包茎手術の後遺症?「亀頭過敏症」
他院で実施した包茎手術後に、「亀頭が痛い」という相談が同日に立て続け2件あったので、ここで紹介しましょう。
一人目は、去年の7月28日に包茎手術を行ったのですが、半年以上も経過した現在も下着に触れただけで亀頭が痛いというのです。
他の泌尿器科を受診しても痛みが治らないのです。
実際に私が亀頭を拝見しても外観上特に異常を認めません。包茎手術の傷も許容範囲のきれいなものです。診察の際に亀頭や縫合部を触れて痛みの程度を確認するのですが、診察の短時間の間に痛いと感じる時もありますし、痛くない時もあります。痛みの感覚が一定ではありません。
二人目は、電話無料相談の方です。
去年の10月に他院で包茎手術しましたが、4か月も経過しているのに亀頭の痛みが取れないというのです。一般的に真性包茎の患者さんの場合、亀頭を露出したことがないので包茎手術後、亀頭の過敏で苦しまれることはありますが、長くても1ヵ月でしょう。4カ月経過しても痛みがあるのは原因は包茎手術とは無関係です。
包茎手術の際に、亀頭部の感覚神経を切ったり傷つけることはありません。なぜなら感覚神経の走行は陰茎の最深部にあり、陰茎海綿体白膜を露出するほど深い所にあるからです。包茎手術の包皮切除程度では、その神経を切ることはあり得ないのです。
では、なぜ痛くなるのでしょうか?
右の画像は一人目の患者さんの超音波エコー検査画像です。
左が下部尿路(膀胱・前立腺)を側面から観察したもの、右が下部尿路を正面から観察した画像です。
この画像を示されても、画像診断専門医や泌尿器科医でさえ分からない方がいますので、下に注釈をつけた画像を提示します。
この画像で注目しなければならないのが、膀胱三角部の存在です。
膀胱三角部は左右の尿管口と膀胱出口の3点で形成された膀胱の三角形の部分をいいます。膀胱の一部ですが、発生学的には尿管組織の延長上の組織になります。(この事実を知らない医師は多い)尿管の組織ですから、膀胱の他の部分に比較して鋭敏です。ですから膀胱三角部を膀胱の感覚センサーといわれる所以です。
この膀胱三角部は通常超音波エコー検査ではほとんど描出されません。しかし排尿障害が潜在していると、次第次第に肥厚していきます。この患者さんの場合、膀胱三角部は約0.7ccの体積を有しています。
正常であれば、膀胱三角部の容積は限りなくゼロです。容積として認識できるということは、膀胱三角部の役割が重要であることになります。膀胱三角部が過敏であれば、頻尿・残尿感などの本来あるべき下部尿路症状が出現します。この患者さんの頻尿はそれほどでもありません。すると脊髄では膀胱三角部からの情報を十分処理できなくなります。仕方がなく、膀胱や前立腺とは無関係の知覚神経を脊髄レベルで刺激するようになります。それが「亀頭の痛み」となる訳です。
治療は排尿障害の治療を行います。α-ブロッカーという薬剤が前立腺・膀胱出口・膀胱三角部の緊張を緩めてくれます。すると膀胱三角部からの情報量が減り、関連痛の「亀頭の痛み」が減るのです。もちろん患者さんの全員に効果があるとは限りません。
100例ほど症例が集まったら、「膀胱三角部過敏症・膀胱三角部肥厚」というテーマで数年後には泌尿器科学会で報告するつもりです。
この考え方は、慢性前立腺炎の関連痛症状と同じです。興味ある方はそちらをご覧下さい。
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