子宮頚癌

子宮頸がんの原因

Img_1062最近、増加傾向にある子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウィルスHPV(Human Papilloma Virus)の感染が原因とされています。
では、何故ヒトパピローマウィルスが感染するとガン細胞が生じるのかをイラストを使って解説しましょう。
Img_1019
ヒトパピローマウィルスは性感染症STDの一種です。性行為により子宮頸部の粘膜にウィルスが感染すると、ウィルスは粘膜の基底細胞層に侵入します。粘膜細胞の核内にウィルス侵入し、核を支配してウィルスの構造に必要な部品を無理矢理造るのです。
Hpvinfection
大量に造られたウィルスは、次々に細胞内に放出され、細胞はパンパンになります。ウィルスを作っていた核は、大量のウィルスに潰されてしまいます結局、細胞は破裂して、細胞の周囲にウィルスは拡散します。拡散したウィルスは、近くの粘膜細胞に感染し、同じ工程を繰り返します。
Img_1018
この工程を何回も何回も繰り返すうちに、ウィルス産生を中断して破裂しない中途半端な細胞が生まれてきます。そのような細胞の核は、ウィルスにより変性し正常な核ではなくなります。この異常な核がガン細胞になるのです。

Img_1063このウィルス感染とウィルス増殖を抑えることで、子宮頸がんを防ぐことができる筈です。ところが普通の体は、このウィルスを抑えることが出来ないのです。その理由は、粘膜の基底細胞層のウィルス感染を探知する免疫の樹状細胞が侵入できないからです。基底細胞層は、基底膜に覆われています。この基底膜の中に樹状細胞が大き過ぎて侵入できない結果、ウィルス感染を探知できないのです。
ー*ー*ー*ー
この考え方からすると、粘膜異形成が確認されたらHPVウィルスに感染した証拠ですから、基底膜を一部破壊して樹状細胞に認識させればよいでしょう。そのためには、剣山のような道具で子宮頸部を数カ所刺せばよいでしょう。
ー*ー*ー*ー

免疫抗体は小さいので、容易に基底膜に侵入しウィルスを攻撃できます。そのため、子宮頸部・粘膜に異常細胞(異形成)を認めたら、一般的に行われている定期的検診しながらガン細胞に成熟するのを待たないで、HPVワクチンを注射して体にHPV抗体を積極的に造らせるべきです。

改めて言います。子宮頸がんはHPVウィルス感染症の終末の状態です。感染症を抑えないで、この病気を防ぐことは出来ません。子宮頸部の粘膜に異常細胞(異形成)が発見されたら積極的に免疫抗体を作らせるべきです。

| | コメント (1)

子宮頚管異形成とプラズマ療法

以前にも解説したように、子宮頚癌検診は、子宮頚管粘膜を採取して、その異形成を確認する方法です。
そして、ひとたび異形成が発見されたなら、定期的に経過を追い、異形成の悪性度が最高になった時点で、子宮頚癌の手術を行う訳です。
この一連の検査・診断・治療の流れは、あたかも子宮頚癌が出来上がるのを待っているかのようです。

この状況を考えれば、子宮頚管異形成が判明した時点で、子宮頚管異形成の原因であるヒトパピローマウィルス・HPVを抑え込む子宮頚癌ワクチンを接種する根拠になるのです。
しかるに、子宮頚癌ワクチンの痛みなどの副作用が問題になり、接種を控える患者さんがいるのも事実です。

代替医療の世界で、アンチエイジングや癌治療にプラズマ療法があります。この治療はマイナス電子を体に照射し、体内の水・酸素・窒素をイオン化・プラズマ化させ、身体を活性化させる作用を持っています。

このプラズマ療法は、ウィルスを抑え込む作用も持っています。事実、私がノロウィルスで倒れた時に、このプラズマ療法を受けたら、翌日から診療に復帰できました。子宮頚管異形成も子宮頚癌も原因は、子宮頚管粘膜に何度も繰り返し感染するヒトパピローマウィルス・HPVが原因ですから、このプラズマ療法が効きます。興味のある方は治療を受けてみてください。

| | コメント (2)

「子宮頚癌ワクチン」はウィルスに感染した後でも積極的に接種すべき!

