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尖圭コンジローマのDNA型

Nstyleimiq_2尖圭コンジローマの病理組織検査で空胞細胞koliocytosisという特徴的な病的細胞を確認できます。この細胞を見つけることで、「尖圭コンジローマ」と病理の医師は診断する訳です。
ところが、患者さんから採取したイボ組織を丹念に観察すると、この空胞細胞には2種類の表情を持つことが分かります。
空胞細胞の核が凝縮したタイプと、核が膨張したタイプの2種類です。以前に持田製薬の依頼で講演した際に、この事実は公表しましたが、核膨張型の空胞細胞はボーエン様丘疹症ではないかと、その当時疑っていました。
しかし、DNA遺伝子型を調べている訳ではないので、それ以上言及しないでいました。

Renkeiforum今回、東京都世田谷区の有志の皮膚科医が中心となって行っている勉強会「皮膚の診療連携フォーラム2010」に講師として依頼されたので、前回の講演内容を組み立て直しました。
この機会に、核膨張型のDNA遺伝子型をチャンスがあれば調べようと考えていました。しかし、こればかりは患者さんが来なければできない相談です。それもベセルナクリーム治療してもなかなか治らなくて、患者さんが強く手術を希望される場合に限定されますから、簡単にチャンスは訪れるものではありません。

Op25f244522たまたま他の医療機関でベセルナクリーム治療しても治らすに手術希望の20代のご婦人が来院されました。
願ってもない患者さんです。
外陰部の他、右太ももの内側にもご覧のようなイボがあります。
尖圭コンジローマは、一般的に太もものような普通の皮膚には感染・増殖しませんから、このイボは尖圭コンジローマではなくボーエン様丘疹症が疑われます。

Op25f244523患者さんの強い希望もあり、電気焼灼手術を行いました。
手術中に、組織を一部採取し、病理検査とDNA検査を実施しました。

Op25f24452patho採取した組織の弱拡大の顕微鏡所見です。
正常の表皮に比べ、角質層の肥厚が著しく観察できます。

Op25f24452patho2さらに組織を拡大したのが、右の写真です。
この写真だけでは、分かりづらいので、下にコメントを付けた写真を提示します。

Op25f24452patho2ps写真の右側から左に向かって、組織が表層になります。
深部にある空胞細胞は、核膨張型の空胞細胞です。
角質層近く(顆粒層)の空胞細胞は核がパンク(破裂)しています。
角質層の空胞細胞は、細胞質はなくなりウィルスが詰まったカプセル状態になっています。

Op25f24452patho3ps組織の深部の状況です。


Op25f24452patho4ps組織表層(角質層前後)の状況です。

Op25f24452dna以上の病理組織所見の結果から、当然ボーエン様丘疹症であろうと推測していました。
ボーエン様丘疹症であれば、DNA型は16型に違いないと思っていたところ、結果は右のように6型でした。つまり、尖圭コンジローマだったのです。この患者さんの組織は、尖圭コンジローマの角質層肥厚型の尖圭コンジローマであるということになります。
現在の私の能力では、病理組織所見だけからではDNA型は予測できないのです。


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