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HPV 4価ワクチン、HPV起因病変の長期予防効果あり
HPV 4価ワクチン、HPV起因病変の長期予防効果あり
16-26歳の女性17622名を対象に、ヒトパピローマウイルス(HPV)4価ワクチンの予防効果を無作為化プラセボ対照試験で検討。42カ月間の追跡調査で、HPV4価ワクチンによるHPV起因病変の予防効果は、グレードIの子宮頸部上皮内腫瘍96%、グレードIの外陰・膣上皮内腫瘍100%、コンジローマ99%だった。
2010年07月23日 ソース:BMJ(論文一覧) カテゴリ: 産婦人科疾患(関連論文) ・癌(関連論文) ・投薬に関わる問題(関連論文)
文献:The FUTURE I/II Study Group. Four year efficacy of prophylactic human papillomavirus quadrivalent vaccine against low grade cervical, vulvar, and vaginal intraepithelial neoplasia and anogenital warts: randomised controlled trial. BMJ. 2010;341:c3493
【備考】
日本では、未だHPV4価のワクチンが承認されていません。以前の情報では今年の6月ごろ承認される予定でしたが裏切られました。
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性感染症クリニカルセミナー#2
11月11日(水)に私が発表した講演内容をここで掲載します。
会場に来られているのは、医師ですから内容に専門用語が使用されますので、ご容赦を。
私の持ち時間は40分でした。伝えたいことはたくさんあったのですが、何とか制限時間内に終わりました。
尖圭コンジローマについては、先ほど講演なさった高橋聡先生が詳細に述べられたので、ここでは詳細に述べませんが、空胞細胞(コイロサイトーシス)がキーポイントです。
性器に生じたイボいぼが尖圭コンジローマだと思っていると、実際に患者さんを診察する時に戸惑うことがあります。
なぜなら、尖圭コンジローマは様々な表情を持っているからです。
臨床上、尖圭コンジローマとボーエン様丘疹症を区別するのは難しいので、すべてを含めて「尖圭コンジローマ群」として視診上分類します。
トサカ型の実際の患者さんの所見です。
平面的な広がりを見せます。
表面はドライですが、水を含んでいる印象を受けます。
扁平型です。
全体的にジメジメした印象です。
融合する傾向にあります。
寿司ネタのカニ子・トビコに似たのが泡粒型です。
密集する傾向があります。
丘疹型の組織像を拡大して観察すると問題の空胞細胞が認められます。
この明るく見える部分を電子顕微鏡で観察すると、御覧のようなウィルスの粒子が確認できます。
ウィルス粒子は整然と並んでいます。スターウォーズに出てくるクローン軍の兵士のよいうです。
爪のように硬くなるのが硬化型です。
今までにご紹介した尖圭コンジローマが治療中に良性化現象の所見です。
以上の尖圭コンジローマ群を視診的に分類したのが、このスライドです。
性器に出来るイボいぼ病変として、尖圭コンジローマ群と鑑別しなければならないものを提示します。
一番有名なのが、真珠様陰茎小丘疹です。成人男性の30%前後に認められる生理的現象です。悪徳医師が尖圭コンジローマかも知れないと除去手術と包茎手術をすすめるケースが多々あります。
包皮小帯、俗に言う「裏スジ」の左右に出来るのが包皮腺・タイソン腺です。これも生理的現象です。
やはり生理的現象として存在するのが、フォアダイスです。
毛のない毛根の皮脂腺と考えればよいでしょう。
いわゆるオデキ(粉瘤・アテローマ)が性器に生じることはよくあることです。
性器ヘルペスを尖圭コンジローマと誤診することはないでしょう。
帯状疱疹は細かく湿疹が生じるので、誤診されるかも知れません。
包皮に包まれた亀頭がごつごつしていると、尖圭コンジローマ?と思いますが、包皮をむいてみるとこのような惨状です。
原因不明の丘疹もあります。
これは、カンジダ性亀頭包皮炎の丘疹タイプでしょう。
下着に血液が付き、血尿だと来院される方がいますが、実は陰嚢に生じた血管腫だということが往々にしてあります。
これまで述べた鑑別疾患と尖圭コンジローマ群の視診分類を知識として持っているからといって、実際の現場で直感的に診断できるとは思えません。
そこで、いろいろ考えた挙句、思いついたのが「フラクタル図形」です。
一定の法則で図形を構成していくと、極微から極大にいたる造形の中で、繰り返し同じような図形が生じる現象をいいます。
代表的なフラクタル図形が海岸線です。
伊豆半島を中心に拡大すると、そこここに「ゴジラ」図形が見えてきませんか?
