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脳梗塞が繰り返す理由

前回の「多飲の弊害」の記事の反応で、脳梗塞・脳血管障害や心筋梗塞・心臓の病気の生活習慣として、「毎日2リットル以上の水分を摂取しろ」と言っています。、

C278436306ce455f87fce6febf72984f    芸能人で有名なコント55の坂上二郎さん、YMCAで有名な歌手の西城秀樹さんは、脳梗塞を何回も繰り返してついにはお亡くなりになりました。

 脳梗塞と心筋梗塞は発症すると、一定の確率で再発するのです。脳梗塞は5年後に35%、10年後には50%の確率で再発するのです。同じ動脈硬化が原因の病気としては、心筋梗塞があります。ところが心筋梗塞の発症後1年では再発はゼロ、5年後では5%、10年後では20%にしかなりません。同じ動脈硬化が原因の病気であるのに、不思議だと思いませんか?

B833fff5df014224b613bac54694547f  どう考えても逆ですよね?心臓のように毎日87,000回以上も収縮・弛緩を繰り返している物理的活動的な心臓の病気である心筋梗塞の10 年後の再発率が20%で、ジ〜っと動かない脳の病気である脳梗塞の10年後の再発率が心筋梗塞の2倍以上の50%はおかしいと思いませんか?その理由は、治療の違いです。共通の生活習慣が血液をサラサラにするために水分をたくさん飲むことを指示されます。また、共通の薬が同じく血液をサラサラにする抗血小板薬、例としてバイアスピリンです。

 Bimi さらに心筋梗塞だけが、血管拡張剤であるニトログリセリン系統のお薬を処方します。ニトロ=心臓の薬ですから、脳梗塞には使用しません。これが再発率を低下させているのです。

 ニトロはなぜ心臓に薬として作用するのでしょう。ニトロは元々は爆弾の原料だったのです。これを考えたのが、有名なノーベル賞作ったノーベルだったのです。元々は鉱脈などに使用する破壊道具だったのです。それを世界大戦に使用されて殺人道具の爆弾として世界中に使用され多くの人々が死んだので、ノーベルはニトログリセリンを発明した事を後悔しました。

 ニトログリセリン工場の工員たちの中で、狭心症の人間が何人もいました。そして、工場を休んでいる時に限って狭心症発作が起きるのですが、工場で仕事をしていると狭心症発作が起きないのです。多くの実例があることから、狭心症や心筋梗塞の予防薬としてニトログリセリンが使用されるようになったのです。しかし、その効果のある原因は21世紀になるまで不明でした。ノーベルも狭心症の病気があったのですが、ニトログリセリンの後悔があったので、薬としてはかたくなに使用しませんでした。

 ニトログリセリンは、皮膚や内服で体内に吸収されると、代謝で一酸化窒素NOに変化するのです。一酸化窒素は全ての細胞内に存在して、細胞の緊張を緩める作用があるのです。動脈硬化が原因で、動脈が狭くなったり、血栓が作られてしまい、狭心症や心筋梗塞になるのです。その動脈壁に存在する平滑筋を一酸化窒素が緩めるので、血流が正常化して、狭心症や心筋梗塞を防ぐ事ができるのです。

 脳梗塞も動脈硬化で血流が狭くてジェット流になるので、繰り返し血栓が作られて、その結果、繰り返し脳梗塞が起こるのです。水分をたくさん飲んでも、血液は体内の内部環境ですから、一定で薄くはなりません。もしも薄くなったとすると、血流はさらに速度が速くなり、ジェット流もさらに速くなるので、血栓がたくさん出来てしまい、梗塞の頻度が増してしまうのです。

Mijet1  このイラストは、正常の動脈と、動脈硬化のある動脈を示しています。動脈硬化によって 内腔が狭くなり、血流がジェット流になります。すると動脈硬化の後ろに渦が生じます。

Mijet2  その結果、渦のある場所に血栓が出来ます。時間が経過すると、その血栓が剥がれてしまい、末梢の細い血管に飛んで行き、脳梗塞・心筋梗塞が起きるのです。

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 では、ニトログリセリンを投与すると、平滑筋の緊張が緩み、動脈が拡張します。すると、動脈硬化で内腔が狭くなっている場所も広くなるのです。そのお陰で、ジェット流が遅くなり、血栓が作られにくくなるのです。その結果、梗塞の発生率が低下するのです。したがって、心筋梗塞だけでなく、脳梗塞にもニトログリセリンを使用すれば、脳梗塞の再発率は低下するはずです。 ニトログリセリンの代替えとして、ザルティアもオススメです。ザルティアは細胞内の一酸化窒素NOの分解を制限して、一酸化窒素の継続時間を長くする作用があるのです。

 

 水をたくさん飲めば、脳梗塞や心筋梗塞が防げると思っている医師はバカです。飲めば血液がサラサラになり、血栓や梗塞ができなくなると単純に考えるのは、とても医師とは思えません。坂上二郎さんや西城秀樹さんは、ある意味で被害者であると私は思います。

 

 

 

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