« 「新内視鏡手術」 健康雑誌「わかさ」4月号 | トップページ | 尿意と便意 »

脊髄腫瘍による神経因性膀胱 コメント相談より

「神経因性膀胱は治らない?」にコメント相談がありました。
内容がとても重いので、ここで詳細に回答します。
少しずつしか回答できませんので、お待ち下さい。
------------------------------------------------------------------
【相談】
去年の夏に“脊髄星状細胞腫”と診断され、手術をしました。
その際に“T12-L1”の位置を一部骨切りをし、腫瘍を除去しようと試みました。
しかし、病理検査の分しか、取れませんでした。
その時に、神経に触れたのか、徐々に下肢に麻痺が出現し、歩く事(立位も)が出来なくなり、寝たきり状態になりました。
今年の4月には、排泄障害も出てきました。
症状が出る、数時間前までは、尿意があり、尿器に出てましたが。
その後、尿意が無くなり、失禁状態になりました。
数日後になると、今度は出なくなり、腹部の膨満感が酷く、バルーンを挿入すると、一気に“3000cc”ほど出ました。
それからは“バルーン”を留置しています。
今は尿意・便意は無く、時々“ペニス”が「ザワザワする」と言ってます。
脊髄の病気になると、一度機能が停止した部分は、戻らないと聞きましたが、かすかに感覚がある!?以上は、望みを途絶えたくないと思ってます。
このような症状でも、尿意が戻り、自尿が出るようになりますか?
彼はまだ“・・歳”です。

長くなりまして、申し訳ありません。
------------------------------------------------------------------
【高橋クリニックからの回答】
星状細胞腫は、通常頭蓋内脳腫瘍の10%を占める腫瘍です。予後は様々で、頭蓋内の場合、外科的全摘出は不可能とされています。放射線感受性がないことが多いので、放射線治療は期待が持てないようです。
脊髄腫瘍の場合、硬膜内と硬膜外のどちらかに局在します。侵された脊髄レベルの症状が徐々にみられます。
硬膜外の場合は早い時期に神経根症状として痛み症状が顕著に表れます。
腫瘍の成長により、脊髄の圧迫・動脈静脈の閉塞による虚血、硬膜内・脊髄内の場合は直接浸潤による脊髄障害が出ます。

ご主人の症状に「痛み」が強く表現されていないので、おそらく脊髄内の星状細胞腫と思われます。
この病気の特徴から次第に麻痺や神経障害が出現するので、手術をしてもしなくても、必ず現在の症状になったと思われます。ですから、執刀医を責めたり、手術に対して後悔することは止めましょう。

腫瘍病変部が「T12とL1」という事実から、・・・

腫瘍病変部が「T12とL1」という事実から、胸椎の12番目と腰椎1番目の高さの脊髄が腫瘍で侵されていることになります。その高さの脊髄の役割を考えると、病気に対する対処が見えてくるかも知れません。
下記は「慢性前立腺炎の症状」で以前に掲載した内容です。まずは、ご覧下さい。

症状から病変部局在の推理
関連痛のシステムを利用して非細菌性慢性前立腺炎患者さんの症状から病変局在を推理してみましょう。
その前に各臓器の神経支配を整理して見ましょう。下の表のようになります。
              【各臓器の神経支配】
-------------------------------------------------------------------
膀胱主要部                       仙骨2番~4番
膀胱出口             腰椎1番・2番
前立腺      胸椎10番・11番          仙骨2番・3番
尿道                           仙骨1番~4番
睾丸        胸椎10番~12番
肛門                           仙骨5番
直腸                           仙骨2番~4番
-------------------------------------------------------------------

●頻尿:膀胱の感覚ですから仙骨2番~4番です。尿道+前立腺の神経支配とダブります。
●会陰部(陰嚢と肛門の間)の疼痛:仙骨3番・4番の感覚=尿道+前立腺の感覚です。
●恥骨部疼痛:腰椎1番・2番と仙骨2番の感覚=膀胱出口+前立腺の感覚です。
●尿道痛(先端・全体・奥など):仙骨1番~4番の感覚≒前立腺の感覚です。
●睾丸痛:胸椎10番~12番の感覚≒前立腺の感覚です。
●肛門・直腸痛:仙骨2番~4番の感覚≒前立腺の感覚です。
●大腿(太もも)の不快感(しびれ・痛み):腰椎1番・2番と仙骨2番の感覚=膀胱出口と前立腺の感覚です。
●足の裏の不快感(しびれ・痛み):仙骨1番・2番の感覚=尿道+前立腺の感覚です。
●腰痛:腰椎1番・2番の感覚=膀胱出口の感覚です。
●背部痛:胸椎10番・11番の感覚=前立腺の感覚です。
●射精時の痛み・射精後の痛み:仙骨1番~4番の感覚≒尿道+前立腺の感覚です。

