早期抜糸法か吸収糸による自然脱落法か?
掲示板を読んでいたら、「包茎手術の抜糸を早めにすべきか、吸収糸がとけるまで待つべきか」という議論が掲載されていました。どちらの方が、傷がきれいになるかという論争です。
一般的に形成外科や美容外科では、早めに抜糸する方が傷がきれいになるとされています。教科書的にもそのような記載があり、私もそのように思います。しかし、これは一般的な縫合の仕方の場合に限ってです。
【図:標準形成外科学 医学書院から】
一般的な縫合とは、一針一針、縫ってはしばり縫ってはしばりの方法です。これを単一結節縫合といいます。この方法は皮膚をしっかりしばるので、血行が悪くなり縫い目の跡ができてしまいます。そのため、傷跡が残らないようにと手術後5日~7日の抜糸が薦められます。早く抜糸すれば血行が回復するので、傷跡が残らないという考え方です。縫合糸も組織反応を誘発する吸収糸でなく、組織刺激のないナイロン糸が推奨されます。
これを読んで、「なるほどなるほど」早く抜糸すべきだと思えるでしょう?しかし、よく考えてみてください。4日間もしっかりしばられて、その後に抜糸したからといって、しばられた部分(赤く着色の範囲)の皮膚の血行が簡単に回復するでしょうか?絶対に回復しません。瘢痕として残るだけです。図ではやんわりと合わせているように見えますが、実際はきつく結んでしまうです。なぜかというと、勃起する時に皮膚が引っ張られて、傷が開かないようにと、しっかりしばるのです。
【図:標準形成外科学 医学書院から】
さて、私は連続縫合を多用します。連続縫合は、しっかり結ばないで、皮膚と皮膚を合わせるだけです。ですから、血行を遮断することがほとんどありません。血行を遮断しなければ、皮膚組織は生きていますから瘢痕にはなりません。傷も付きにくいのです。
傷ができるもう一つの原因として、傷を開くように引っ張る力(張力)が縫合部の皮膚に働くことです。この張力を防ぐために、縫合する訳ですが、抜糸すればダイレクトに傷に張力がかかり、傷の細胞が増殖して瘢痕になるのです。その対策として、抜糸後、傷表面にテープを貼り張力負荷を防ぐのですが、表面だけの対策なので皮下組織にまでは及ばず、やはり傷になるのです。
【写真:包茎手術直後の縫合部】
吸収糸で溶けて自然脱落するまで(約1ヶ月間以上)放置するのは、この間、張力が傷にかからないようにできるからです。傷は1ヶ月も経過すれば、安定・固定し、しっかりした皮膚になります。その間、張力負荷がかからなければ、傷の異常増殖=瘢痕にはならないのです。
【写真:連続縫合の拡大図】
吸収糸によるユルユルの連続縫合の放置は、①皮膚の血行を維持し、②傷にかかる皮膚の張力を弱めるので、傷がきれいになるという仕組みです。右の写真をご覧下さい。包皮の内板と外板の合わせ目はピタッと接していて自然です。どちらの皮膚にも力がかかっていないのが分かりますか?強くしばっているようには見えないでしょう?
また、吸収糸の組織刺激による弊害は、今の2つの有益性と比較して、はるかに小さく無視できる有害性です。そのような有害性を誇張し、ナイロン糸での縫合・早期抜糸の優位性をことのほか強調するのは、「金の亡者」のたくらみに一般人がまんまと洗脳されたのでしょう。
【写真:連続縫合、手術後2週間】
上記の患者さんとは別の方ですが、包茎手術後2週間の縫合部の状況です。吸収糸は細く白くなっています。皮膚の色は正常で、血行の良さを感じられます。
「私が忙しいので、手を抜くために抜糸の手間を省いている」と誤解されている方がいるようです。たかだが2~3分の抜糸の手間は、省く価値もありません。
まとめると、単一結節縫合は、早期抜糸が傷にとっては重要です。しかし、張力問題は解決できません。連続縫合は、吸収糸の自然脱落が有益です。血行・張力問題のどちらも解決できます。
医学書院の臨床泌尿器科という泌尿器科専門雑誌の特別号に、出版社からの依頼で上記のことを含めて私が執筆する予定です。来年の2月頃には、このブログで紹介します。お楽しみに。
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