性器ヘルペスの痛い訳

性器ヘルペスは痛みが来ます。女性の場合には痛みが特に強いのが有名ですが、中には男性でも非常に痛がる場合があります。
16311herpes24実例写真の患者さんは24歳の男性です。元旦に陰茎包皮に発疹が出て痛み始めたので、近くの大学病院泌尿器科を受診しました。性器ヘルペスの診断で、治療薬としてゾビラックス錠とゾビラックス軟膏を処方され治療していました。しかし、包皮の潰瘍が大きくなり、また痛みがだんだん強くなったので、1月8日に高橋クリニックを受診しました。ご覧のように包皮先端が潰瘍上になっていて膿も付着しています。痛みが強く、これ以上むけません。また排尿時も痛みが強いそうです。

さて、性器ヘルペスの治療薬を真面目に内服・軟膏塗布しているにもかかわらず、なぜひどくなっていくのでしょうか。それには理由があります。
性器ヘルペスは単純ヘルペス1型・2型によって生じるウィルス感染症です。言わずと知れた性行為感染症・STDです。人間の免疫システムの中でウィルスを殺すのは、免疫抗体と呼ばれる液性免疫です。ところがこの免疫抗体はウィルスの型に合わせたオーダーメイドのタンパク質でなければ効果がないのです。ウィルス感染をすると、ウィルスの型を読み取り、そのデータを元にリンパ球が抗体を産生するのです。すなわち、ウィルス感染してから直ぐに免疫抗体ができるわけではありません。かなりのタイムラグがあるのです。通常約4日~1週間でしょう。その間、体の免疫システムがただ指をくわえて黙っているわけにはいきません。
そこで登場するのが、細胞性免疫である白血球です。ウィルス感染した部位に大量の白血球が出張ってきます。ところが白血球にはウィルスを殺すことが出来ません。なぜなら白血球は細菌を攻撃するためだけの存在だからです。仕方なく白血球はその辺にいる無害の常在菌に攻撃を仕掛けます。攻撃し終わった白血球は破裂して自爆します。大量の白血球の自爆は、肉眼的には膿として見ることができます。白血球は自爆するときに白血球の体内に持っている大量の攻撃物質を周囲にばらまきます。それが組織に強い炎症を与え、局所に強い炎症と痛みが生じるのです。
実例の患者さんは、まさにこの状態なのです。この患者さんの現在の苦しみを除去するためには、今の治療に加えて、抗生剤の内服、抗生剤軟膏、ステロイド軟膏、解熱鎮痛剤の内服が必要になります。
単純ヘルペス1型は口唇ヘルペスに、単純ヘルペス2型は性器ヘルペスの主な原因とされています。しかし口唇ヘルペスの原因である単純ヘルペス1型が性器ヘルペスになった時には重症化するとも言われています。この患者さんの場合は1型なのかも知れませんね。すると1型は2型に比べて細胞性免疫である白血球の遊走を促すのかも知れません。

【注】患者さんの承諾を得て、写真を掲載しています。

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性器ヘルペス

【概念と疫学】
単純ヘルペスウィルス(herpes simplex virus)によって感染するSTD・性病です。性器に感染すると、神経に侵入し仙髄神経節に潜伏感染します。何かの刺激や体調の悪い時あるいは女性の生理の時に、活性化されて皮膚や粘膜に出現し発病します。往々にして再発を繰返します。症状として痛みが強く、時として歩行障害・排尿困難になります。一般的に女性のほうに症状が強く出ます。

単純ヘルペスウィルス(HSV:herpes simplex virus)には1型と2型があり、口唇ヘルペスは1型で性器ヘルペスは2型に分類されます。まれに口唇ヘルペス(1型)が性器に、逆に性器ヘルペス(2型)が口唇に出現することがありますが定着はしないと思われています。単純ヘルペスウィルスの形状は電子顕微鏡で観察すると、まるで目玉焼きのような形態をしています。
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【症状】
感染をすると、潜伏期(2日~10日間)を経て水泡形成します。水疱はほどなく潰れ、潰瘍状【写真1・2】になり色素沈着【写真3】をし治ります。この病気の特徴は痛みです。潰瘍そのものの痛みと神経痛の痛みを伴います。また患部近くの神経麻痺を起こす可能性があり、排尿障害【写真4】や排便障害【写真5】などの機能障害を来たすことがあります。
初感染者の相手(セックスパートナー)の69%が無症状という報告があるので、無症候性(症状が出ない)性器ヘルペス患者さんが多いことを念頭に置かなければなりません。

【写真1】ヘルペス潰瘍
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【写真2】ヘルペス潰瘍
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【写真3】ヘルペス色素沈着
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【写真4】尿道部ヘルペスによる排尿障害
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【写真5】肛門ヘルペスによる排便障害
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【写真6】ご婦人の性器ヘルペス
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【診断】
特有の水泡と浅い潰瘍で診断は容易です。不顕性感染の場合は血液検査で判断します。

【治療】
抗ヘルペスウィルス剤の内服(商品名:バルトレックス・ゾビラックス)と軟膏の治療が基本になります。しかし再発を繰返す場合は骨盤内の仙髄神経節に潜んでいるので、完治は難しいのが現実です。女性の場合、生理が来るたびに発病することがあります。

【予後】
ヘルペスウィルスの特徴として、所属神経節に潜伏して発症を繰り返します。性器ヘルペスウィルスの場合は、骨盤内陰部神経節に潜みます。女性の場合には、生理が来るたびに性器ヘルペスが発症し、精神的に追い込まれる方がおられます。患者さんも医師も根気強い治療が必要です。

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