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MSD株式会社での講演会

MsdcoMSD株式会社をご存知ですか?
最近の右のテレビコマーシャルが流れています。この会社のイメージ・コマーシャルです。この会社は、実は日本の万有製薬とアメリカのメルク株式会社とシェーリング・プラウ株式会社が合併した新しい世界的な会社です。

Msdkitanomaru今回、この会社の勉強会に講師として招かれました。
場所は、九段下の交差点近くにそびえたっている26階建て北の丸スクエアのMSD本社会議室で、午後8時から行われました。
私が小学生の頃、この近くを都電で通学していた時を懐かしく思い出されます。
その頃は、この地は確か日本興業銀行だった場所です。

Msd20101025本題に入りましょう。来年には、子宮頚ガンワクチンに尖圭コンジローマのワクチンを加えた4価ワクチン(4種類のHPVウィルスに対するワクチンという意味)が発売される予定になりました。
しかし、一般的には尖圭コンジローマに関しての情報がとても少ないので、尖圭コンジローマの専門家?と思われる私が勉強会の講師として招へいされたのです。

Msd201010252ワクチン部門の精鋭たちが28名そろい真剣に私の話に耳を傾けていました。大阪から新幹線で来られた社員もおられるそうです。
講演中居眠りする人は一人もいませんでした。
内容は、尖圭コンジローマの外見上の鑑別、治療、治療による副作用、難治性の病理学的理由などについて大いに語りました。

Msd201010253講演が終わり、幹部の方と神楽坂の日本料理「石かわ」で遅い夕食をいただきました。
写真は、はも・マツタケ・季節のキノコのお鍋です。美味しかった!
歓談の中で4価ワクチンの可能性について話題になりました。このワクチンはあくまでも予防ワクチンです。現在、子宮頚ガンワクチンとして2価のワクチンが承認・発売されていますが、子宮頚部の細胞異形成の患者さんには使用されていません。異形成の患者さんは、定期的な細胞診を行って経過観察になります。そして異形成が強くなった時点で、子宮頚ガンの前癌状態として手術されます。この時間的過程は、まるで異形成から子宮頚ガンになるのを待っているように思えてなりません。

Cin00このような患者さんにワクチンをうつことで、おそらくは治療効果が出る筈です。子宮頚癌ウィルスに感染した細胞は異形細胞として認識されます。しかし、異形細胞は子宮頚部の粘膜上皮ですから、皮膚の垢のように次々に脱落していきます。すると病気は治る筈ですが、ウィルスは粘膜下の基底細胞までウィルスを放出するので、次々に異形細胞が生まれて、生まれる回数は多くなるにつれ悪性度が増してガン細胞になるのでしょう。
ここでワクチンをうっておけば、基底細胞にウィルスが感染するのをブロックしてくれるので、治療にもなる筈です。
【参考文献:スタンダード病理学 病理検査のすべて 文光堂】

同じ考え方を尖圭コンジローマの場合にも当てはまります。皮膚や粘膜に感染したヒトパピローマウィルス・HPVは、最下層の基底細胞に感染して、細胞増殖を形成してイボ=尖圭コンジローマになります。感染した細胞は、ウィルスを放出して、また基底細胞を感染させ、次々に感染が繰り返すのです。
現在は、ベセルナクリームで免疫を興奮させ、感染細胞を殺しています。しかし、4価のワクチンができれば、基底細胞が感染する前に、ウィルスを殺すことができます。

4価のワクチンは女性の適応しか日本では承認されないでしょうが、男性にも効果があります。オーストラリアで実施された4価ワクチンの臨床試験で、男性の尖圭コンジローマの発症が激減したという文献があります。

Cin0_2【補足】
右の組織像は、正常な子宮頚管の粘膜像です。
一番下(下層)に1列にきれいに並んだ基底細胞層があり、上の層に上がるに従い、次第に成熟してグリコーゲンを豊富に含んだ子宮頚管粘膜になります。

Cin1_2ところが、子宮頚癌のウィルスであるヒトパピローマウィルス・HPVに感染すると、まず最下層にある基底細胞までウィルスは侵入します。
成熟した細胞は、核の遺伝子命令が発動した後ですから、ウィルスが侵入しても成熟した細胞を変化させることはできません。
未成熟の基底細胞は、純粋でどのような色にも染まりますから、ウィルスが侵入すると感染細胞に変化します。
写真は、子宮頚管粘膜下腫瘍CIN1の組織像です。この中で【K】と示されているのは、コイロサイトーシス(空胞細胞)というウィルスを多く含んだウィルス感染細胞です。また、本来なれば最下層に1列に並んでいる筈の基底細胞層の列が乱れ、粘膜層の下3分の1の高さ【L]】まで厚くなっています。

Cin2_2病気が進むと、写真のように粘膜下腫瘍CIN2になります。
基底細胞層は、細胞の増殖が増すので、1列の平坦な層ではなく、写真のように波打った(乳頭状)層になり、粘膜層も全体的な厚くなっています。

Cin3さらに病気が進むと、写真のような粘膜下腫瘍CIN3になります。
細胞の中には、核の分裂像【M】が散見されます。通常、正常な組織像で細胞や核の分裂像は観察することはありませんから、異常な増殖を示唆した所見です。前癌状態と判断することができます。

【参考文献:カラーアトラス基礎組織病理学第4版 西村書店】

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