問題の排尿障害は膀胱出口の開きが悪くなったと考えられます。つまり、膀胱出口を開くための神経、副交感神経(腰椎の1番・2番)が障害を受けたことになるのです。脊髄腫瘍の位置にほぼ一致します。
副交感神経と反対の作用を担っている交感神経は、障害を受けていないので膀胱出口は閉まったままだと推理できます。その理由は、副交感神経と交感神経の構造的違いによるのでしょう。
次に、交感神経と副交感神経の構造的違いを述べます。

Parasympathn【カラー図解 神経の解剖と生理 ㈱メディカル・サイエンス・インターナショナル】
副交感神経は全て脊髄神経の中を走行していますから、ご主人の脊髄腫瘍の場合、胸椎12番目の高さの脊髄レベルで遮断される可能性が高くなります。
本来、副交感神経は交感神経に比べて未発達という特性を持っています。
次にご覧入れる交感神経の解剖学的構造に比較して明らかに劣っています。
構造的に劣っているということは、今回のように傷害された時に逃げ道を作る余裕がないということです。
Sympathn【カラー図解 神経の解剖と生理 ㈱メディカル・サイエンス・インターナショナル】
交感神経は、副交感神経にない構造があります。
「交感神経幹」という脊髄の外(脊椎の両側)左右に縦軸に平行に走るひもの様な構造があります。
この構造は、図で見ると大した構造ではありませんが、障害を受けた時には脊髄内を通れない情報が、障害部を避けて交感神経幹を通過する可能性が見えます。高速道路が渋滞したので一般道を走る自動車の様にです。
膀胱の知覚神経は副交感神経として脊髄内を通過しているので、脊髄腫瘍により脊髄が遮断され尿意として情報は脳中枢には届きません。
しかし、交感神経は「交感神経幹」を通過して膀胱出口を閉鎖し続けるので排尿できなくなる訳です。
尿の保持は膀胱出口の膀胱括約筋と外尿道括約筋の二つの筋肉の仕事です。2つの筋肉の一つを壊すことで自分で排尿できるかも知れません。ただし、外尿道括約筋を支配する陰部神経が障害を受けているようであれば、それはかなわないことになります。

------------------------------------------------------------------
【続き】
新たに“テーマ”まで作って頂き、本当にありがとうございます。
彼の身体が、いきなり不自由になってしまい、次から次へと、行き場を失ってしまっている、状態なんです。
去年の今頃は、腰が痛いながらも、仕事にいってました。
歩けない事に対して、辛いのはありますが、それよりも“排泄障害”が、彼にとって、一番の“辛さ”です。
(“性行為”も出来ない)
今は“T6”まで、腫瘍が進行しています。
痛みは、腰部・胸部にあり、腰部の痛みは“尋常”ではない、痛みです。
手術も二回しましたが、除去は無理で、進行を緩やかにする為、最終手段の“放射線治療”をするようにと、言われました。
進行する“病魔”に怯えて、日々を暮らしている姿を見ていたら、何か手立てはないものかと、私自身も悩んでいます。
このような、話を持ち掛けてしまい、申し訳ありません。
------------------------------------------------------------------
【高橋クリニックからの回答】
痛み症状が強いので、現在の腫瘍の浸潤形式は硬膜外から神経根を侵しているのでしょう。T6ということは胸椎6番目ですから6椎体も上方に進攻していることになります。星状細胞腫としては進行が速いようです。ある意味悪性度が高いともいえます。星状細胞腫は放射線治療が期待持てないと教科書的には記載されていますが、臨床的に悪性度が高いのであれば、放射線治療が奏功するかも知れませんね。

« 「新内視鏡手術」 健康雑誌「わかさ」4月号 | トップページ | 尿意と便意 »

