脂肪・コラーゲン注入の悲劇
ある日、他の医療機関で陰茎増大手術をされた患者さんが当院に相談にお越しになりました。そこで、患者さんのお腹の脂肪を採取して、陰茎に移植する手術です。通常は陰茎の組織の中に均一に拡散すると思われていたのですが、一か所だけに集まった形になってしまいました。実際に拝見すると、陰茎の背部が盛り上がって突出しているのです。まるでヒトこぶラクダのようでした。
手術で助けてあげることにしました。触診でこのコブは固くなっていて、陰茎海綿体とは癒着していないようです。
そこで、デザインをして切除に取り掛かりました。
手術時間は2時間ほどかかり、何とかコブを除去しました。
手術前の比較して、姿が正常になりました。亀頭直下の右に脂肪の粒が点在していたので、その部分は電気焼灼手術で蒸散させました。 取り除いたコブは、亀頭近くの部分には明らかな脂肪組織でしたが、コブのほとんどを線維組織で充満していました。おそらく患者さんから吸引した脂肪組織はわずかで、その中にコラーゲンを混ぜてかさを増して注入したのでしょう。悪徳業者による仕業です。
【後日談】
患者さんが受けた手術を執刀した人間が医師ではなかったということが後日判明しました。暴力団の手下で、初めは事務長としてアルバイト医師の助手で手伝っていました。ところが、暴力団本部の意向で、クリニックの収入を上げなけれなならないので、見よう見まねで覚えた事務長が偽医師で手術をしていたのです。医師へのアルバイト料を減らすためだったのです。
そして、警察も捜査に乗り出しました。6月14日、患者さんの要望で警察から二人の刑事が来院し、患者さんのカルテと手術中の写真を証拠物件として採用されました。
医師法違反のこの偽医者は逃走中らしいとのこと。逮捕されて厳罰を・・・。
7月9日、再度刑事さんが来院し、切除した組織の判定のために、医師の私が部分的に科捜研に提出することになりました。
【後後日談】
陰茎の手術は成功しましたが、亀頭が痛いのです。その理由は亀頭に注入されたコラーゲンが原因だったのです。しかし手術で亀頭の海綿体のコラーゲンを取り除くことが出来ません。そこで患者さんは、お金のない犯人わや訴えることが出来ないので、名古屋の耳鼻科医師を告訴しました。実は、この医師が暴力団に医師免許を貸して、東京の青山で開設した協力をしたのです。医師免許を貸した代わりに高額の現金を毎月受けていたのです。……ところが、亀頭の痛みの原因が私の修正手術が原因と逆に訴えて来たのです。そこで、私までもが裁判に承認として出頭したのです。
【後後後日談】
名古屋の形成外科の医師も加わり、私の手術がミスしたから亀頭が痛くなったのだと私を追求して来ました。私は手術の際の写真と手術の詳細をレポートにして、裁判官に提出しました。そして証言台に立ち、いろいろ質問されました。……結果、私の責任はまったくなく、耳鼻科の医師が裁判で負けました。その後、耳鼻科の医師と協力した形成外科の医師の2人が、実は暴力団と密接に関与していたことが判明して、二人とも逮捕されたのです。その後、時間の経過とともに患者さんの痛みはなくなりました。実はこの患者さんは、内科の青年医師だったのです(笑)。医師なのに、手術をした偽医者をどうして見抜けなかったんだと、私は少しばかり怒ったのでした。今は元気に開業されています。