性器ヘルペスと勘違いした痛み
患者さんは30歳代のご婦人です。
以前から陰部のピリピリした痛みが続くので、地元の口コミサイトで評判の医師に診てもらっていました。しかし診断と治療が二転三転するので心配になり高橋クリニックを訪れました。
患者さんの経過は次の通りです。
機会があり、とある男性と性交渉を持ちました。その後数日してから「オリモノ」の状態が変化したので、地元の婦人科を受診しました。カンジダ性膣炎あるいは細菌性膣炎を疑われ検査をしましたが特に異常は認めませんでした。
しかし、「オリモノ」の状態が思わしくないので、再度婦人科を受診しました。その際に器具を使って膣内を検査をしましたが、器具を外す時に膣の右下がはさまれてしまい、痛かったそうです。
その後、このはさまれた部分の痛みが取れずに、時々ピリピリ痛むのが続くので、段々心配になってきました。
血液検査も含めて、性器ヘルペス検査を行いましたが、異常は認めません。主治医は尖圭コンジローマの疑いがあると診断し、ベセルナクリームを処方しましたが、患者さんは、なお一層心配になり、高橋クリニックを訪れたのでした。
患者さんを実際に拝見すると、痛みのある部分にヘルペスなどの病的異常所見は認めません。また、尖圭コンジローマと診断された部分は膣前庭乳頭症で病気ではありません。生理的な現象です。ですからベセルナクリームをつけてはいけません。
では、この患者さんの痛み症状は、何が原因なのでしょう。
性行為感染症・性病とは、全く無関係の病気で間質性膀胱炎という病気があります。
その病気は頻尿症状の他に、下腹部痛や陰部の痛みが出ることがあります。患者さんの中には頻尿症状がなく、痛み症状だけに人もいます。この患者さんも恐らくそうだろうと考えて、まずは超音波エコー検査を行いました。
やはり異常がありました。膀胱出口が膀胱内に突出し、膀胱三角部が肥厚し、膀胱括約筋の走向異常も認めます。
尿流量測定検査(ウロフロメトリー)では、女性の排尿曲線としては勢いのないものです。
膀胱頚部硬化症による排尿障害が作る痛みと診断して、α-ブロッカーを処方しました。1ヶ月後の経過が楽しみです。
18日後に患者さん来院されました。悩みの痛みは完全に消失したそうです。
良かった良かったと喜びあいました。
今回の患者さんの体験を啓蒙してほしいとの希望でした。
今回の患者さんのように、陰部の症状だから陰部の病気だと誤解されることが多々あります。病気とは眼の前の所見だけが病気の本質を示しているとは限りません。ですから、臨床医は十分に注意しなければなりません。
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