植物にはフラクタル図形がたくさん認められます。
木の枝ぶりや葉がその典型です。光合成を目的に木全体で効率よく日の光を浴びるためにフラクタル図形になるのです。
私は食したことはありませんが、ロマネスコという名の野菜が典型的なフラクタル図形だといいます。
このロマネスクをジ~と観察していると、右の尖圭コンジローマに見えてきませんか?
要するに、尖圭コンジローマは部分を観察しても全体を観察してもフラクタル図形になります。
ボーエン様丘疹症は部分的にはフラクタル図形ですが、全体像ではフラクタルではありません。
【副作用の治療】
尖圭コンジローマで、問題になるのが、治療による副作用や後遺症です。
この患者さんは他院で液体窒素の治療とイミキモド治療で御覧のような有様になり、当院を訪れました。皮膚粘膜の糜爛(びらん)状態です。とても痛々しい所見です。
副作用の治療に関して論じる前に、イミキモドの作用気所を説明します。
イミキモドは皮膚組織内にある樹状細胞を刺激します。樹状細胞からはインターフェロンをはじめとする様々なサイトカインを放出し、ウィルス感染細胞を免疫学的に攻撃します。
「びらん」の病態生理について、私なりに考察しましょう。
ベセルナクリームで興奮した樹状細胞がインターフェロン・サイトカインなどの刺激物質を放出し、それによりマスト細胞・毛細血管・白血球が刺激を受け、皮膚組織はてんやわんやのお祭り騒ぎになります。
時系列で説明しましょう。
ベセルナクリームのイミキモドで興奮した樹状細胞がインターフェロン・サイトカインを放出します。その刺激を受けたマスト細胞などの組織球がヒスタミン・サイトカインを次々に放出し、毛細血管の膜透過性は亢進します。組織液が大量に放出され、白血球が誘引され、皮膚の細胞層が攻撃されます。白血球は皮膚の正常細菌叢を破壊し、カビが異常増殖します。白血球はカビを貪食しますが、消化することはできずに自爆します。白血球が自爆した事実を樹状細胞が探知しまたサイトカインを放出するという負の連鎖が生じるのです。
さて、この負の連鎖を断ち切るためには、いくつかの対策を考えなければなりません。まずは、ベセルナクリームを休薬するか間隔をあけるなどの工夫が必要です。
【オリジナル軟膏】
次に刺激物質を抑えることです。
高額な薬では現実的ではありません。そこでヒスタミンを抑えるようにします。
組織液が大量に放出されます。乾燥のままにしていくと、そのことが刺激になり、さらに組織液と白血球が出てきますから局所の乾燥を抑えます。保湿剤を利用します。
正常な細菌叢が破壊されカビが増殖するので、抗真菌剤を使用します。
そこで考案したのが、右の軟膏です。
先ほどの「びらん」の患者さんに、このオリジナル軟膏を使用したのが右側の写真です。
ベセルナクリームとオリジナル軟膏の使用で、患部は徐々に改善しています。
この軟膏は、びらん以外にも効果を発揮します。
この患者さんは、他の医療機関で5FUという抗癌剤で治療された方です。包皮が肥厚し色素沈着でひどい状態になり、当院を受診しました。オリジナル軟膏で皮膚が正常化しました。
この時にはベセルナクリームが市販されていなかったので電気焼灼手術を行い完治しました。
液体窒素で凍傷になられた患者さんです。
しかし、尖圭コンジローマは治ってはいません。オリジナル軟膏を塗布し、取りあえずは凍傷を治しました。
次に、オリジナル軟膏と抗ウィルス剤を混ぜ治療したところ、尖圭コンジローマは治りました。
【ベセルナクリームの絶大な効果】
副作用の治療で、ベセルナクリームの怖い面がでたのですが、実際は副作用はわずかです。そしてベセルナクリームは、とても効果的なくすりです。
ここで紹介sている患者さんは、通常であれば人工肛門にしましょうと宣言されてしまうような症例です。
20cm×10cm×10cmの大きさの巨大な肛門に出来た尖圭コンジローマです。
ベセルナクリーム単独治療で3ヵ月経過していますが、体積は4分の1までに収縮しています。今後が楽しみです。
【セカンドチョイス】
ベセルナクリーム以外にも尖圭コンジローマに効果のある薬はあります。
ベセルナクリームの効果がない場合には、これらの薬をセカンドチョイスとして軟膏基材に混ぜお使いください。
【疑問①】
臨床現場では専門書にも書かれていない事柄を経験することがあります。
想像力を働かせ仮説を交え考えてみましょう。
