症例報告 子宮頚管細胞診クラスⅢaがクラスⅠ(正常)に改善
尖圭コンジローマで治療した20代前半の患者さんです。尖圭コンジローマは治すことができました。
心配症の方で、地元の婦人科で子宮頚管細胞診を受けたところ、クラスⅢaと診断されてしまいました。(右の表を参照 婦人科学 第10版 金芳堂)
クラスⅢaは異常な細胞が見つかったということであり、ある意味前癌状態(放置すればガン細胞に変化していく可能性を秘めた状態)を意味します。
このご婦人から悲痛な思いで相談を受けました。何とかこの状態を治せないものかと・・・。
私は今まで尖圭コンジローマの特効薬であるベセルナクリームが厚労省で認可されるまでの間、自分で考案した軟膏を作り患者さんに処方してきました。その軟膏はベセルナクリームよりも若干効果が劣るものの、副作用もなく劇的に効く方もたくさんいて、患者さんにたいへん感謝されました。
その軟膏には、当時一般的に流通している抗ウィルス剤を成分として入れました。尖圭コンジローマの原因ウィルスであるヒトパピローマウィルス・HPVはDNA型ウィルスです。ヒトパピローマウィルス・HPV以外のDNA型ウィルスに効果がある抗ウィルス剤であれば、尖圭コンジローマウィルスにも効くかもしれない?と考えたのが事の始まりです。
実際私のひらめきは正解で、私のオリジナル軟膏は尖圭コンジローマの患者さんを次々に治したのでした。
さて、子宮頚管細胞診でⅢa(コルポ診の臨床ABC MEDICAL VIEW)と診断されても、一般的には定期的に細胞診検査を行い、悪性度が増加した時点で手術に踏み切ります。悪性度が増すまでの間、なにもせずにただひたすら待つのは現状です。
この患者さんも平成20年9月にⅢaと宣告されて以来、3か月ごとに検査を行い最悪の結果をただ待つのみでした。
平成20年9月 クラスⅢa
平成20年12月 クラスⅢa
平成21年2月 クラスⅢa
平成21年5月 クラスⅠ
私がこのご婦人から相談を受けたのが平成21年2月の結果が判明してからです。ある抗ウィルス剤を少量3月と4月に服用していただいたのです。そして5月の結果が何と!クラスⅠだったのです。正常に戻ったのでした。もちろん、何もしないで正常化される方もおられるでしょう。でもある意志を持って治療を行い正常化したという事実はエビデンスとして残るでしょう。
担当の婦人科の主治医は結果に首をかしげるばかりだったそうです。(首をかしげるということは、ほとんどの患者さんさんが正常化しないということでしょう。)今後の経過が楽しみです。
【補足】
子宮頚部・膣細胞の勉強をしましょう。
右のイラスト(カラーアトラス基礎組織病理学 第4版 西村書店)のように、組織は深い順に基底細胞・傍基底細胞・中層細胞・表層細胞と階層構造を形成しています。
未成熟(=未分化=変化前)の基底細胞が次第に変化して成熟(=分化=変化終了)した表層細胞に変化します。ヒトパピローマウィルス・HPVに感染すると、基底細胞の成熟システムが発動せずに、未成熟のまま表層の階層に基底細胞の形態で登ってきます。
細胞診断では、細胞が丸く小さく、核が大きいほど未成熟(未分化)だということになります。
正常・健常でされば細胞の核は常に丸く、階層が表層に向かった上昇するごとに小さくなり、細胞質は逆に大きく扁平になります。この方向性を持った細胞の形状に変化が生じた場合、異常・異形と判断します。
右の所見は正常です。(病理検査のすべて 文光堂)
つまりクラスⅠの所見です。ピンク色の細胞が表層細胞です。核は小さく見えます。青く染まっている細胞は、中層細胞です。表層細胞よりも核が少し大きいのが分かります。
表層細胞は細胞が大きく、核が小さいので成熟した細胞であることが分かります。中層細胞は表層細胞に比較して若干小さく、核が大き目なので、表層細胞よりも成熟していないことが理解できます。
軽度の異形細胞が存在するクラスⅢの所見です。(病理検査のすべて 文光堂)
写真の中央に集団でかたまっているのが、一見傍基底細胞に見える異形細胞です。細胞の1個1個は比較的小さいのですが、核がかなり大きく見え、核の形・大きさ・染まり方も不均一です。核は常に同じ大きさ・同じ形をしていなければ正常とはいえません。正常と思われる中層細胞が右上に一つ見えます。
ガン細胞(高度の異形細胞)です。(病理検査のすべて 文光堂)
クラスⅤの所見です。
細胞はさらに小さくなりました。核は細胞の大きさから比較するとアンバランスな印象を受けるほど大きくなり、核の大きさ・形・染まり方も不均一です。一見未成熟な基底細胞に見えますが、核の異常さからガン細胞であることが判断できます。周囲に成熟した表層細胞や中層細胞の姿を見ることができません。
【注意】
私は婦人科医ではありませんから、初めから子宮頚部の病気についての相談はご遠慮願います。
婦人科にかかっていて問題が解決しない場合に限り、セカンド・オピニオンで診察・来訪されるのはOKです。
今回報告した内容の治療は現在保険で認められていません。ご了承ください。
ヒトパピローマウィルス・HPVのワクチンが日本でも承認されたら、抗ウィルス剤によるこのような治療の必要もなくなるでしょう。早く承認されることを期待します。
【参考文献】
婦人科学 第10版 金芳堂
コルポ診の臨床ABC MEDICAL VIEW
カラーアトラス基礎組織病理学 第4版 西村書店
病理検査のすべて 文光堂
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