淋病

淋菌の疑問

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性行為感染症で有名な病気として淋病があります。
その原因菌が淋菌です。写真のように淋菌の様子は、2つの球がくっ付いたようなマユ型の双球菌です。学生時代の教科書や研修医時代に教わりました。

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淋菌はグラム陰性菌で普通の顕微鏡で観察すると、写真のように小さな粒として確認できます。
白血球の中に、小さなカイコのマユのように見えるのが淋菌です。しかし、マユ型ではなく、半分の丸型の淋菌も確認できます。双球菌のはずの淋菌が、何故、半分の丸型があるのでしょう。

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この写真は、私が淋病の患者さんから直接採取した膿を染色や固定しないで、生きたまま観察した淋菌の姿です。『あれ〜?』と思いました。生きた淋菌を観察すると、淋菌は、2つくっ付いたマユ型ではなく、一個一個別々に活発に動いて見えるのです。

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さらに、詳細に見ると、動いている淋菌が鞭毛をクルクル回しながら激しく動いているのです。
そう、まるでヘリコプター🚁のようです。
それでは、染色した淋菌は何故双球菌に見えるのでしょうか?患者さんから採取した膿をスライドグラスに塗って、アルコールランプで軽く固定して染色します。この熱固定する時に淋菌は死にます。
Gonotwin淋菌が「は〜い!死にま〜す!」と言って死ぬとは思えません。動かせる鞭毛を死に物狂いで振り回すでしょう。その時、側にいた同じ淋菌の鞭毛と絡み合ってガッチリ寄り添ってしまうのです。それが、マユ型の双球菌になってしまうのです。ちょうど、上下に柄のついた2つサクランボが、柄が絡み合っているような姿です。

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この写真は、淋菌の走査電子顕微鏡像です。
同じ淋菌ですが、左の写真では、長い鞭毛が確認できます。この鞭毛をクルクル振り回しながら淋菌は移動するのです。一番上の写真のイメージと大分違いますね?今までの淋菌のイメージは、死んだ淋菌の姿だったのです。生きている淋菌は長~い鞭毛を活発に動かしているのです。鞭毛のない淋菌には病原性が少ないことが分かっています。この鞭毛で尿道粘膜、子宮粘膜、卵管粘膜に吸着して炎症を起こすのです。また、精子に鞭毛で絡みつき、精子が膣→子宮→卵管→腹腔内の移動に併走するので、卵管炎、腹膜炎を起こすのです。卵管炎で卵管は癒着し、卵子が子宮に移動できなくなり不妊症の原因になるのです。

鞭毛を活発に動かすためには、かなりのエネルギーが必要です。この小さな細菌の何処にそんなエネルギーが蓄えられている思われますか?おそらく、エネルギーを外から補給しているのです。実は、精液の中のリン酸塩であるATPという、精子が利用するエネルギー物質です。
最近、この鞭毛に病原性があるので、鞭毛を抑える薬剤が研究されていますが、なかなか上手くいっていないようです。

過去の学問の常識が常に正しいとは限りません。

【参考】
戸田細菌学
ブラック微生物学

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淋病

【概念と疫学】
淋菌によって感染する病気を淋病と呼びます。
淋菌(りんきん)【写真1】はナイセリア属のグラム陰性双球菌です。ナイセリア属に入る菌は全部で11種類あり、その内病原性を有するのは、この淋菌と髄膜炎菌です。 その他の9種類のナイセリア菌は全て口腔内に存在する常在菌(日本人の5~10%に常在)です。

その感染率は約30%です。1984年をピークに減少しましたが、1990年代半ばから増加しつつあります。クラミジアとの同時感染(淋病患者中20%~30%)している場合も多いと報告があります。

淋は「淋しい」という意味ではなく、雨の林の中で木々の葉からポタポタと雨がしたたり落ちるイメージを表現したものです。淋菌性尿道炎は尿道の強い炎症のために、尿道内腔が狭くなり痛みと同時に尿の勢いが低下します。その時の排尿がポタポタとしか出ないので、この表現が病名として使用されたものと思われます。

古代の人は淋菌性尿道炎の尿道から流れ出る膿を見て、陰茎の勃起なくして精液が漏れ出す病気(精液漏)として淋病をとらえ、gono=精液(semen)、rhei=流れる(flow)の意味の合成語gonorrhoeaeと命名しました。

淋菌の大きさは0.6μm~1.0μmで線毛のある型と線毛のない型に分けられます。線毛は電子顕微鏡【写真2】で確認できるが、光学顕微鏡では確認できないほど極細の構造です。生きている淋菌は、この線毛を活発に動かし粘膜上皮に付着、粘膜下に浸入するものと思われる。患者さんから採取した淋菌を血液寒天培地で培養すると、この線毛は消失します。病原性にはこの線毛が重要な鍵を握っていると考えられます。