コメント

新たに“テーマ”まで作って頂き、本当にありがとうございます。

彼の身体が、いきなり不自由になってしまい、次から次へと、行き場を失ってしまっている、状態なんです。

去年の今頃は、腰が痛いながらも、仕事にいってました。

歩けない事に対して、辛いのはありますが、それよりも“排泄障害”が、彼にとって、一番の“辛さ”です。
(“性行為”も出来ない)

今は“T6”まで、腫瘍が進行しています。

痛みは、腰部・胸部にあり、腰部の痛みは“尋常”ではない、痛みです。

手術も二回しましたが、除去は無理で、進行を緩やかにする為、最終手段の“放射線治療”をするようにと、言われました。

進行する“病魔”に怯えて、日々を暮らしている姿を見ていたら、何か手立てはないものかと、私自身も悩んでいます。


このような、話を持ち掛けてしまい、申し訳ありません。

投稿: さえ | 2008/06/02 00:05

はじめまして、相談です。最近、会陰部が痛くて近くの大阪市鶴見区泌尿器科に受診しました。最初に問診、その後、前立腺に刺激をあたえ尿道から出た分泌液を見てそして僕のとった尿の中に何やら検査の紙?のようなものを入れそのあと先生の見解が雑菌による前立腺炎だろうとのことでクラビット錠を1週間分、もらいました。そして家に帰ってよく考えてみるとクラジミアと淋病の尿検査をしてないのにこの薬を飲んでいいのかな?とおもい前立腺炎の本を読んでいると前立腺炎は前立腺のおくのほうにクラジミアや淋菌が入ると分泌液では、他の雑菌しか見つからないことが多数あると書いてありました。分泌液だけで判断して薬を飲んでいいのでしょうか?またクラジミアと淋菌では、まったく処方薬が違うと聞きました。そして来週、培養検査の結果がでるのでそれから薬が変わることがあります。と聞きました。その培養検査の結果を見て必要ならばクラジミアと淋病の検査をしましょうとのことでした。かなり不安です。この薬を飲んでていいのですか?他の病院で再診をしたほうがよいのですか?
そして前立腺炎は週単位で治りますと言われました。本当なのでしょうか?すみませんがお願いします。

高橋クリニックからの回答
治療手順としては問題ありません。
お薬を服用してください。
現在の抗生剤は、ほとんどの細菌(淋菌・クラミジアを含め)に効果があります。最終的な診断結果で、それぞれの細菌に特化した抗生剤を改めて処方するのが一般的です。
前立腺炎の細菌感染の証明は、細菌が検出されてもされなくても、価値があるものとは私は考えていません。検出法が、どんなに精微に実施しても根本的にいい加減だからです。

投稿: 松原 | 2009/03/13 22:49

この前は不手際の質問すいませんでした。培養検査の結果、アシネトバクター、黄色ぶどう菌、腸球菌が発見されました。アシネトバクターは耐性菌で今の所、何も抗菌剤がきかないと聞きました。もう前立腺炎は治らないと思ったほうがいいとも聞きました。僕はどうしたらよいのでしょうか?

高橋クリニックからの回答
細菌が検出されると、それが原因とされますが、私たちの体には無数の常在菌が存在します。その中には、耐性菌もいます。
ですから耐性菌が検出されたからといって、それを原因菌と考えるのは、あまりにも非科学的で短絡的な考え方です。
慢性前立腺炎症状は、細菌が原因ではなく、排尿障害が原因だと私は信じています。

投稿: 松原 | 2009/03/19 22:37

度々の質問すいません。落ち込みもしましたが、今はこの病気と戦って行こうと思っております。
僕はアルコールを飲む仕事をしているのですが抗菌剤を飲んでいるとアルコールはダメと病院の先生がおっしゃるのですが、仕事を替わった方がいいでしょうか?あと先生が自分で前立腺マッサージと射精を週二回ほどしたほうがいいとのことでした。そのへんのことを先生にご回答お願いしたいのです。あと僕のように、グラム陽性球菌が前立腺にいる場合、この先、治るまで子供は作らないほうがいいのでしょうか?ご回答お願いします。

高橋クリニックからの回答
難治性の慢性前立腺炎・慢性尿道炎・慢性副睾丸炎は、患者さんが自覚しない微細な排尿障害が原因だと私は信じています。
ですから、どのような細菌が検出されても、この病気とは無関係です。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/
をご覧下さい。