以前にもワクチンのことについてブログの中で解説していて、重複することになりますが、ここに改め書き直します。

現在、子宮頚癌ワクチンとして2価のワクチン「サーバリックス」と4価のワクチン「ガーダシル」が承認・発売されています。このワクチンは予防のためのワクチンで治療のためには使用されていません。
現在、子宮頚部の細胞異形成の認められた患者さんには使用されていません。異形成の患者さんは、定期的な細胞診を行って経過観察になります。そして異形成が強くなった時点で、子宮頚癌の前癌状態として手術されます。この時間的過程は、まるで子宮頚部の細胞が異形成から癌細胞になるのを待っているように思えてなりません。

Cin00私の考えでは、このような患者さんにワクチンを接種することで、おそらくは治療効果が出る筈です。
子宮頚癌ウィルスに感染した細胞は異形細胞として認識されます。しかし、異形細胞は子宮頚部の粘膜上皮ですから、皮膚の垢のように次々に脱落していきます。すると病気は治る筈ですが、ウィルスは粘膜下の基底細胞までウィルスを放出するので、次々に異形細胞が生まれて、生まれる回数は多くなるにつれ悪性度が増してガン細胞になるのでしょう。
ここでワクチンを接種すれば、基底細胞にウィルスが感染するのをブロックしてくれるので、治療にもなる筈です。
【参考文献:スタンダード病理学 病理検査のすべて 文光堂】

同じ考え方を「尖圭コンジローマ」の場合にも当てはまります。皮膚や粘膜に感染したヒトパピローマウィルス・HPVは、最下層の基底細胞に感染して、細胞増殖を形成してイボ=尖圭コンジローマになります。感染した細胞は、ウィルスを放出して、また基底細胞を感染させ、次々に感染が繰り返すのです。
現在は、ベセルナクリームで免疫を興奮させ、感染細胞を殺しています。しかし、4価のワクチンができれば、基底細胞が感染する前に、ウィルスを殺すことができます。

4価のワクチンは女性の適応しか日本では承認されていませんが、男性にも効果があります。オーストラリアで実施された4価ワクチンの臨床試験で、男性の尖圭コンジローマの発症が激減したという文献があります。

Cin0_2右の組織像は、正常な子宮頚管の粘膜像です。
一番下(下層)に1列にきれいに並んだ基底細胞層があり、上の層に上がるに従い、次第に成熟してグリコーゲンを豊富に含んだ子宮頚管粘膜になります。

Cin1_2ところが、子宮頚癌のウィルスであるヒトパピローマウィルス・HPVに感染すると、まず最下層にある基底細胞までウィルスは侵入します。
成熟した細胞は、核の遺伝子命令が発動した後ですから、ウィルスが侵入しても成熟した細胞を変化させることはできません。
未成熟の基底細胞は、純粋でどのような色にも染まりますから、ウィルスが侵入すると感染細胞に変化します。
写真は、子宮頚管粘膜下腫瘍CIN1の組織像です。この中で【K】と示されているのは、コイロサイトーシス(空胞細胞)というウィルスをたくさん含んだウィルス感染細胞です。また、本来なれば最下層に1列に並んでいる筈の基底細胞層の列が乱れ、粘膜層の下3分の1の高さ【L】まで厚くなっています。
空胞細胞からはウィルスが大量に放出され、最下層の基底細胞に次々に感染していきます。このサイクルは永遠に繰り返されます。
現在の治療法は、このエンドレスの基底細胞への感染をただひたすらにジ~ッと観察しているだけです。癌になったら手術しましょうと悠長なこと言っているのです。長期間にわたって感染を繰り返せば、癌細胞に変化しても仕方がないでしょう。

子宮頚癌ウィルスに感染した際に、体の免疫のウィルス感知システムは、基底細胞の基底膜に阻まれウィルスを感知できません。ですからウィルスを殺すための免疫抗体が作れないでいるのです。そこで今話題の「子宮頚癌ワクチン」を接種すれば、体の中に必要な免疫抗体が産生されます。抗体は免疫細胞に比べ分子量が小さいので、細胞外液に乗って基底膜に囲まれた感染した基底細胞やウィルスを攻撃してくれるのです。ですから、「子宮頚癌ワクチン」は、感染したと分かった後でも積極的に接種すべきです。

Cin2_2【備考】
病気が進むと、写真のように粘膜下腫瘍CIN2になります。
基底細胞層は、細胞の増殖が増すので、1列の平坦な層ではなく、写真のように波打った(乳頭状)層になり、粘膜層も全体的な厚くなっています。

Cin3さらに病気が進むと、写真のような粘膜下腫瘍CIN3になります。
細胞の中には、核の分裂像【M】が散見されます。通常、正常な組織像で細胞や核の分裂像は観察することはありませんから、異常な増殖を示唆した所見です。前癌状態と判断することができます。

【参考文献:カラーアトラス基礎組織病理学第4版 西村書店】

| | コメント (2)