10年前の患者さんからのお礼のお電話
先日、10年前の患者さんから、お礼のお電話を受けました。初診しか訪れなかったご婦人です。
10年前に来院したのが、陰部に発生した尖圭コンジローマという性病の疑いでした。それまでに何か所もクリニックに行きましたが、尖圭コンジローマと診断され、治療薬であるベセルナクリームを塗布しても、まったく治らないので、とても悩み続けた患者さんでした。
私は婦人科医でもなく性病科専門でもなのですが、いろいろな誤診される病気についてブログに記載していました。それをお読みになり来院したのでした。さっそく拝見すると一目で、「尖圭コンジローマではない!」と患者さんに告げました。患者さんはビックリされました。そしてすぐに涙を流しながら喜ばれました。
陰部に出来たブツブツを一般の医師は尖圭コンジローマと単純に判断するのです。ご婦人の陰部にできるブツブツは尖圭コンジローマだけではありません。他に、単なるイボ、膣前庭乳頭症、湿疹・丘疹などがあります。この患者さんは膣前庭乳頭症でした。膣前庭乳頭症は性行為によってご自分の膣の細胞が剥がれて、外の陰部の壁に自己移植したためにできるのです。病理検査されると、正確に判断できない病理専門医が、膣壁の細胞を尖圭コンジローマだと誤診するのです。
患者さんはホッとして帰宅されました。後日、精神的に気持ちが回復し、結婚もできお子さんも生まれたそうです。ご主人の仕事で海外に長期間お住みになり、最近帰国されたそうです。そしたら急に過去の事を思い出され、どうしても私にお礼が言いたかったと電話をかけられたのです。医師としてとても
膣前庭乳頭症と尖圭コンジローマの違いを解説します。この写真は、尖圭コンジローマの病理写真です。白っぽい細胞と、中にいびつな核が確認できます。この白い部分がヒトパピローマウィルスHPVの塊りです。細胞の核の中にウィルスが侵入して、ウィルスをたくさん作ります。そして核を破壊して細胞内に放出するのです。結果、核が壊れて歪(いびつ)になるのです。
この写真は膣前庭乳頭症の病理写真です。尖圭コンジローマと同じように、白っぽい細胞と、今度は丸い核が見えます。白っぽい部分が、グリコーゲンなのです。元々は膣壁の細胞ですから、膣を守るために乳酸菌を培養するのです。そのために、膣の細胞はグリコーゲンを作り乳酸菌を育てるのです。
イラストで膣前庭乳頭症と尖圭コンジローマの病理学的違いを示しました。グリコーゲンの満ちた膣細胞と、ヒトパピローマウィルスHPVが満ちた尖圭コンジローマの感染細胞は似ていますよね。それで病理の専門医が誤診してしまうのです。このイラストは私が考えたものです。病理の専門医ではなくても、真剣に事実を発見しなければならないのです。ワンパターンの診断で悲しむ患者さんはたくさんおられます。
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