まず、ベセルナクリームを尖圭コンジローマ塗ると、イボの表面はそのままに、イボは小さくなります。これは不思議な現象です。
ポドフィリンや5FU軟膏の場合は、塗った部分が炎症を起こし壊死して、表面から小さくなりますが、ベセルナクリームの場合は、皮膚表面は変化がなく、全体的に小さくなります。
その答えは、顕微鏡で組織検査を行うと氷解します。
左が健康男性の包皮内板で、右が尖圭コンジローマのトサカ型です。表皮の角質層の厚さが健康な皮膚の方がはるかに厚いのが分かります。つまり、ベセルナクリームが尖圭コンジローマの深部まで浸み込むので中から組織が破壊されるのです。
右の写真は尖圭コンジローマの丘疹型です。やはり角質層が薄いのが分かります。
ベセルナクリームは、皮下組織の樹状細胞に作用し免疫を刺激するので皮下組織に浸み込まなければ効きません。正常の皮膚は角質層が厚いので影響を受けないのです。
【疑問②】
尖圭コンジローマでもベセルナクリームがよく効くものと、効きにくいものとに分かれます。その理由が分かりません。
一見有意な差のない尖圭コンジローマの組織像です。詳しく組織学的に考えてみましょう。
この組織は、尖圭コンジローマのトサカ型の組織像です。
四角く囲んだ部分を拡大したのが下の写真です。
全体を見渡して、空胞細胞(コイロサイトーシス)と思われるものが何となく見えます。ざっと数えて10個くらいでしょう。
しかし、この画面を位相差顕微鏡で見ると・・・
違う組織像のように変化しました。
白っぽい隙間が空胞細胞です。
数えてみると、この画面だけで80個以上もの空胞細胞が存在しています。
この空胞細胞を分類してみると、4つに分類できます。
この4タイプの空胞細胞がなぜできるのかを考察してみました。
科学雑誌ニュートンの表紙を飾ったイラストをこの説明に利用します。
動物細胞の大まかな構造はイラストのごとくです。
そこに外からヒトパピローマウィルス・HPVが侵入し、細胞の核内で増殖します。
ウィルスの子供は核外に放出されます。
本来存在しない筈のウィルスが核で産生されたことで、細胞内の小胞体やゴルジ体がウィルスの放出を拒みます。
ウィルスは核のすぐ外の場所でたまり始めます。
それがわずかな空胞を持つ細胞なのでしょう。
ウィルスがたまり続けると核の周囲を空胞が取り囲むようになります。それがこのタイプの空胞細胞です。
さらにウィルスがたまり続けると、小胞体やゴルジ体が厚い壁となって圧力が著しく増加します。
その圧力は核にまでかかり、核は変形します。それがこのタイプです。
小胞体と核をつなぐ連結部が引き延ばされて切れてしまうと、風船のように膨らんだ空胞のバランスが崩れ、核は小さく押しつぶされて細胞のヘリで固まってしまいます。
これが空胞細胞の完成体です。
では、この4つの空胞細胞に何の意味があるのでしょう。
完成体(完全体)の空胞細胞を例にとり説明しましょう。
細胞内のヘリに凝縮した核は死にます。核が死んでしまったのでアポトーシス(細胞融解)という現象は起こりません。空胞によってプレスされた小胞体などの細胞生命維持装置は完全に機能停止です。
プレスによって機能停止といえば、思い出すのが「ターミネーター」という映画のラストシーンです。殺人ロボットが主人公の前でプレス機械につぶされて機能停止するシーンです。
機能停止した細胞は死んだも同然ですが、核が死んでしまったので、アポトーシスは起こりません。
皮膚の細胞が機能停止した状態は角質になったことと同じです。つまり空胞細胞は「角質もどき」になったのです。爪に変化したのと同じにことです。
空胞細胞にウィルスはいっぱい詰まっていますが、厚い壁によりウィルスは細胞外には漏れ出ていきません。ウィルス情報が細胞外に漏れなければ、ベセルナクリームで興奮した免疫システムに探知されることもありません。
不完全な空胞細胞はウィルス情報が漏れ出ている可能性が高いので、免疫システムに探知されますが、完全体の空胞細胞は探知されません。
結果、不完全な空胞細胞は免疫システムによって殺され、完全体の空胞細胞は生き残ることになります。
【疑問③】
同じトサカ型でも、ベセルナクリーム治療に対してボーエン様丘疹症は治りにくく、尖圭コンジローマは治りやすいのはなぜでしょう。
そこで、また組織検査をしてみましょう。
左はボーエン様丘疹症の患者さんの組織像です。尖圭コンジローマに比較して角質層が厚いのが分かります。角質層の厚さが厚ければ厚いほど、ベセルナクリームは浸み込みません。
