人生はプラス・マイナス・ゼロ
人の人生はさまざまです。私は泌尿器科医師なのに、泌尿器科の専門領域の腎臓が、ダメになって、今は透析をしながら生きています。決して充実した人生ではありません。
泌尿器科と言っても、外科系ですから、腎臓ガンや腎結石や腎嚢胞や腎臓生検などの手術はたくさん経験しましたが、腎臓の内科的診察はしていませんでした。まさか、この俺が腎不全→透析になるとは思ってもいませんでした。
友人で日本の臓器移植ネットワークを作り上げた東大出の山川和夫先生は、専門は心臓内科の医師でした。すると、58歳の時に心臓が原因で急死したのです。人の為に懸命に活躍していた人間でした。私がエコー検査の能力が高くなったのは、山川先生のアドバイスのお陰です。
生前、山川先生の奥様が二人目を妊娠して、性別を鑑別してくれと彼に頼まれました。『え〜』と思いましたが検査しました。結果、男の子と診断しました。数ヶ月後に出産したら、やはり男の子でした。良かった!その男の子は私立の医学部を卒業して医師になりました。☺️
親友で鹿児島に開業した倉内洋文先生は、毛筆が上手で郵政大臣賞を受け、歌が上手く芸大に勧められたのですが、鹿児島ラサール卒業後、現役で慈恵医大に合格して私と同級生になったのです。一緒に泌尿器科に入局したのです。彼の才能があり手術もやはりとても上手く、私が開業した後に、実家に鹿児島で開業したのです。彼の診断と手術が上手いので、九州全体に評判が拡散して、内視鏡手術を毎月25件も行っていました。インターネットで私に相談された九州の患者さんに倉内先生を紹介して、喜ばれました。………その彼が58歳の時に脳出血で突然死したのです。
私には医学部の四年生まで親友はいませんでした。ある時、同級生の学年代表たちから、今年の学園祭の委員長を頼まれました。しかし私は他人をリードする人間では絶対にあり得ないので、丁寧に断りました。その代わりに委員長の手助けは、必ずしますと言いました。後日、倉内先生が委員長になり、私が学園祭の会計になりました。それからの付き合いで、次第に親友になったのです。そして同じ女性が好きになったのですが、2人ともフラれたのでした(笑)
他の例として、膵臓ガンの手術が専門であった外科の教授が、膵臓ガンで亡くなりました。ガン専門の病院や研究施設の院長などは、ガンで亡くなっています。
私を含めて、たくさんの人生・生活クオリティを助けた人間には、ひどい負担がかけられると思えて仕方がありません。人を助ければ助ける程、自分の人生に負担がかかるのです。逆に自分の事しか考えない人生、例えば価値の無い趣味だけに興味のある人、お金儲けだけしか考えない人、女性が大好きで浮気ばかりしている人、ただ食欲だけの人、何にも興味を持たないで、パチンコだけをしている人などは、長生きなのです。90歳に近い人が、人のために人生を過ごさないで、まだ死にたくないと言っていた人もいました。
これから分かるように、他人をたくさん助ける人は、短命か私のように身体障害者になるのです。恐らくガンや事故や苦しい良性の病気は、もしかすると、神様が決めたその人への「人生の試練」なのかも知れないのです。それを一生懸命に治すことは、神様が作った試練を無くしてしまったので、神様からの罰として短命になるのかも知れません。私も原因不明の病気である間質性膀胱炎や慢性前立腺炎を手術でたくさんの人を治しました。その際に、患者さんに話したことがあります。「与えられた神様の試練を治してたので、神様から悪魔の手先と思われて天罰を受けるかも知れませんね」と話していました。それが現実化して、ガッカリでした。しかしながら、私は短命になったとしても、一生懸命に今の人生を続けます。そして、私が突然死したとしても後悔はしません。その際には、悲しまないで下さい。自分の使命を貫ぬき通したと思って下さいね。
イラストの線路移動装置ノーレは簡単な乗り物です。重量も軽くて安定しません。線路でこのノーレを利用して人生を過ごすと思って下さい。才能の豊かな人や多くの人を助ける人は、このノーレでスピードを出している人です。急カーブや極端な下り坂の場合は、ブレーキを頻繁に押さなければなりません。ところが魅力のある人は、ブレーキをしないで、そのまま通過します。何回も同じ状況になれば、ノーレ車が脱線・転倒しても不思議ではありませんよね。それで短命になるのです。自分の人生を少しでも長生きしたい方は、人のために生きないで、自分のためだけで生きて下さい。ノーレを頻繁にブレーキをしながら、人生をゆっくりと過ごすのです。人の命を助ける医師の平均寿命をご存知ですか?63歳なのです。そして私の友達のように50歳代で亡くなる医師は、医師全体の30%もいるのです☺️(笑)。
