« 傍外尿道口嚢胞(オシッコの出口の水袋) | トップページ | 血液細胞の謎 »

生活習慣病

 内科系の病名で、「生活習慣病」と言うのがあります。生活習慣病には、肥満症、高血圧、糖尿病、高脂血症(高コレステロール、高中性脂肪)、閉塞生呼吸器疾患などいろいろです。しかし、生活習慣病のほとんどが、罹患した患者さんの家族の血すじ・体質なのです。……でも、一般の人が、この病名を聞くと、『暴飲暴食』・『何もしないで寝てばかり』・『ご飯や糖質を摂り過ぎ』と思われて精神異常と誤解されるのです。

 聖路加国際病院の日野原重明 院長が命名したのが、この病気でした。そそれまで以前の病名は「成人病」でした。自分勝手な生活習慣を抑制すると、病気が発症しにくいから付けられた病名です。でも一般の人が聞けば、「真っ当な日常生活をしないで、ひどい生活しかしないから、こんな病気になってしまうのだ!ざま〜みろ」と思われてしまうのです。正確には間違った考え方です。

Seikatu8  人間を含めて全ての哺乳類は、大昔には、常に食べ物が得られていた訳ではありません。草食動物は草を食べるのですが、気候の変動で草木が枯れてしまうことは、しばしばでした。その際には、何十キロ何百キロも延々と集団で歩き続けて、草木が存在する場所を探し出すのでした。当然ですが、空腹に苦しみながら歩き続けていました。原始人は狩猟をしながら生活していました。毎日獲物が取れる訳ではありません。2週間に1回程度しか獲物が取れなければ、毎日十分に食事が出来る訳ではありません。食べ物が得られれば、お腹いっぱいに食べる習慣ができてもおかしきはありません。そのような状況が生きている間に何回も起きれば、食べ物を見つけた時には「チャンスだ!」と腹いっぱい食べるでしょう。

Seikatu7  また、日本人は炭水化物の「お米」を石器時代頃までは食べていませんでした。中国大陸から知り得た「稲作」を縄文時代から栽培を始めて、初めてご飯を食べるようになったのです。炭水化物であるお米を食べると、すぐにブドウ糖に変化して、即エネルギー源になるのです。当然すぐに血糖が高くなるのです。今の日本人は当然に糖尿病になります。しかし当時は1日の歩行距離が5里(20キロメートル)ですから、エネルギーとして血糖はすぐに利用できて元気に行動できました。血糖がすぐに低下しますから、糖尿病にはならないのです。現代人は毎日20キロメートルも歩きませんから、結果、糖尿病になるのです。

 哺乳動物の進化のトップが人間ですから、何十億年も作られた体質が、簡単には治りません。当然、美味しそうな食べ物を見れば、お腹いっぱいに食べたくなるのです。そしてお米を食べたことの無かった日本人が、毎日食べれば糖尿病になってもおかしくはないでしょう。大昔から毎日起こる習慣であれば、当然として現代では、肥満症、糖尿病、高脂血症になるのは当たり前です。

 

Seikatu9_20200912174801  親が高血圧だと子どもも高血圧になりますし、親が糖尿病であれば子どもも糖尿病になりますし、親が高脂血症であれば子どもも高脂血症になるのは当然です。生活習慣を普通の人たちよりも制限しても、完全に病気を治すことは出来ません。血中コレステロールが高くなるのは、更年期を過ぎると、男性ホルモンも女性ホルモンが低下するので、それを補充しようとコレステロールが高くなるのです。何故かと言えば、全ての病気が本来の体質ですから、病気が発症しない訳がありません。

 生活習慣病の患者さんに対して、医師やそうではない人たちは『チャンとした生活をしないからだ!』『いい加減な生活をするからだ!』と軽蔑するのです。医師も考え方を変えて、前述のように、代々伝わる体質ですから、長生きするためには、本来の個人の自由な意思での生活習慣を制限して「頑張ってくださいね」と患者さんにアドバイスすべきでしょう。

私の父や叔父が糖尿病で、当然として私も弟も糖尿病になってしまいました。医師になった私が、父と同じに脳梗塞で早死にするのでは恥ずかしいですから、懸命にいろいろ努力して、さらにインスリン注射をしました。逆にインスリン注射の副作用で慢性腎不全になり、最後は血液透析中の私です。生活習慣病に負けてしまった私が考えたお話しです。笑ってお読みください。

|

« 傍外尿道口嚢胞(オシッコの出口の水袋) | トップページ | 血液細胞の謎 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 傍外尿道口嚢胞(オシッコの出口の水袋) | トップページ | 血液細胞の謎 »