位相差顕微鏡で確認すると、ボーエン様丘疹症の方に空胞細胞が組織全体にまんべんなく混在していることが分かります。
さらに拡大(1600倍)してみると、空胞細胞が明確に確認できます。
しかし、尖圭コンジローマの空胞細胞と形が少し違います。
4000倍に拡大してみると、違いが明らかです。
尖圭コンジローマの空胞細胞は核が小さくなっているのに対して、ボーエン様丘疹症の空胞細胞は核が膨張しているように見えるのです。
電子顕微鏡のイラストを利用して、この違いを説明しましょう。
尖圭コンジローマの空胞細胞は核の外にウィルス粒子がたまり、その圧力で核は小さく凝縮しましたが、ボーエン様丘疹症の空胞細胞は、おそらく核内にウィルス粒子が詰まった状態で核が膨張したのでしょう。
病気の原因と思われる空胞細胞が異なっていて、その別々の細胞が集合して組織構成したオデキに、表面上は似ていても治りの方が異なるのは当たり前でしょう。
肛門にできたボーエン様丘疹症と思われるイボです。
イボが陰部全体に多数認められたご婦人です。ベセルナクリーム治療を行って4カ月以上経過しましたが、全く変化ありません。
陰部全体に広がったイボは電気焼灼手術を行いました。
肛門のイボは鑑別のために組織検査を行いました。
拡大してみると、先のボーエン様丘疹症と異なり、角質層が薄いようです。
肛門の粘膜に生じたイボですから、角質層が薄いのもうなずけます。
位相差顕微鏡で観察すると、完全型の空胞細胞が多数確認できます。
このパターンはボーエン様丘疹症です。
さらに拡大して観察すると、核の凝縮型、尖圭コンジローマの空胞細胞のように見えます。
しかし、さらに拡大して観察すると、核の膨張型の空胞細胞であることが分かります。
4000倍に拡大して観察すると、尖圭コンジローマの空胞細胞と異なる核膨張型の空胞細胞であることが判明しました。
このご婦人はボーエン様丘疹症でした。
すべてをまとめたのがこの表になります。
尖圭コンジローマはフラクタル構造をしています。ベセルナクリームが効きにくいのは、ほとんどがボーエン様丘疹症でしょう。また、ボーエン様丘疹症は皮膚の厚い部分(陰茎・陰嚢・腹壁)にできるものと思って間違いないでしょう。
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性感染症クリニカルセミナー
2009年11月11日千代田区平河町の海運クラブ(赤坂プリンスの裏)にて、開業医向けの「性感染症クリニカルセミナー」が開催されました。
講演内容は「尖圭コンジローマ」についてです。
座長は東京慈恵医科大学感染制御科教授の小野寺昭一先生(日本性感染症学会常任理事)、講師は札幌医大講師の高橋聡先生と開業医の私の二人です。
高橋聡先生は海外を飛びまわっておられる忙しい先生で、その分、海外のデータをたくさんお持ちです。
高橋聡先生の講演の中で興味ある事実を知りました。
尖圭コンジローマの感染にはコンドームが無力だという常識になっていたのですが、実はそうでもないという統計データがあるのです。
ヒトパピローマウィルス・HPVに感染している女性のボーイフレンドで常にコンドームを装着してセックスをする男性100人と、コンドームを装着しないでセックスをする男性100人のグループに分け、1年間で男性にヒトパピローマウィルス・HPVの感染率を比較しました。(対象者は日本人ではなくアメリカの学生です。)
●常にコンドームを装着している男性100人の感染率:約40%
●コンドームを装着しない男性100人の感染率:約80%
感染率が何と倍違うのです。コンドームを装着することで感染のリスクが半分になるのであれば、患者さんにはぜひすすめるべき予防法です。
尖圭コンジローマの患者さんがセックスをすることで、相手に感染させる可能性は約15%です。
またセックスにより、実際に尖圭コンジローマが発症する可能性は1%~2%だそうです。
包茎手術を行った方が尖圭コンジローマの感染率は低いとされていましたが、実際は包茎であっても包茎でなくてもデータ上は変わらないようです。
私の発表内容は、後日ここに掲載しましょう。
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子宮頚ガンのワクチンが年内に承認の見込み!
