36歳のご婦人がセカンドオピニオンで高橋クリニックを受診なさいました。悩んでおられる病気は「尿道憩室」です。
お話からは経過は次のようでした。
平成16年5月頃からたびたび急性膀胱炎を繰り返します。不思議に思って婦人科を受診すると、尿道から膿が出ているというのです。そして尿道の下が膨らみ、そこを押すと尿道から膿が押し出されてくるのです。
婦人科の紹介で泌尿器科を受診すると、「尿道憩室」と診断されました。現在は「尿道憩室炎」状態であり抗生剤を処方され、炎症が起きる都度抗生剤が必要になると診断されました。完全に治すためには手術が必要で、大きな病院を紹介するとのこと。手術が嫌でどうにかならないものかと、高橋クリニックへセカンドオピニオンために来院したのです。
さて、実際に患者さんを拝見すると、
写真のようです。【U】は尿道口、【D】は尿道憩室の膨らみ、【V】は膣口です。一般的に、尿道口と膣口の距離はもっと短いのですが、患者さんの場合、尿道憩室の膨らみがその間に存在しています。この膨らみの部分を圧迫すると、憩室内に貯留している尿が尿道から噴出するのです。
超音波エコー検査で調べると、写真のようです。
【U】は尿道、【D】は尿道憩室の膨らみ、【V】は膣、【B】は膀胱です。図の点と点の間が1cmです。直径約1cmの憩室の確認ができます。超音波エコー検査からも解剖学的に予想通りの位置に憩室が存在しており、他の臓器との癒着やつながりはないようです。視診と検査から病気の状態を立体的に把握することが、治療に大いに役立ちます。
ここで私が「尿の飛び方が、真直ぐではなかったのではありませんか?」と質問すると、小学生の頃、和式トイレで用を足すと、便器を汚してしまい、母親に注意散漫で行儀が悪いと怒られていたそうです。何のことはない、尿道憩室が尿線を乱していたためにコントロールができていなかっただけなのです。
治療法は手術以外ないと説明し、患者さんは納得してお帰りになりました。
尿道憩室は男女共に起きる病気です。先天性(生まれつき)の場合と後天性(ケガや他の病気が原因)の場合があります。このご婦人の場合は先天性だったのでしょう。
【注意】病気啓蒙のため患者さんに承諾を得て写真掲載しています。
【文献】
尿道憩室の手術を専門に行っている泌尿器科医は少ないと思います。ここに20例の手術を行った研究論文を紹介します。
数からいえば、たった20例であっても、このような文献として紹介されるほど数が少ないのです。
女性の尿道憩室:20例に対する診断および外科的治療の経験
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Salomon Victor Romano1, Salomon Victor Romano Department of Urology, Universidad de Buenos Aires and Division of Urology, Hospital Universitario Durand, Buenos Aires, Argentina
Sergio Haime2, Sergio Haime Urology Department, Hospital Durand, Buenos Aires, Argentina
Christian Cobreros2, Christian Cobreros Urology Department, Hospital Durand, Buenos Aires, Argentina
Pablo Dedola2, Pablo Dedola Urology Department, Hospital Durand, Buenos Aires, Argentina
Cecilia Hernández 2 および Cecilia Hernández Urology Department, Hospital Durand, Buenos Aires, Argentina
Horacio Rey2 Horacio Rey Urology Department, Hospital Durand, Buenos Aires, Argentina
1 Department of Urology, Universidad de Buenos Aires and Division of Urology, Hospital Universitario Durand, Buenos Aires, Argentina
2 Urology Department, Hospital Durand, Buenos Aires, Argentina
掲載日: 2009年11月2日
カテゴリー: 尿失禁・尿流動態・過活動膀胱(OAB) および 治療法
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要約
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われわれの施設において1999年7月~2007年6月に尿道憩室に対する外科手術を施行された、一連の患者20例の診療記録のレビューを行った。全例に対し、詳細な病歴の聴取ならびに一通りの泌尿器科および婦人科検査が実施された。さらに補助的検査として、尿道膀胱鏡検査、経膣超音波検査(TVU)、排尿時膀胱尿道造影法(VCUG)、pressure urethrographyが実施された。診断が困難な症例には、磁気共鳴画像法(MRI)が用いられた。一連の患者20例に対し、憩室の完全切除および多層縫合(multilayer repair)が施行された。患者の平均年齢は35歳(範囲23~72歳)、平均追跡期間は40ヵ月(範囲3~65ヵ月)であった。全例で症状の回復が認められた。18例が真性尿道憩室、2例が偽性尿道憩室と診断された。うち1例は、憩室内腺癌により尿道全切除術を必要とした。20例中4例で、術後に腹圧性尿失禁の発生がみられたが、自然に消失した。狭窄、瘻孔、憩室の再発は認められなかった。以上より、本研究の対象となった尿道憩室患者の大部分は、身体的検査、尿道膀胱鏡検査、TVU、VCUG、pressure urethrographyにより診断可能であると結論された。MRIは憩室の診断において感度および特異度のもっとも高い検査法であるが、診断の困難な症例に対して用いるべきである。完全囊胞切除(complete sac resection)+multilayer repairの術式は成功率が高く(100%)、合併症もきわめて少なく、その多くは軽度かつ一過性であるため、推奨される手術手技である。