮膚深くまで根をおろしていますから、3ヶ月くらいは辛抱強く治療を続けましょう。

カンジダ性亀頭包皮炎には3つのタイプがあります。
【1】亀頭の皮膚表面に赤い点々の発赤タイプ
【2】亀頭環状溝に白いカスがたまるウェットタイプ
【3】亀頭表面がパリパリの感じの乾燥タイプ
どれも治療は同じです。

感染症の本質についてお知りになりたい方は、別のテーマで解説いていますから、そちらをお読み下さい。

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