慢性前立腺炎の所見
当院には慢性前立腺炎で何年も苦しみ悩まれている患者さんが、日本全国からたくさん来院されます。それらの患者さんはそれまでいろいろな検査を行い、特に異常がないと診断され、最後には「気のせい」「ストレスが原因」とまで言われてしまうのです。
そこで私が超音波エコー検査を行うと、異常所見だらけです。先ずは、正常の前立腺の超音波エコー検査所見をイラストで示します。p
これは側面像のイラストです。膀胱縦走筋は細く、そして膀胱出口に向いおり、膀胱出口のすぐ近く5㎜に位置しています。これが正常の所見です。
今度は慢性前立腺炎の患者さんの超音波エコー検査所見をイラストで示します。どうです?正常所見とは全く違うでしょう?
❶膀胱出口がVの字に大きく開いています。通常は凹み程度。
❷前立腺内に前立腺結石が認められる。排尿障害が長期間だと、前立腺に石灰が沈着する。
❸膀胱三角部が厚くなっている。膀胱三角部は尿意を感じるセンサーだから、厚ければ厚いほど、頻尿や痛みが強くなる。
❹膀胱三角部の粘膜が硬化している。膀胱出口が十分に開かないで、排尿するので、出口が強く振動する。その結果、振動する膀胱三角部の粘膜が硬く肥厚する。
❺膀胱出口の粘膜が硬化している。膀胱三角部と同じ理由。
❻膀胱縦走筋が縮み変形している。排尿障害のため、骨格筋である尿道括約筋に強く引っ張られ、変形し方向が異常になる。
❻膀胱括約筋が顕著に認められる。膀胱括約筋は膀胱出口の左右に存在するが、排尿障害が長期間だと、膀胱括約筋が太り、側面像の中心にまで観察できる。
❼静脈瘤が認められる。排尿障害で膀胱内圧が高くなり、前立腺に圧力がかかるので、周囲の静脈が圧迫され拡張する。
以上が、慢性前立腺炎の患者さんのエコー所見です。一般の泌尿器科の医師は、こんなに大きく拡大して観察しないのです。このイラストの8分の1程度の大きさで、エコー所見を読むので、このような細かい異常所見があっても、正常範囲内と誤認するのです。
一般の医師に強調したいのは、エコー所見を通常の大きさだけで観察するな!と言いたいです。 この写真は実例です。ご覧のように、膀胱三角部が硬化像があります。縦走筋は出口に向いていませ ん。膀胱括約筋も肥大して正中に見えます。
次の写真も実例です。縦走筋が膀胱出口ではなく、縮んで塊になっています。膀胱三角部はが厚くなって中葉肥大と思われます。膀胱括約筋も確認できます。
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コメント
以前の先生のブログの記事で記憶しているのですが、内視鏡手術程は難しくても、お薬を継続使用する事で、病変箇所の器質的変化、改善は期待出来るのでしょうか?
【回答】
期待できるから薬を処方しているのでしょう。
投稿: ゴリ | 2020/06/17 07:15