過活動膀胱・間質性膀胱炎などの治療手順
泌尿器科の主な病気である、前立腺肥大症、間質性膀胱炎、慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、過活動膀胱、慢性尿道炎、膀胱疼痛症、慢性骨盤疼痛症候群などの主な原因は、隠れた排尿機能障害が原因です。それによって、脊髄神経回路を介してさまざまな予想外の関連痛症状が出現します。それが一般的に原因不明・難治生の坐骨神経痛、腰痛症、慢性副睾丸炎、偽の精索静脈瘤、慢性胃炎、舌痛症、幻臭症、手足のシビレ、陰部搔痒症(偽の陰嚢湿疹・偽の腟炎)、頚椎症などがあります。
膀胱を3Dエコー画像で観察すると初めの写真が健常な人の膀胱出口周辺です。まるで一つ目小僧のようですね。2枚目の写真が排尿障害のある人の膀胱出口周辺になります。まるで鬼の顔のようです。膀胱出口の周囲に膀胱括約筋、膀胱三角部があります。健常な写真が実は私の膀胱の画像です。排尿機能障害があると、2枚目の画像のように膀胱括約筋が肥厚し、さらに膀胱三角部が肥厚します。膀胱括約筋も膀胱三角部も平滑筋ですが、知覚=尿意センサーでもあるので、肥厚すると頻尿や関連痛症状が出るのです。
それらを治療するために、膀胱出口周辺の膀胱括約筋・膀胱三角部の緊張と興奮を鎮めるクスリである、先ずはα1ブロッカーを処方します。排尿機能障害もα1ブロッカーで改善するのです。①ハルナール・タムスロシン②ユリーフ・シロドシンです。
膀胱括約筋・膀胱三角部の両方にα1受容体が分布(赤いイラスト)しているのであれば、α1ブロッカーだけで排尿機能障害の症状も改善します。しかしながら、これらのクスリは前立腺肥大症の排尿機能障害にしか保険適応がないため、40歳以上の男性にしか保険適応になりません。10歳〜30歳代の若い男性やご婦人には、エブランチルという弱い神経因性膀胱の治療薬しか保険適応にならないのです。エブランチルは効果が弱くで治療効果が得られない場合には、仕方なく①②を自費(慈悲)で購入していただきます。
α1ブロッカーだけでは症状の改善が得られない場合には、膀胱三角部にα1受容体が少ないと考えます。その場合は、β3受容体が分布(緑のイラスト)していると考えて、β3作動薬を使用しまします。③ベオーバ④ベタニスです。①/②+③/④の併用です。
患者さんによっては、主に膀胱体部に分布(青いイラスト)するムスカリン受容体が膀胱三角部まで広い範囲まで分布する場合には、抗コリン剤である⑤ベシケア⑥トビエース を使用します。
しかしながら、それでも症状が改善しない方がいます。その場合は、その患者さんの脊髄神経回路が非常に過敏だと考えるのです。その場合は、膀胱括約筋・膀胱三角部からの情報が正常に戻ったとしても、脊髄神経回路が過敏であると、正常の情報を身勝手に過大評価しているのです。それを避ける方法として、脊髄神経回路内の情報伝達を抑えるお薬が必要です。⑦トラムセット⑧リリカです。
症状は、どの受容体による依存度が高いかによるのです。例えば膀胱括約筋に依存度が高ければ、①②のα1ブロッカーが効くのです。膀胱三角部の依存度が高ければ、③④のβ3作動薬が効くのです。脊髄神経回路の依存度が高ければ、⑤⑥の神経鎮痛薬が効くのです。これらのことを熟知すれば、たくさんの患者さんを助けることが出来ます。
私は過活動膀胱・間質性膀胱炎の患者さんをこのように分類して治療するのです。過活動膀胱の治療薬だけでワンパターンの治療して、症状が改善するのは30%程度でしょうね?
【まとめ】以上のように、人によって受容体の分布も異なるのです。主な症状を作る膀胱三角部にα受容体が多ければ、α1ブロッカーだけでも頻尿は軽快します。しかし膀胱三角部にβ受容体しかなければ、β3作動薬を投与しなければ、頻尿は軽快しません。さらに膀胱三角部にα1受容体もβ3受容体もなく、ムスカリン受容体だけ場合には、抗コリン剤しか効かないのです。
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