α1の受容体の分布
排尿障害の患者さんに、α1ブロッカー(ユリーフ・ハルナール・フリバス)を処方しても、効果が確実に得られる人もいれば、効果の得られない人もいます。その原因について考えてみましょう。以前にα1受容体のサブタイプや、ムスカリン受容体・β3受容体の分布について解説致しました。α1受容体にも分布があるのです。
排尿障害の理由は、膀胱括約筋が十分に緩まないのが原因です。この膀胱括約筋を緩めるのが排尿障害を改善するのです。しかし、排尿障害を自覚していないと、膀胱括約筋が肥大したり、前立腺が肥大したり(前立腺肥大症)、膀胱出口が硬くなったり(膀胱頸部硬化症)すると、器質的に硬くなるので、α1ブロッカーで十分に緩めることが出来ないのです。そのため、前立腺が大きければ、前立腺肥大症として内視鏡手術されたり、前立腺が大きくないと、慢性前立腺炎や神経因性膀胱と診断されたり、「気のせい」「歳のせい」と診断されるのです。ご婦人の場合は、前立腺は無いので、膀胱頸部硬化症になりますが、一般的には間質性膀胱、過活動膀胱、神経因性膀胱、「気のせい」と診断されてしまうのです。
前立腺肥大症の人の場合は、α1ブロッカーと一緒に、アボルブを処方して、前立腺を小さく柔らかくするのです。前立腺が大きくなく慢性前立腺炎・神経因性膀胱と診断されてしまった人にも、前立腺を柔らかくするためにアボルブを処方します。膀胱出口が硬い人の場合は、α1ブロッカーを長期間服用して頂いて、次第に柔らかくなるのを待ちます。時間が待てない人には、仕方がないので内視鏡手術をします。
さて、これ程いろいろ考えて治療しても効果が出にくい人がいます。その理由は、α1受容体が膀胱括約筋に十分に分布していないと考えられるのです。その場合は、α1受容体のサブタイプが、Aタイプだけの場合は、ユリーフしか効きませんし、Dタイプだけの人の場合は、フリバスしか効きません。またα1受容体の分布が膀胱括約筋に少ないと、α1ブロッカーが効きにくいのです。その場合には、頻尿症状が無くとも、前回解説したムスカリン受容体やβ3受容体が膀胱出口や膀胱括約筋に分布していれば、頻尿が無くとも、過活動膀胱の治療薬である抗コリン剤やβ3作動薬で排尿障害が軽快します。
α1ブロッカーであるユリーフ・ハルナール・フリバスの単独投与だけでも頻尿が軽快する患者さんがいます。その理由は、頻尿を作る膀胱三角部にもα1受容体が分布しているからです。つまり、α1受容体の分布が広い人の場合には、α1ブロッカーだけでも頻尿が抑えられるのです。
ところが、当然ながらα1ブロッカーを処方しても、排尿障害は改善しても、頻尿がなくならない人もいます。その理由は、α1受容体の分布が膀胱出口=膀胱括約筋だけに分布しているからです。
排尿障害を改善するα1ブロッカーを処方しても排尿障害が改善いない人もいます。それはα1受容体にも、分布が膀胱出口=膀胱括約筋に分布していないからです。しかし、頻尿が改善する人はいます。
患者さんはいろいろな体質の人が存在して、ワンパターンではありません。ですから、さまざまなパターンを想像して、患者さんを診察しなければなりません。ワンパターンの病気を診るのではなく、さまざまなパターンの患者さんを診るのが、医師の役目です。
| 固定リンク
コメント