投稿: 松原 | 2009/03/24 15:47

度々すいません。先生のブログ、前立腺炎のページ何度も読み、なんと下らない質問を僕はしていたのだろうと情けなくなりました。3日ほど前から水分を少なくしました。上司に無理を言ってアルコールはやめています。昨日は最初から通ってる泌尿器科にいき、クラミジアの検査結果を聞き(陰性でした)僕は頻尿があるので排尿障害ではないかと先生に問いつめたところ細菌が検出されてるし、細菌性慢性前立腺炎だからとにかくクラビットを服用するようにと排尿障害で行うような検査は断られました。僕はせめて頻尿と会陰部の痛みを治したいのでaーブロッカーを処方させて頂けないかと頼んだ所、前立腺肥大の薬だから年齢的にも保健が適用されませんよと断られ、なくなくクラビットを片手に帰りました。ここ何日間、精神が安定せず、昔に精神がダメになった時期がありまして、その時の精神安定剤がかなり残っていたので3日ほど前から1日寝る前に1錠、飲んでいました。そしたら昨日の夜ほどから会陰部の痛みがとれ、クラビットが一時的に聞いているのかなっと思っていたのですが、その精神安定剤の名前をみると、セルシンと書いてありました。先生のブログのなかにゼパスの薬1覧の中にセルシンと書いあ

高橋クリニックからの回答
前立腺肥大症でなくても出せるαブロッカーはエブランチルという薬です。主治医に相談してください。
自律神経の安定のためにデパスを処方します。精神安定のためではありません。

投稿: 松原 | 2009/03/27 11:14

すいません、質問のメールが途中で切れてました。セルシンを服用して今日は会陰部、陰茎の疼くような痛みもありません。セルシンにはデパスのように自立神経を安定させる作用はありますか?会陰部の痛みが消えるのはセルシンと関係ないのでしょうか?

高橋クリニックからの回答
関係あるでしょう。

投稿: 松原 | 2009/03/27 13:23

回答、ありがとうございます。二週間後に病院に行くのでそれまで服用を続け、二週間後の病院で先生にエブランチルのこと相談します。先生のおかげで希望が見えてきました。ありがとうございました

投稿: 松原 | 2009/03/27 17:44

69歳6月初め頻尿で泌尿器科受診、排尿後の残尿量800ccで現在カテ-テル残置導尿をしています。一日の尿量は平均4000cc、多尿で自己導尿は不慣れと痛みで一回で中止しました。医師に原因要因の前立腺肥大を取り除いて少しでも排尿の抵抗を減らしたら排尿が改善するのではと言いましたが全く聞き入れて貰いませんでした。一生こんな生活は耐えられません。本当に前立腺切除で排尿は改善されるのでしょうか。
【回答】
はい。

投稿: 〇〇 忠次 | 2013/06/23 10:48

一年半事故により、腰椎破裂骨折により脊髄損傷して排尿障害があります。
現在は、自排尿して残尿をカテーテルで導尿しています。
薬は、エブランチルを服用しています。
今後、改善は難しいと言われています。
先生のおっしゃっている内視鏡手術をすれば、カテーテルで導尿をせずに自排尿のみで過ごせるようになりますか?
【回答】
100%保証は出来ませんが、可能性はあります。」


よろしくお願いいたします。

投稿: | 2015/03/26 16:24

1週間前の朝起きてすぐ、強い尿意があったにもかかわらずオシッコが出ず、15分位して出ないままトイレから出てきました。 
数分後にはちゃんと出たので『たまり過ぎていたため』と余り気にしませんでした。
ところがその後,
深夜と毎朝出にくい状態が続いており、何かの病気ではないか、と心配になって来ました。
日中はまったく問題なく出ており朝一番だけの症状で、痛み等はありません。

可能性のある病気、検査方法等をご教示頂ければ幸いです。

【回答】
神経因性膀胱か、膀胱頚部硬化症でしょう。

投稿: 有馬 | 2016/10/08 15:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/37412/41392429

この記事へのトラックバック一覧です: 脊髄腫瘍による神経因性膀胱 コメント相談より:

» 腰痛体操 [manaka]
腰痛の原因と予防体操はこちら。腰痛の原因と症状、腰痛の予防、腰痛の治療法と腰痛予防体操の紹介。 [続きを読む]

受信: 2008/06/01 22:52

« 「新内視鏡手術」 健康雑誌「わかさ」4月号 | トップページ | 尿意と便意 »