第1,111話 「無駄な話し」
10年以上前から、ブログを書き続けています。もともと私は三日坊主だったので、どうせ途中で止めるだろうと思っていました。記述する事を思いつかなければ当然です。ところが、延々と10年以上も続いたのです。コツコツと同じことを続けることが、実は好きなんだと思うようになりました。自分の興味あることは、続ける才能があることに気がついたのです。興味のないことは続けられないのです。おそらく、上司の指示でやらされる仕事、例えば、書類の整理や営業などもできなかったでしょう。会社勤めのサラリーマンだったら、窓ぎわ族で定年退職か、早期退職を迫られていたかもしれません。
大学病院に在籍していた頃も、臨床現場で患者さんや手術のテクニックを覚えるのがやっとで、とても研究に興味を持つことができませんでした。当然、大学内での出世は見込めるわけもなく、助手→講師→准教授→教授という皆が憧れる出世はあきらめました。
ところが、大学を退職し救急病院に勤務して得られた新たな知識や体験は、自分の人生に多大な影響を与えてくれました。その自信が開業医へにつながる勇気になったのかもしれません。
開業医して毎日の忙しさの中で心に余裕がありませんでした。整形外科の患者さんはがほとんどで、レントゲン・リハビリ・整体術を毎日行っていました。……そのうち、『私は何が専門?』と思うようになり、自分の専門をリセットしようと思い、まず初めにブログ「泌尿器科の常識と盲点」を作りました。記事を書いているうちに、書きたいことが増えてしまい、サイトを10個に増やしました。
トワイライト・ゾーン、代替医療の光と影、前立腺肥大症、包茎と手術、慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、性行為感染症、フォアダイス、そして「開業医こぼれ話」です。
初めの頃は、各テーマ別に記事を書いていましたが、考え方に限界を感じるようになりました。そこで、最近では、まず思いついたら「開業医こぼれ話」に記事を書き、その後に各テーマ別に振り分けるという体制を取ることにしました。その結果、このブログが写真のように1,111話になりました。コツコツ続けると、ここまで書けるのです。書いている本人もビックリです。
さまざまなテーマで書いていますが、大した意味のない事も切々と書いています。意味のない事=無駄な事を書いても効率が悪いとお思いでしょう?しかし、無駄な事を考えながら書くことに意味があるのです。過去のブログで掲載しましたが、アリの世界では、優秀なアリばかりでは、餌の獲得効率は悪くなるそうです。無能なアリが一定の割合でグループに存在すると、餌の獲得効率が高くなるのです。優秀と言うのは、アリの世界や常識の範囲内だけのことです。ところが、無能なアリは、非常識の想定外の行動をするので、想定外の結果で出るのです。
今の日本社会は、効率!効率!効率!と言って自社の社員を次々にリストラしAI化に向かっています。優秀な人材ばかり集めAI化した会社の魅力はまったくなく、将来は素人でも想像できます。オートメーション化した工場と同じです。名人やユニークな人材は生まれません。これは、優秀なトップが考えそうなワンパターンの思考の結果です。
大学病院に残っている医師たちは、ほぼほぼ優秀です。常識に則った優秀さですから、教科書的範囲のことしか考えません。そのため、一定の割合で治せない患者さんが出てきます。その患者さんたちが、優秀ではない、発想がユニークな私のクリニックに訪れるのも仕方がないことでしょう。
「無駄な事」を考え言葉を選び書いているうちに、想いも寄らないアイデアやヒラメキが浮かぶのです。今回も無駄なお話しです。