淋菌は人とチンパンジーだけに感染し、白人は蒙古人(日本人も含む)よりも淋菌に対して感受性が高く、B血液型と関係するといわれています。
近年、淋菌の抗生剤耐性菌が増え、新しい抗生剤や抗菌剤に対しても短期間に耐性を獲得します。その理由として、首都圏でのオーラルセックスを主体とした風俗サービス(ファッションマッサージ・ピンサロ・キャバレーなど)が原因と思われています。
無害のほとんどのナイセリア菌は口腔内・咽頭内で常在菌として存在しています。これらナイセリア菌は、宿主の人が気管支炎や風邪などの感染症に罹患する毎に、医師から処方される抗生剤の被爆チャンスを頻回に受けます。その結果、様々な抗生剤に対して耐性を獲得し、オーラルセックスで浸入した淋菌は、親戚である口腔内のナイセリア菌と遺伝子組み換え(交差現象)を行い、容易に抗生剤耐性を獲得すると考えられます。

【写真1】淋菌・位相差顕微鏡像この写真は、淋菌性尿道炎の男性患者さんから膿を採取して、位相差顕微鏡で観察・撮影したものです。黒い細かいゴマのような粒は全て淋菌で、輪郭が白く光っているのは淋菌を一生懸命に食べている白血球の姿です。
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【写真2】電子顕微鏡で観察した淋菌です。病原性の原因と思われる線毛を確認することができます。
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【症状】
男性は尿道炎の症状で女性は膣炎の症状になります。
●尿道の膿(うみ)
●排尿痛
●亀頭包皮炎
●膣炎

【写真】尿道口から膿が出ています。また亀頭全体がほんのり赤くなっていて亀頭包皮炎状態です。
性器画像です。自己責任でご覧下さい。gonopus.jpg

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リステリンが淋菌感染予防に! m3.comの記事から

マウスウォッシュが口腔内の淋菌の殺菌に役立つ
リステリン製造業者の長年の主張に裏づけか

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 市販の口内洗浄液(マウスウォッシュ)が口腔内の淋菌抑制に役立つ可能性があり、日常使用は淋病の広がりを抑える安価かつ容易な方法になりうるとの研究結果が、「Sexually Transmitted Infections」に12月20日オンライン掲載された。オーストラリア、メルボルンセクシャルヘルスセンターのEric Chow氏らの研究。

 コンドームの使用率が減少しているため、多くの国で男性の淋病の罹患率は上昇しており、その大多数は同性愛者/両性愛者の男性で発生している。口内洗浄液リステリンの製造業者は、発表された研究では証明されていないが、リステリンが淋病に有効であることを1879年から主張していた。

 Chow氏らの実験の結果、リステリン「クールミント」と「トータルケア」(いずれもアルコール濃度21.6%)により淋菌のレベルが有意に低減し、食塩水(生理食塩水)では低減しなかった。

 さらに、以前の検査で口腔・咽頭の淋菌が陽性であった同性愛者/両性愛者の男性58人を対象に臨床試験を実施。被験者をリステリンまたは食塩水のいずれかで1分間、口をゆすぎ、うがいをする群に無作為に割りつけた。その結果、咽頭部で生存している淋菌はリステリン群では52%、食塩水群では84%であった。5分後、リステリン群は食塩水群に比べて、咽頭の淋菌検査が陽性になる可能性が80%低かった。

 Chow氏らは、「口内洗浄液の日常的な使用により未治療の感染症の期間が短縮したり、淋病になる可能性が低減したりすることが示されれば、この介入は男性と性交渉のある男性の淋病抑制に非常に重要な公衆衛生上の意味をもつ可能性がある」と述べている。
HealthDay News 2016年12月20日

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ジスロマックSR 淋病・クラミジア感染の救世主になるか?

ジスロマックという抗生剤は従来から存在していました。クラミジア感染に対して、1回4錠1日の服用でOKの薬でした。淋病・淋菌にも有効であることは知られていましたが、今まで認可されていませんでした。
ところが今度、ファイザー(株)から新たに発売される抗生剤、「ジスロマックSR」は淋病・淋菌の承認が得られたのです。
Ztmpo服用の仕方に特徴があり、抗生剤の入ったボトルに60mlの水を入れ、よく攪拌して一気に飲むという具合です。
Ztmまた、この薬は、従来のジスロマックと比較して24時間有効血中濃度が何と3倍!です。
このグラフに掲載されているAUCとは、Area Under the Curveの略で、訳すると血清中濃度・時間曲線下面積といいます。要するに、Y軸を血液中の薬剤濃度、X軸を時間とし、血液中の薬剤濃度曲線を一定時間にわたって積分した値です。
薄い青色の曲線が従来のジスロマックです。紫色の曲線が新発売のジスロマックSRの曲線です。服用してから24時間のAUCは、従来のジスロマックに比較して3倍の積分値です。抗生剤はダラダラ治療するのではなく、短期にガツッと治療するのが効果的です。特に欧米人は短期決戦型の治療を好みます。

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