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人生いろいろ、膀胱の表情もいろいろ?

以前に立体画像として観察できる3D4D(立体)超音波エコー検査について解説しました。
主に下部尿路症(膀胱・前立腺・尿道に関連していると思われる症状)を訴えて来院された患者さんのうち、平成19年9月~平成20年2月の5ヵ月間にこの検査を行った患者さんが実に300人を超えました。
この検査で分かったことは、普通の2次元(2D)超音波エコー検査では想像もつかなかった多彩な所見が得られたことです。もちろん病的な所見ですが、膀胱はいろいろな表情を実は示していたことが分かりました。
ここで、その表情を疾患別にまとめてご紹介しましょう。

Wnlmorifice_2【正常の膀胱表情】
まずは、膀胱底部の標準的表情です。
膀胱底部とは、膀胱出口周囲の膀胱の一番底に当る部分です。
男性だと前立腺に接しています。女性だとその裏に子宮が接しています。
膀胱出口の形状によって病気(下部尿路症)が出現します。
膀胱出口に向かってシワが何本か観察できます。これは膀胱縦走筋です。膀胱出口を開くために存在します。

Bnclose_2【正常の膀胱表情 イラスト】
上の画像をイラストで解説したのが右の図です。
膀胱出口(膀胱頚部)が中央に位置し、円形に観察できます。円はほぼ正円です。正円以外の膀胱出口の形状は、病気の原因になります。
排尿筋である輪状膀胱平滑筋がブーメラン状の形状をしています。
その間に膀胱三角部が存在します。

Boo3d19157f45uterus【子宮筋腫と膀胱】
女性の場合は、膀胱底部が子宮と接していると説明しましたが、この写真は子宮筋腫のふくらみが膀胱を圧迫しているのが明瞭に判別できる所見です。
Bns36m21241【尿管結石】
尿管結石が、今まさに尿管口から膀胱内に出てこようとする瞬間です。
ポッコリと結石として確認できるポイントが左尿管口です。
Bns20619m26【尿管口から噴出する尿線】
膀胱頚部硬化症の患者さんを3D4D検査していて偶然に捉えることのできた尿管口からの尿線です。墨を流したように見えます。
Bns56m21135【前立腺結石】
排尿障害があると必ず前立腺内に石灰が沈着します。いわゆる「前立腺結石」と呼ばれるものです。
膀胱内からの3D画像では、塊りとして観察できます。
膀胱頚部の奥に不整形の塊りが確認できます。
Bns56m21135r上の写真を裏側(尿道側)から観察した画像です。
不整形の塊りがさらにハッキリと確認できます。
いかにも「前立腺結石」という感じですね。


Bph77m183732【前立腺肥大症】
前立腺肥大症が大きくなると膀胱側に突出します。
この77歳男性の写真では、前立腺の腺組織が線維化して渦巻きのように観察できます。
硬そうな渦巻きの中心が尿道です。このような状態では、排尿時に尿道は閉じたままなので排尿障害となります。
Bph21394m7159cc2この71歳男性の画像も前立腺肥大症です。
二枚貝のように見えるのが、線維化で硬くなった前立腺です。この二枚貝の縦に平らになった隙間が尿道です。
硬い二枚貝に挟まれた尿道は、十分に開かないので排尿障害なります。
Bns20765m30【膀胱頚部硬化症】
慢性前立腺炎症状で来院した30歳患者さんの画像です。
膀胱出口周囲に額縁のように線維化組織が見えます。この硬い組織が排尿時の膀胱出口の開きを邪魔します。当然、排尿障害になります。
Bns21709m25chn次も慢性前立腺炎症状の25歳中国人の患者さんです。
やはりご覧のような膀胱頚部硬化症の所見です。火山の噴火口を上空から眺めているようです。
Boo21569f36膀胱頚部硬化症は一般的に男性ですが、この36歳ご婦人のような場合もあります。
膀胱出口周囲が額縁のように硬く線維化しています。
Bns3dop3m19866m392慢性前立腺炎の内視鏡手術後に狭義(器質性)の膀胱頚部硬化症になった患者さんの3D所見です。
膀胱からではなく尿道側から観察した景色です。
お酒を入れるトックリのような口をしています。
Boo21255f51【膀胱出口閉塞症】
慢性膀胱炎症状の51歳ご婦人です。
膀胱出口(膀胱頚部)にご覧のようなコブが見えます。
排尿時に膀胱出口は開きますから、このようなコブがあれば十分に開きません。すなわち排尿障害を作ります。
Fmpain53f21227この53歳ご婦人も慢性膀胱炎症状の患者さんです。
上の画像とほとんど同じ所見です。
Ic46f21224この46歳ご婦人は膀胱出口の12時の位置に突っ張った張りのようなものが見えます。仮に架橋形成とします。この架橋構造のために膀胱出口は十分に開きません。
Bns20289m43【膀胱頚部機能低下症】
慢性前立腺炎症状で来院した43歳の男性です。
膀胱出口がセンターになく、右に寄っています。
本来の設計どおり中央に膀胱出口がなければ、排尿時の負荷が必要以上に膀胱底部にかかります。そのため、排尿障害が来るのです。
膀胱出口の右側の輪状筋が特に厚くなっています。開くために緩まなければならない筋肉が厚くなっているのですから、緩まないのは道理でしょう。

