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尖圭コンジローマとHIV

【はじめに】
HIV( Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウィルス )感染症、いわゆるエイズ( AIDS Acquired Immunodifciency Syndrome:後天性免疫不全症候群 )の患者さんは、健常者に比較して免疫力が低下しています。そのため健常者よりも感染症にかかりやすかったり、治りにくいことがあります。

昨年の暮れからこの秋にかけて、HIVの患者さんで尖圭コンジローマ治療に四苦八苦した経験をしたので、患者さんの許可を得てここに紹介いたします。

【実例】 患者番号:14591
患者さんは40歳男性の方です。以前からHIV感染にかかっていることは知っており、某病院で定期的にチェックをしています。

【それまでの経過】
平成15年10月から肛門に尖圭コンジローマが生じ、他のクリニックで液体窒素治療を3回行いましたが、改善なくインターネット検索で高橋クリニックを探し来院しました。(初診日:平成15年12月3日)

【当院での治療経過】
初診の時には、肛門が全く見えないほどの尖圭コンジローマです。これから説明するほど治療に難渋すると思ってはいなかったので、残念ながら初診の写真撮影はしていません。
●12月3日~平成16年4月14日まで、治療としてお薬(2種類を時期をずらして)の内服と私の考案した軟膏を塗っていただきました。
一般的には、これでだいぶよくなるのです。しかし尖圭コンジローマの腫瘍表面が平滑になり腐敗してきたのですが、腫瘍ボリュームは小さくなりません。
●平成16年2月9日治療途中所見
性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y0209.jpg

●平成16年4月15日~5月15日まで週1回の間隔で5回、ポドフィリン塗布治療を行いました。一塊であった腫瘍は少しづつバラバラに小さくはなりましたが、まだまだです。

●平成16年5月31日に仙骨神経ブロック麻酔で、電気焼灼手術を行いましたが、わずかに小さくなったのみで腫瘍はそのままです。(手術直前・手術直後)
性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y0531.jpg 性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y05312.jpg

●平成16年6月8日に仙骨神経ブロック麻酔で、レーザー光線照射を行いました。手術後、腫瘍は半分になりました。(手術直前・手術直後)
性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y0608.jpg 性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y06082.jpg

●平成16年7月5日に同じ麻酔で、レーザー光線照射と電気焼灼手術の併用治療を行いました。この治療で腫瘍は80%は消えました。
性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y0705.jpg 性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y07052.jpg

外来で腫瘍縮小の経過を見ていたところ、HIVを定期的にチェックしていた病院で、患者さんの肝臓に直径5cmのアメーバ赤痢膿瘍が3個見つかり、肝臓ドレナージ治療のために入院なさいました。

●平成16年9月15日退院後初めての診察で、あれ程手を焼いていた尖圭コンジローマが小さいのが2個になっているではありませんか!当日に同じ麻酔で、電気焼灼手術を行いました。

●平成16年9月29日肛門には尖圭コンジローマがきれいに消滅していました。全く健康な肛門になりました。
性器画象です。自己責任でご覧下さい。condy14591a40y0929.jpg

【総合評価】
肛門の尖圭コンジローマでこれほど苦労した経験はありませんでした。初診日から治癒の9月29日まで10ヶ月もかかりました。その間、ポドフィリン治療が5回、手術治療が4回です。治療を行う医師も治療される患者さんのどちらにも根気と粘りが必要でした。しかし、なかなか治らないにもかかわらず、私の治療を信用して患者さんがついてきて頂いたのには感謝の言葉もありません。
治療後の肛門は、変形も狭窄も傷も瘢痕もなく、正常な肛門です。上述の経過をみると、一気に手術治療できないものかと思われるでしょう?できないことはないのですが、一気に手術を行うと肛門に後遺症を残してしまうのです。遅々として進まない治療ですが、石橋をたたいて渡るが如く、「ウサギとカメ」の亀の如く、治療するのが最良と私は信じています。医師と尖圭コンジローマのヒトパピローマウィルスHPVとの長い戦いにほかなりません。

【注】 患者さんのご好意により写真を掲示しています。特にHIVで悩む患者さんに少しでもお役に立つようにと、この患者さんの心からのお願いです。

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コメント

1枚目の写真の腫瘍の周りにある白いブツブツもコンジローマですか?

【高橋クリニックからの回答】
分かりません。可能性はあります。

投稿: さとし | 2008/01/24 19:37

1枚目の写真の腫瘍の周りにある白いブツブツもコンジローマですか?

投稿: さとし | 2008/01/24 19:39

患者番号14591さんの1枚目の写真の腫瘍の周りの小さいブツブツは治療していく間に消えたのですか?

【高橋クリニックからの回答】
はい。

投稿: さとし | 2008/01/26 01:37

腫瘍の周りの小さい白いブツブツはフォアダイスの可能性もありますか?

【高橋クリニックからの回答】
何とも言えません。

投稿: さとし | 2008/01/26 11:20

先生が見るかぎり1枚目の写真の紫の腫瘍の周りの小さい白いブツブツはなんですか?

【高橋クリニックからの回答】
分かりません。
粘膜の反応かも知れませんし、尖圭コンジローマの子供かも知れません。

投稿: さとし | 2008/01/26 14:10

写真のような白いブツブツが普通に肛門にできるときもありますか?

【高橋クリニックからの回答】
はい。

投稿: さとし | 2008/01/26 17:01

お願いします。
1つだけ質問させてください。
フェラ、クンニ、ディープキスなどのオーラルセックスでもHIVに感染してしまうのですか?

投稿: はな | 2008/02/19 17:41

1つだけ質問追加させてください。

HIV患者が使っていた血などのついているピアスなどからも感染してしまうのですか?
また血やHIVウイルスを多く含んでいる液なら少量でも感染してしまうのですか?

【高橋クリニックからの回答】
分かりません。

投稿: はな | 2008/02/19 19:45

どこかのサイトで見たのですが、HIVウイルスは空気にふれただけで感染力は失われてしまうのですか?

【高橋クリニックからの回答】
おそらく。

投稿: 簗田 | 2008/02/19 19:51

ひつこくてすいません。
血がついているとピアスとかカミソリからの感染はあるのですか?
またピアスやカミソリなど日常生活でも気をつけたほうがいいのですか?
【高橋クリニックからの回答】
ありません。

投稿: はな | 2008/02/21 10:25

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