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単球・モノサイトの不思議

Ketueki14_20200918100401    免疫のリンパ球のひとつに単球・モノサイトがあります。モノサイトは、変身するとマクロファージ(大貪食細胞)になります。マクロファージは、ウィルスやバイ菌を食べて分解します。そして壊れた体内の細胞や死滅した細胞、ガン細胞も食べて処理するのです。ある意味で「お掃除細胞」なのです。

 モノサイトは、その他にも樹状細胞にも変身するのです。樹状細胞は、ウィルスやバイ菌を食べると、その情報を免疫のT細胞に伝達して、免疫を補強するのです。これを抗原提示細胞と言います。そして鼻粘膜や口腔粘膜に存在して、外部から侵入したウィルス・バイ菌の情報を早期にチェックするのです。マクロファージにも、この作用を少なからず持っています。

 血管壁の内膜にLDLコレステロールが蓄積すると、モノサイトが内膜に侵入してマクロファージに変身してLDLコレステロールを貪食します。血管壁の中膜から別のマクロファージが出て来て、やはりLDLコレステロールを食べます。このマクロファージは、実は中膜に存在する平滑筋なのです。マクロファージは、モノサイトと平滑筋が変身して出来上がるのです。

 これは不思議ですね。免疫のリンパ球であるモノサイトと、血液壁や内臓の構造を形成する平滑筋が、同じマクロファージに変身するのは、何を意味しているのでしょうか?

 さらに平滑筋は、コラーゲン線維を作ってマクロファージの最終段階の泡沫細胞を固定するのです。つまり平滑筋は線維芽細胞にもなるのです。これが動脈硬化の本質です。

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 これから考えると、モノサイトは、マクロファージと樹状細胞に変身し、筋肉である平滑筋は、マクロファージと線維芽細胞になるのです。もしかすると、血中の中を流れているモノサイトは、変身しなければ作用のないリンパ球なのですが、実はモノサイトは「幹細胞」なのかも知れません。幹細胞はすべての細胞になる基本細胞なのです。イラストのように、血管壁の内皮細胞が何かの理由で死滅すると、その死骸を食べるのがマクロファージです。処理された後に、そこは空虚スペースになってしまいます。理論的な幹細胞が訪れる日まで、どのくらいかかるか想像も出来ません。マクロファージに食べられると、そこはない空白ができます。そこにモノサイトが接着して、内皮細胞に変身するのだと私は思っています。

 私は次のように考えます。マクロファージが壊死細胞を食べている際に、その情報を近くにいるモノサイトに伝達するのです。伝達を受けたモノサイトが人体の血流に乗って何周か回っているうちに、欠如している場所に着陸して新たな移植として再生するのでしょう。

 

モノサイトが、実は幹細胞だとすると、その定義は下記の通りです。 

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【幹細胞の定義】幹細胞(かんさいぼう、stem cell)は、分裂して自分と同じ細胞を作る(Self-renewal)能力(自己複製能)と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞と定義されている。

しかし、採血した時に、これが幹細胞だと証明は出来ません。実験プレートに採取した血液を入れ、培養後、細胞分裂の細胞が発見されると、幹細胞と診断できるのです。すぐには外観だけでは診断できないからです。もしかすると、幹細胞の存在は不確かです。それよりも、単球・モノサイトは容易に発見でき、さらに、マクロファージや樹状細胞に変化します。また、平滑筋までもが、マクロファージや線維芽細胞に変化する事から、実は平滑筋もモノサイトの別の顔なのかもしれませんね。

 

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