Bns21475m342この患者さんも膀胱頚部機能低下症です。
34歳の男性患者さんです。やはり膀胱出口が中央になく右に寄っています。
上記の患者さんとは異なり、輪状筋は左右対称のシンメトリーですが、膀胱出口の6時の位置が線維化して硬くなっているようです。ある意味、膀胱頚部硬化症ともいえます。


【参考】
原因不明の排尿障害を「機能性排尿障害」と呼びます。
それに対して原因が明確な排尿障害を「器質性排尿障害」と呼び、前立腺肥大症、尿道狭窄や明らかな膀胱頚部硬化症などがその例です。
ところが、3D4D検査をおこなって分かったのですが、これまで原因不明の「機能性」と称していた排尿障害の中には、それまでの検査でただ単に診断できなかっただけの話で、事実は「器質性排尿障害」だった可能性が高いと思うようになりました。

一般的に「機能性排尿障害」には、次のようなものが上げられます。
1.神経因性膀胱
2.膀胱頚部機能低下症
3.原発性膀胱出口閉塞症
4.機能性膀胱頚部硬化症
5.膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全
恐らく薄々お分かりだと思いますが、これら病名を厳格に定義分類することはできません。
なぜなら、今までの検査法、尿流量測定ウロフロメトリー検査、残尿量測定検査、2D超音波エコー検査、膀胱内圧測定検査、筋電図検査、膀胱鏡検査などではほとんど区別することができなかったのです。
このブログでご紹介した画像のように、今まではほとんど区別がつかなかった患者さんを個々に診断できるようになりました。(あくまでも私の思い込みですが・・・)

そこで、上記の機能性排尿障害を私なりに次のように定義します。泌尿器科学会の定義とは異なりますから誤解のないように・・・。
【1】神経因性膀胱
膀胱の機能が低下したすべての状態を総称してこのように呼びます。原因不明の「機能性排尿障害」の別名と理解してもよいでしょう。
【2】膀胱頚部機能低下症
膀胱頚部に明らかな器質性のものがない状態をこのように呼びます。ここでは膀胱出口が中央に位置しない患者さんをこの定義の範疇に入れました。今までは、膀胱出口の位置がどこにあろうと問題視されていませんでした。
【3】原発性膀胱出口閉塞症
広義では前立腺肥大症もこの中に入るのですが、原因不明の膀胱出口閉塞症を原発性膀胱出口閉塞症と呼びます。ここでは、画像の如く膀胱頚部内にシコリ状態組織が存在した場合をこのように呼びます。一般的にはご婦人です。
【4】機能性膀胱頚部硬化症
「膀胱頚部が硬いんだ!」という病名です。膀胱頚部硬化症は通常、前立腺肥大症の手術後の膀胱頚部の瘢痕による狭窄を意味します。ここでは、ご覧の画像のように、膀胱出口周囲の額縁所見を定義します。
【5】膀胱排尿筋内尿道括約筋協調不全
この病名には矛盾がはらんでいます。なぜなら、排尿筋=輪状筋+膀胱三角部≒内尿道括約筋だからです。要するに、臨床上の解剖学名称と本当の基礎解剖学名称が一致していないので、このようなトンチンカンな病名が作られたのでしょう。病態生理学的内容からは、2~4の項目はすべて内尿道括約筋協調不全です。
正しい名称にするのならば、2~4の項目を踏まえた上で、まったく所見がない場合に限り、排尿時内尿道括約筋協調不全、あるいは、排尿時排尿筋協調不全と呼ぶべきでしょう。本当の意味での機能性排尿障害です。

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