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「子宮頚癌ワクチン」はウィルスに感染した後でも積極的に接種すべき!

以前にもワクチンのことについてブログの中で解説していて、重複することになりますが、ここに改め書き直します。

現在、子宮頚癌ワクチンとして2価のワクチン「サーバリックス」と4価のワクチン「ガーダシル」が承認・発売されています。このワクチンは予防のためのワクチンで治療のためには使用されていません。
現在、子宮頚部の細胞異形成の認められた患者さんには使用されていません。異形成の患者さんは、定期的な細胞診を行って経過観察になります。そして異形成が強くなった時点で、子宮頚癌の前癌状態として手術されます。この時間的過程は、まるで子宮頚部の細胞が異形成から癌細胞になるのを待っているように思えてなりません。

Cin00私の考えでは、このような患者さんにワクチンを接種することで、おそらくは治療効果が出る筈です。
子宮頚癌ウィルスに感染した細胞は異形細胞として認識されます。しかし、異形細胞は子宮頚部の粘膜上皮ですから、皮膚の垢のように次々に脱落していきます。すると病気は治る筈ですが、ウィルスは粘膜下の基底細胞までウィルスを放出するので、次々に異形細胞が生まれて、生まれる回数は多くなるにつれ悪性度が増してガン細胞になるのでしょう。
ここでワクチンを接種すれば、基底細胞にウィルスが感染するのをブロックしてくれるので、治療にもなる筈です。
【参考文献:スタンダード病理学 病理検査のすべて 文光堂】

同じ考え方を「尖圭コンジローマ」の場合にも当てはまります。皮膚や粘膜に感染したヒトパピローマウィルス・HPVは、最下層の基底細胞に感染して、細胞増殖を形成してイボ=尖圭コンジローマになります。感染した細胞は、ウィルスを放出して、また基底細胞を感染させ、次々に感染が繰り返すのです。
現在は、ベセルナクリームで免疫を興奮させ、感染細胞を殺しています。しかし、4価のワクチンができれば、基底細胞が感染する前に、ウィルスを殺すことができます。

4価のワクチンは女性の適応しか日本では承認されていませんが、男性にも効果があります。オーストラリアで実施された4価ワクチンの臨床試験で、男性の尖圭コンジローマの発症が激減したという文献があります。

Cin0_2右の組織像は、正常な子宮頚管の粘膜像です。
一番下(下層)に1列にきれいに並んだ基底細胞層があり、上の層に上がるに従い、次第に成熟してグリコーゲンを豊富に含んだ子宮頚管粘膜になります。

Cin1_2ところが、子宮頚癌のウィルスであるヒトパピローマウィルス・HPVに感染すると、まず最下層にある基底細胞までウィルスは侵入します。
成熟した細胞は、核の遺伝子命令が発動した後ですから、ウィルスが侵入しても成熟した細胞を変化させることはできません。
未成熟の基底細胞は、純粋でどのような色にも染まりますから、ウィルスが侵入すると感染細胞に変化します。
写真は、子宮頚管粘膜下腫瘍CIN1の組織像です。この中で【K】と示されているのは、コイロサイトーシス(空胞細胞)というウィルスをたくさん含んだウィルス感染細胞です。また、本来なれば最下層に1列に並んでいる筈の基底細胞層の列が乱れ、粘膜層の下3分の1の高さ【L】まで厚くなっています。
空胞細胞からはウィルスが大量に放出され、最下層の基底細胞に次々に感染していきます。このサイクルは永遠に繰り返されます。
現在の治療法は、このエンドレスの基底細胞への感染をただひたすらにジ~ッと観察しているだけです。癌になったら手術しましょうと悠長なこと言っているのです。長期間にわたって感染を繰り返せば、癌細胞に変化しても仕方がないでしょう。

子宮頚癌ウィルスに感染した際に、体の免疫のウィルス感知システムは、基底細胞の基底膜に阻まれウィルスを感知できません。ですからウィルスを殺すための免疫抗体が作れないでいるのです。そこで今話題の「子宮頚癌ワクチン」を接種すれば、体の中に必要な免疫抗体が産生されます。抗体は免疫細胞に比べ分子量が小さいので、細胞外液に乗って基底膜に囲まれた感染した基底細胞やウィルスを攻撃してくれるのです。ですから、「子宮頚癌ワクチン」は、感染したと分かった後でも積極的に接種すべきです。

Cin2_2【備考】
病気が進むと、写真のように粘膜下腫瘍CIN2になります。
基底細胞層は、細胞の増殖が増すので、1列の平坦な層ではなく、写真のように波打った(乳頭状)層になり、粘膜層も全体的な厚くなっています。

Cin3さらに病気が進むと、写真のような粘膜下腫瘍CIN3になります。
細胞の中には、核の分裂像【M】が散見されます。通常、正常な組織像で細胞や核の分裂像は観察することはありませんから、異常な増殖を示唆した所見です。前癌状態と判断することができます。

【参考文献:カラーアトラス基礎組織病理学第4版 西村書店】

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コメント

パートナーが子宮けいガン検診でⅢbの診断を受けてしまいました。感染源は自分かどうかわかりません
パートナーとは半年前に関係を持ちました
半年でそんなに進行するものなのでしょうか?
【回答】
婦人科医に質問してください。』

また、Ⅲbでも子宮けいガンワクチンは有用でしょうか?最近は副作用について、色々と報道がありますので、詳しくお教えいただけると助かります
【回答】
有用だと考えます。』

また、自分も何かしら検査や処置をした方がよいのか、お教えください
【回答】
男性は確立されていません。』

あと自分は俗にいう蟻のとわたりの部分にしこりを感じます
なにかしら、病気でしょうか?依然psa検査で少し数値が高かったことがあります
【回答】
単なるオデキ(粉瘤・アテローマ)でしょう。』

パートナー共々、機会があれば診療を受けさせていただくことも考えております


メールにて、ご返信いただければなお助かります

以上よろしくお願いします

投稿: 〇〇哲司 | 2013/07/18 04:45

ガーダシルを45歳の時に接種しました、只今60歳で中程度異形細胞が出て子宮頚部線がんの疑いといわれましたが、そもそもガーダシルの効果は何年間でしょうかね?
★回答
5年ほどです。

この後の展開がどうあれ最近出た9価ワクチンも追加接種した方が良いと高橋先生は思いますか?
★回答
再度、ガーダシルを摂取すれば良いでしょう。

投稿: mika | 2019/04/20 18:19

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