子宮頚がんを心配なされるご婦人が多くいます。
婦人科検診の細胞診でクラスⅢ以上のご婦人は、定期的に検診を受け続け、子宮頚がんの疑いが濃厚になったら手術を受けるしか方法がありませんでした。ところが、このワクチンの登場で、現在の呪縛から逃れられるかも知れないのです。
【電子顕微鏡で観察されるヒトパピローマウィルス・HPV】
子宮頚がんの原因ウィルスは、日本人ではヒトパピローマウィルス・HPVの16型と18型とされています。
今回の承認される予定のワクチンは、この16型・18型のウィルスを抑えるワクチンです。
ワクチン接種の仕方は、初回接種後、1ヵ月、半年の計3回接種になります。ワクチンは自費扱いになる予定です。1回の接種が1万円前後(価格未定)で、計3万円を超える金額になりますが、癌を待つことを考えれば、安いものになります。
ヒトパピローマウィルス・HPVの16型は、尖圭コンジローマの一部の原因ウィルスでもあります。遺伝子の交叉反応で他の型のウィルスにも効果があるかも知れません。一生涯ウィルスが体から消えないかもしれないと悩んでおられる方にも朗報でしょう。
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症状のない淋病・クラミジア感染症(2007年日本性感染症学会レポート#4)
12月2日(日)のランチョンセミナー「淋菌、クラミジア、マイコプラズマの拡大防止策」というテーマでありました。
札幌医科大学の高橋聡先生が講師です。
全くの健常人204人に淋菌検査を行なったところ、陽性はゼロだったという報告です。
要するに、淋菌感染症で無症状の人間はいないという結果です。
臨床現場では、無症状だが淋病が心配だという患者さんが来院しますが、そのような患者さんは淋病はないという結果です。
上記の報告の流れで、全くの健常人204人にクラミジア検査を行なったところ、陽性率は204人中7人で3.4%であったという報告です。
クラミジア感染症の場合、無症状でも安心できないという結果です。
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STDの咽頭感染(2007年日本性感染症学会レポート#3)
東京女子医大東医療センター耳鼻咽喉科と宮本町中央診療所の研究報告です。
淋菌とクラミジアの咽頭感染が懸念されている昨今、実際の統計として報告しています。
男性で16%、女性で21%の咽頭感染の陽性率です。STD感染が心配な患者さんのうち10人に1人~2人は感染していることになります。
同じ研究報告の別の観点からです。
淋菌・クラミジア感染の咽頭感染・性器感染を調べた結果です。
性器感染は認められなくても、咽頭感染は認める場合が少なからずあるという驚くべき事実です。
臨床医からすると、性器感染がなければ咽頭感染はないだろうと考えるのが普通です。
ですからこの結果は臨床医にとっては盲点になります。
逆に、性器に淋菌・クラミジア同時感染している女性の咽頭感染率は、クラミジア感染が26.1%、淋菌感染が14.3%です。かなりの数字です。
【注意】
高橋クリニックではSTDの咽頭検査は行っていません。
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尖圭コンジローマ治療の新時代(2007年日本性感染症学会レポート#2)
12月2日(日)に昨日と引き続き日本性行為感染症学会に出席しました。
今回はコーヒーブレイクセミナーです。共済は持田製薬です。なぜ持田製薬か分かりますか?尖圭コンジローマ治療新薬のベセルナクリーム5%を販売している会社だからです。
待ちに待った薬が今月12月にやっと販売になります。この記事をお読みの方もルンルンでしょう。
この講演を聴いていたら、どこかで見たことがある組織の写真が出ていました。『似ているなぁ?』と思ってみていました。自分のクリニックに返って確認してみたら、やはりそうです。私の作成した組織のスライドと同じなのです。