| 固定リンク
コメント
高橋先生
お世話になります。
不思議なものですね。「医師は自分の専門とする疾病にかかる事が多い」という伝説があるようですね。正確には統計学的調査が必要なんでしょうけど、ふと、見渡すと、そういう事って「あるなぁ〜」と主観的に感じます。最近、認知症のテストで有名なあの長谷川式知能スケールを創られた長谷川先生も嗜銀顆粒性認知症に罹患したと自らカミングアウトされていました。作家の北杜夫さんは精神科医で双極性障害でした。私ごとで恐縮なのですが、心療内科出身ですが、現在、慢性疼痛(非定型歯痛にて三環系抗うつ剤で治療中、膀胱頚部硬化症にて高橋先生にお世話になってます)や子供の頃は過敏性腸症候群、青年期には機能性ディスペプシア、壮年期にはうつと心身相関の強い疾病の宝石箱(笑)です。元々、心身症状に関心があって、心療内科を選んだという流れがあるので、本当の意味での特定の診療科から影響を受けて疾患に罹患したと言えないかもしれませんが、、、今は認知症の方々に対応しておりますので、50%で罹患すると考えられている認知症にならないように抵抗していますが、最近は生活習慣病とも言われているので、適切なダイエットをしようと思い、甘いものが大好きなんですか、1日あたりチョコレート300キロカロリーで耐えています。(笑)しかしながら、このコロナの外出制限で5Kgの体重アップしてしまい、めまいがします。愚痴になってきましたので、そろそろ失礼します。
また、近日の手術でお世話になりますが、どうぞ宜しくお願い致します。
(追記:高橋先生の校医のお仕事のご日程は問題ないという事で理解して当日参ります)
【回答】
はい。
投稿: YO | 2020/06/25 08:53
「その際には悲しまないで下さい。
自分の使命を貫き通したと思って下さいね。」
そのように仰られても、それは無理な話で我を忘れて泣き崩れる人は多くいらっしゃるであろうと思われます。私もその時は自分がどうなってしまうのか?考えると恐ろしいです。出来れば私は、高橋先生より先に死を迎えたいです。
高橋先生と巡り合わせてもらってからの私は、正に高橋先生に助けてもらいっぱなしの人生です。
高橋先生とのエピソードは有難いことに余りにも多く、
しかし、私がどうしても自分の子どもや孫など後世に必ず語り伝えてもらいたいと強く願っている事が一つあります。
それは、高橋先生は患者さん(私)を、見捨てないという事です。
私も高橋先生と意見が合わず衝突した事もありました。
また、他の患者さんが衝突されているのが偶然、聞こえてきた事もありました。
しかし、高橋先生は衝突した後、衝突した事に拘る事もなく、根に持たれる事もなく
それまで以上に、より真摯に私の話をよく聞いて下さいました。
私は「人を見捨てない。」とは、こういう事をいうのだと
つくづくと噛み締めたものでした。
医者という強者の立場からは気に入らない人を切る事や
追い返す事などは、いとも簡単に出来るであろうに、しかし高橋先生にはそのようなお考えは1ミリもないのだろうと、私は感じ入りました。
私は高橋先生ほど謙虚な人を他に知りません。
「謙虚な人」とは「すみません。」「申し訳ございません。」と、直ぐに言える人ではなく、あなたはどう思っているの?と、人の気持ちを聞ける人だと私は考えています。
高橋先生は絶えず私に私の気持ちを聞いて下さる方です。
「あなたは、どうしたいの?」
「僕は何をすれば良いの?」
「もう、削るとこないよ。これで(手術)終わりにしても良い?」
このような謙虚な生き方を目標とし、でも、やっぱり私には出来ないだろうな....と、梅雨空を眺めています。
高橋先生は私が
「先生、90歳まで生きて下さいね。」と言う度に決まって
「無理だよ。」と、言われます。が、私は本気でそうあって欲しいと願っています。
投稿: | 2020/06/25 22:06