急性副睾丸炎の本当の原因
83歳の男性が近所の開業医の先生から紹介されて来ました。
4日前から左の睾丸が痛くなり、昨日には右の睾丸も痛くなったというのです。しかも両方とも腫れてきたのでした。
触診で確かに両方の睾丸近くが硬く腫れていて、触ると痛がります。その上、水がたまっています。明らかに両側副睾丸炎です。
超音波エコー検査では、右の写真のようです。睾丸は丸く正常ですが、副睾丸は大きく不整形です。睾丸の周囲の黒い部分は炎症による体液(水)です。
3D4D超音波エコー検査に切り替えると、右の写真のようです。上の写真から想像できる立体画像です。
さて、ここで問題があります。急性副睾丸炎は、通常片方だけです。このご高齢の患者さんのように左右ほぼ同時に炎症を起こすことはまれです。一般的に急性副睾丸炎は原因不明ですが、両側同時に発症した場合には、システマティックな原因がある筈だと考えなければなりません。
患者さんに既往歴をお聞きすると、20年前に前立腺肥大症の経尿道的手術(TUR-P)を有名な病院で行なったが、手術直後もオシッコの出は悪かったとのこと。その後、金属ブジーで尿道拡張を何回か行ったというのです。最近、特に尿の出が悪くなっているというのです。
原因が判明しました。前立腺肥大症の内視鏡手術を行なったのですが、膀胱頚部硬化症だったのを見逃し前立腺しか削らなかったのです。そのため、膀胱から尿道に流入する尿はジェット流になり渦流が発生していました。最近、膀胱頚部の硬化が悪化し、ジェット流がさらに強くなり、射精管口から精管・副睾丸に炎症が波及して、今回の病状になったのです。
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