よくよく考えてみたら、以前に持田製薬から私の作成したブログの写真を使用させていただきたいと申し出があって、了承したことを思い出しました。年はとりたくないものです。すぐに忘却ですから・・・。
でも、大学病院の専門家に一開業医である私の作成した組織スライドが認められたということは、ある意味名誉なことです。チョッと嬉しい・・・。
このスライドはHPVの攻撃細胞を的確に示しています。
HPV6型・11型は扁平上皮細胞のみを攻撃します。これが尖圭コンジローマの原因になるのです。
HPV18型は子宮頚部の腺細胞を攻撃し、HPV16型も子宮頚部の腺細胞と異型性細胞を攻撃します。これが子宮頸癌になるのです。
尖圭コンジローマの原因であるHPV6型11型は子宮頸癌にはならないのです。
尖圭コンジローマ感染者は、ここ10年足らず(1999年~2005年)で2倍に増えています。性感染症の分野で治療法に限界を感じた時に、ベセルナクリームが登場です。
ベセルナクリームの主成分であるイミキモドは、免疫細胞にスイッチを入れ炎症を起こさせる薬です。
その炎症によって、ウィルス感染した細胞の自滅とウィルスそのものの死滅を謀るのです。有名なインターフェロンが介在しています。
ベセルナクリームの刺激により、自然免疫と獲得免疫の両方の免疫作用により尖圭コンジローマは死滅します。
しかし、獲得免疫はベセルナクリームの主成分であるイミキモドの介在があって初めて形成された獲得免疫ですから、再感染の可能性は十分あります。すなわち、尖圭コンジローマが治っても尖圭コンジローマの免疫はできません。尖圭コンジローマの感染機会があれば、何度でも感染し発症する可能性があるのです。
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ヒトパピローマウィルスHPVのワクチン(2007年日本性感染症学会レポート#1)
12月1日(土)・2日(日)に大手町のサンケイプラザで日本性感染症学会 第20回学術集会に参加しました。
学会会長の慈恵医大の小野寺昭一教授が、大学の先輩だったので、挨拶がてら参加しました。
尖圭コンジローマの治療新薬のベセルナクリーム5%の発売もあってか、ヒトパピローマウィルスHPVに関する演題が多かった気がします。
ランチョンセミナーが12時半からあったので聴講しました。
ランチョンセミナーとは軽い昼食をしながら、ある病気の治療・診断で最先端のスペシャリストのお話を聞くというものです。
聴講する全員にお弁当が出されます。
講師がアメリカ人だったので、同時通訳のイヤホーンキットが配布されました。
右のソニー製の器械です。
講師はアンナ・バーバラ・モスキッキ医師です。
テーマはヒトパピローマウィルスHPVのワクチンについてです。
ヒトパピローマウィルスHPVはご存知のように子宮頸癌の原因とされています。
日本人女性10万人に8人罹患率で、全年齢の女性の7番目の死亡原因の病気であり、15歳~44歳女性死亡原因の2番目に多い病気です。死亡率は10万人に2.8人です。
日本人女性子宮頸癌の内、ヒトパピローマウィルスHPV罹患率は81.6%であり、ヒトパピローマウィルスHPV16型・18型に限れば、52.1%です。
すなわち、子宮頸癌の患者さんのうち半数の方に、HPV16型・18型に感染していたということになります。
このヒトパピローマウィルスHPVと子宮頸癌には、ある相関関係があり、ウィルス感染が長ければ長いほど子宮頸癌になるのだろうということです。
赤いラインがヒトパピローマウィルスHPV・ハイリスクHRの罹患率です。青いラインが子宮頸癌の罹患率です。HPV罹患率は若年者で30%くらいですが、35歳以降に10%前後で推移して、それ以上下がりません。したがって、HPVは感染しても90%の方は自然治癒しますが、残り10%の方に感染が継続します。感染継続が10年ほどになると子宮頸癌の罹患率が上昇してきますから、【感染+感染期間】が子宮頸癌の発症と深く相関しているらしいというのです。
