膀胱括約筋がマッチョ太りする理由
慢性前立腺炎、間質性膀胱炎、難治性過活動膀胱の患者さんの多くに、エコー検査や内視鏡検査所見で分かることは、膀胱出口に存在する膀胱括約筋が厚くマッチョに太る(肥厚する)のです。それが、これら病気の症状を作る原因だと思っています。その理由をこれから説明します。
排尿時に、膀胱括約筋≡膀胱排尿筋(膀胱縦走筋)が綱引きをしながら、膀胱出口が排尿に有効なロート状に変形させて、尿が円滑に出るのです。ところが、膀胱括約筋≡膀胱排尿筋の綱引きバランスは絶妙です。そのため、チョッとでもバランスが乱れると、膀胱出口は十分に開かないのです。すると膀胱出口が狭いまま尿が流れます。
膀胱出口が狭い状態で尿が流れると、出口近辺の尿流は速くなります。尿流が速くなると、その周囲の水圧が急激に下がります。場所によって陰圧になるのです。これは流体力学の「ベルヌーイの法則」の現象です。
【1/2×速度2+圧力/密度=定数】ですから、要因の位置を変えると、
【圧力=定数×密度ー1/2×速度2×密度】になりますから、速度が速くなればなる程、圧力が低下するのです。ドキュメンタリーやドラマで、走るモーターボートや船のスクリューを海底から見ると、その周囲に細かい泡がたくさん観察できます。あればスクリューの回転で海水が急な流れなって、その周囲が陰圧になったからです。すると、海水の沸点が低下して水蒸気になり、それが泡として確認できるのです。
それと同様の状態が膀胱出口に起きているのです。膀胱出口を尿道から見た状態をイラストで示しました。出口の両サイドに膀胱括約筋があります。通常は膀胱括約筋⇔膀胱排尿筋のバランスで膀胱出口が問題なく開くのです。
ところが、そのバランスが崩れると、膀胱出口は十分に開かなくなります。出口が狭いままで排尿すると、尿流は速くなりジェット尿流になるのです。すると、「ベルヌーイの法則」で膀胱出口に陰圧がかかり、膀胱括約筋に負荷がかかります。膀胱括約筋の外側は膀胱排尿筋に引っ張られ、内側は「ベルヌーイの法則」の陰圧で引っ張られてしまいます。その結果、膀胱括約筋が筋トレしていることになり、次第に膀胱括約筋はマッチョになるのです。
膀胱括約筋がマッチョになると、膀胱出口はさらに狭いままで開かなくなるのです。膀胱出口はますます内側に引っ張られるので、膀胱括約筋がますますマッチョになるのです。すると、膀胱括約筋≡膀胱排尿筋とのバランスがさらに乱れるので、排尿障害が強化されるのです。開かない狭いままで排尿すると、膀胱出口はブルブル振動します。まるで口びるがプルプル震えているようです。この影響で膀胱三角部も振動します。この物理的振動が、次第に膀胱三角部を厚くするのです。また膀胱括約筋が厚くなると、比例して膀胱三角部を持ち上げるのです。
その結果、「尿意」を作る膀胱三角部が異常興奮して、大量の情報が脊髄神経回路に入力されるのでです。当然、脊髄神経回路は混乱して、本来の尿意神経ルートだけでは、情報を十分に脳中枢に伝達できないので、他の感覚のルートに接続(シナップス結合)して情報を流してしまうのです。その結果、頻尿・尿意切迫感だけでなく、痛み・シビレ・かゆみ・冷たさ・ベタベタ感など様々な不快な症状が出現するのです。それが、慢性前立腺炎・間質性膀胱炎・過活動膀胱・膀胱疼痛症の症状になるのです。
【実例】#22707男性45歳 尿道口の痛みがなかなか治らず、非細菌性慢性尿道炎と診断された患者さんです。抗生剤をいくつもたくさん内服しましたが治らないのです。エコー所見の側面像で、膀胱出口の12時の位置に膀胱括約筋が見えないのが正常なのに、この患者さんのエコー所見の側面像では、ご覧のように膀胱括約筋が白くハッキリ確認できます。膀胱括約筋が肥大して、膀胱出口の12時の位置に左右の膀胱括約筋が融合しているのです。この所見から膀胱出口の尿流はジェット尿流であることが想像できます。
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コメント
「僕はね、怠け者だから神様が僕に試練(病気)を与えたんだよ。じゃないと、僕は頑張らないからね。
この身体でも結婚もして子供も出来た。これを喜びとして生きていけば良いんじゃない?十分だと思うよ。」
高橋先生、本当に?
本当に心底、そう思っているの?
私は自分がこの病気になろうがなるまいが、自分なりに同じように努力しながら生きてきたと思うし、私も結婚も出来、子供も授かったけど、そんな人は世の中ごまんといる。先生は本当に満足しているの?自分の病気を恨んだりはしないの?
口にはしなかったけど、私はこのように思っていました。
あれから、数年たち今なら高橋先生が言われた事が少しは解ります。
私はこの病気がわかってから自分なりに、明らかに時間に対する概念が変わりました。
時間は有限であるって事。当たり前ですが、それは日常生活の中で有限だという事。
だから、夫や子供たちとの日常がもの凄く大切。
日常が大切だから時間がもの凄く大切。
高橋先生がご自身の大切な一分一秒を情報開示に全力で投入されていらっしゃるのは実は最愛のお子様たちの為ではないかしら?と、思うのです。
子を思う強い気持ちさえあれば、たとえ病気の身体でも
それなりに生きて行けるものだよ....
高橋先生は、あの日、きっとこのように言われたかったのかしら?と、思う今日この頃です。
高橋先生、2020年が始まりました。
桜、咲く頃、伺います。
どうぞ、お元気でお過ごし下さいますように。
【回答】
は~い!
投稿: | 2020/01/06 19:38