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いろいろな患者さん#26 男子不妊症

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慢性前立腺炎の30歳代の男性患者さんがお越しになりました。悩みの症状は頻尿と陰部の不快感です。原因は排尿機能障害である膀胱頚部硬化症が原因だったのです。そこで、排尿機能障害を改善するα1ブロッカーと症状を作っている膀胱三角部の治療薬であるβ3作動薬を処方しました。

すると、頻尿と陰部の不快感は次第に軽減してきました。ある日、別の相談がありました。それは不妊症治療についてだったのです。ご結婚なさって5年以上経つのですが、なかなかお子さんができないと言うのです。そして不妊治療の専門医で調べてもらったら、精子の運動率が悪いと言うのです。それが原因で妊娠しないのでしょうと診断されたのです。精子の運動率とは、患者さんの採取したばかりの精液を顕微鏡で観察し、動いている精子と動かない精子の比率を調べるのです。妊娠可能な運動率は、60%~80%以上です。しかし、40%以下であると妊娠の可能性は極端に低くなります。

……そこで私は、もう少し経過をみてて御覧なさいと説明しました。その理由を下記のように解説したのです。……さらに半年ほど経過したら喜びの報告がありました。何と妊娠したのです。……本当に良かった!

実は、一般的に精子の運動率は、その人の精子の能力個性だと思われているのです。すなわち、睾丸の能力が悪いので、運動率の高い完成度の高い精子が作られないからだと思われているのです。

【備考】 
昔は、正常な夫婦生活を営んでいて3年間子宝に恵まれない場合を『不妊症」と呼びました。最近では、その期間を1年間とされつつあるそうです。

その不妊症の原因で、ご主人側に原因がある場合を、「男子不妊症」と呼びます。
男子不妊症の原因が三つあります。

①精子数が少ない。
②運動率が悪い。
③原因不明。

 

①精子数が少ない

原因として、睾丸の機能低下と、精子が通る精管が閉塞している場合があります。
睾丸の機能低下は、生検で睾丸組織の採取して確認します。造精能力(精子を作る能力)がなければ、ホルモン刺激を図ります。

精管の閉塞は、精管に造影剤を注入して確認します。精管閉塞は手術で再吻合します。

②精子の運動率が悪い
精子の構造を解剖学書(解剖学アトラス・文光堂)で調べると、イラストのごとくです。赤く着色した部分がミトコンドリアです。ミトコンドリアはATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー物質から生体エネルギーを抽出する生体装置です。ミトコンドリアが発生するエネルギーを利用して、精子は鞭毛(べんもう)を活発に動かします。運動率が悪いということは、この鞭毛の活動がないということです。つまりエネルギー不足ということです。精子のエネルギーであるATPはどこにあるとお思いですか?精子にあると思いますか?実は精液の中の前立腺液の成分に、ATPが大量に含まれています。つまり正常な前立腺液が分泌されなければ、精子は動かないことになります。

治療としては障害を受けている前立腺を治せばよいことになります。ほとんどの場合、膀胱頚部硬化症という排尿障害が隠れています。実際に膀胱頚部硬化症の治療して運動率が高くなり、妊娠できたご夫婦が何組も存在します。

Spermailast

③原因不明患者さんによっては、精液が片栗粉のようなダマダマで排出される方もおられます。正常な前立腺液にはPSAという精液のダマダマをサラサラにする酵素が含まれています。前立腺に障害があると前立腺液は正常に分泌されなくなりますから、精液がダマダマになりやすくなります。すると、精子の動きも制限されますから、運動率も低下します。

これの治療も前立腺(膀胱頚部硬化症)の治療になります。治療すると精液がサラサラになり精子の動きが良くなります。

 

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