先ほどのスライドでも分かるように、20歳未満のHPV罹患率は30%と高いです。これには理由があり、女性の子宮頚部が思春期前だと扁平上皮に覆われていなく円柱上皮がむき出しに露出していて、HPVの感染が容易になるからです。
成人女性になると、子宮頚部が扁平上皮に覆われるので、HPV感染しにくくなります。
右のスライドは、上の内容を示す実際の写真です。
左が思春期前、中央が思春期、右が成人です。
さて、アメリカでは子宮頸癌用のワクチン(16型・18型)と尖圭コンジローマ用のワクチン(6型・11型)の両方の予防ワクチンができています。
全部混合した4価(6型・11型・16型・18型)のワクチンを接種したグループと摂取しないグループで効果をみた研究のスライドです。
子宮頚部に病的所見の見られた女性の中でワクチン接種4616人中HPV6・11・16・18型検出陽性はゼロ!未接種4675人中同検出陽性は52人でした。
驚いたことに、HPVの別の型検出陽性は38人で、未接種の検出陽性62人に比較して低率になり、他の型のウィルスも抑制されました。
各国で若年者にHPVワクチン接種を薦めています。
アメリカでは9歳から18歳、イギリス12歳から13歳、オーストラリア12歳から26歳、ドイツ12歳から17歳です。子宮頚部の未成熟な思春期前にワクチン接種でHPV感染から女性を守ろうとするのが世界的趨勢です。
日本でこのワクチンが承認されるのは、おそらく2年から3年後でしょう。
子宮頸癌のウィルスは16型・18型・50番台の型が主です。6型・11型のウィルスは尖圭コンジローマの原因であって、決して子宮頸癌の原因ではないということを知っておいてください。婦人科医の中には尖圭コンジローマ→子宮頸癌へ移行すると誤解している医師が存在します。患者さんの自衛策として注意が必要です。
【注意】
私は婦人科医ではないので、女性性器の病気に関するご相談は、まず婦人科医を受診して下さい。
それでも解決しない場合に限って、セカンド・オピニオンで当院を受診するのはOKです。
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ヒトパピローマウィルスHPVのご婦人感染・罹患率
15歳~29歳の若い女性のヒトパピローマウィルスHPVの罹患率は平均40%です。
年齢別に詳細に分類すると、
●15歳~19歳:45%
●20歳~24歳:40%
●25歳~29歳:30%
です。20歳未満のご婦人の感染率がとても高いのに驚かされます。このデータは首都圏のデータではないので、首都圏・都内のご婦人の場合、これ以上の感染・罹患率である可能性が高いと考えれられます。
ヒトパピローマウィルスHPVは子宮頸癌と尖圭コンジローマの関連ウィルスですから、これを子宮頸癌危険度で分類すると、
●high-risk(子宮頸癌危険群:16・18・45・56型DNA):23.6%
●intermediate-risk(子宮頸癌中等度危険群:31・33・51・52・58型DNA):20.0%
●low-risk(尖圭コンジローマ群:6・11・42・43・44型DNA):3.6%
となります。
尖圭コンジローマウィルスの罹患率は、若いご婦人のヒトパピローマウィルスHPV罹患率が約40%で、low-riskが3.6%ですから、次の計算式で求められます。
【0.4×0.036=0.0144】
すなわち、1.44%の確率で若いご婦人が尖圭コンジローマウィルスに罹患している計算になります。具体的には、若いご婦人の100人に1人~2人は尖圭コンジローマウィルスをお持ちになっていることになります。
※参考資料:日本性行為感染症学会誌2001年第12巻 第1号
【注意】
女性性器に関する病気は全て婦人科の診療範囲の病気です。ですから、女性性器の病気でお悩みの時には、始めに必ず婦人科を受診して下さい。婦人科を受診しても尖圭コンジローマのように治りが悪い場合には、高橋クリニックでもご相談を受けます。
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