薄い影
先日(9月21日)、前立腺肥大症の術後の66歳の患者さんが、術後報告に来院されました。
手術後の経過は良好で、排尿状態もすこぶる良く、手術をしてもらって良かったと喜んでおられました。・・・しかし、・・・しかし、その患者さんの「影が薄い」のです。貧血で顔色が悪いのでもなく、とにかく影が薄く見えるのです。
「体の調子が悪くありませんか?」と尋ねると、否定されます。しつこく尋ねると「胃がチョッともたれます。」という返事です。
「地元の大きな病院で、必ず胃カメラを行なってもらってくださいね!」と私に念を押されて、患者さんは帰られました。
その2ヵ月半後の本日(12月8日)、その患者さんが久しぶりに来院されました。患者さんの影が戻り濃くなっているのです!
「先生の言いつけ通り、地元の病院で胃カメラを行なったら、胃前庭部に胃癌が見つかり、手術しました。」
「地元の外科の先生が、胃前庭部に発赤がある。私は様子をみたいと言ったら、主治医が胃癌を疑うので手術をすすめられました。」
「術後の結果は悪性度が中くらいで、浸潤も転移も発見されませんでした。」と喜んで報告されました。
私もホットです。「実は・・・」と言って、カルテを患者さんに見せました。殴り書きのカルテでお恥ずかしいですが・・・カルテには「胃不快」の記載の下に「白い」とコメントをつけています。「白い=影が薄い」の私の隠語です。
患者さんも泌尿器科医である私が胃カメラ検査をしつこく念を押したのが気になっていたんだそうです。
影で何かを診断した、最近あった実話です。
【補足】
これだけの話しだと、非科学的と云われてしまうので、少し科学的な根拠を説明しましょう。
前立腺肥大症があり排尿障害が存在すると、オシッコを我慢することが多くなり、交感神経が常に興奮状態にあります。
また、癌細胞が体内にあると、癌細胞を殺すために免疫抗体を産生しようと副交感神経が興奮します。
高校生の時に学習した生物学でご存知のように、交感神経が興奮すると、体が戦闘体勢に入る状態になります。副交感神経が興奮すると、体が安静な状態になります。この二つの自律神経が同時に興奮すると、体は交感神経と副交感神経の興奮が混在した表現をとります。それが影の濃さになるのでしょう。一見元気に見えるのです。
しかし、内視鏡手術で排尿障害が軽快すると、排尿障害による交感神経の興奮は少なくなります。そのため副交感神経の興奮だけになります。免疫抗体産生顔貌になり、おそらく、その表情が「影が薄く」見えるのでしょう。
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