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便意と尿意の感じる場所

大便を排便する際に、直腸内にウンコがあっても便意は感じません。なぜにそう思うかというと、前立腺ガンの確認するために直腸の触診をすると、大便の塊が指先に触れる患者さんがかなりおられるのです。つまり私の人差し指の長さ程度の位置に大便が存在しても便意を感じていないのです(笑)。また逆に、オナラのつもりでプッーとすると、たまたま下痢で便失禁する人がいます(笑)。オナラの圧力と液体の下痢便の圧力はほぼ同じなので、勘違いしてしまうのです。つまり、本当に肛門直前の圧力でなければ、便意を感じないのです。しかし、固い便が肛門手前に残っていると常に便意を感じます。そういう患者さんは、指を使って摘便しなければ便意感覚が無くなりません。要するに直腸全体で便意を感じるのではなく、直腸出口=肛門直前付近で便意を感じるのです。

発生学的に直腸と膀胱は一卵性双生児なのです。当然、便意を感じる直腸と同じで、膀胱の尿意を感じるのは、発生学的解剖学的構造学的に考えて、膀胱出口付近なのです。しかし、今の医学、特に泌尿器科では、膀胱全体で尿意を感じると間違って思い込んでいるのです。その誤解が、頻尿で有名な過活動膀胱や間質性膀胱炎の治療が的確に出来なくなり、患者さんを悩ませるのです。

以前にも、膀胱と直腸の発生学的構造について解説しました。

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まずは、胎児の4週の時点で、膀胱の基礎が出来上がります。それが、「総排泄腔」です。その形はとてもシンプルです。総排泄腔の前に「へその緒」が繋がっています。

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総排泄腔の前後の真ん中辺りにクビレが生じます。これを「尿直腸中隔」と呼びます。イラストでは「中隔」と示しています。

胎児の6週に成ると中隔というクビレがドンドン深くなっていきます。深くなるに連れ、総排泄腔の前は膀胱に、背後は直腸になろうと変形します。つまり、膀胱と直腸は、発生の途中では同じ臓器だったのです。ですから、出産後に成長して成人になれば、別の臓器と思われますが、神経的には脊髄神経で繋がっている方もおられます。その証拠に、膀胱炎になると便意を催すヒトもいれば、下痢すると頻尿になるヒトも存在します。

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胎児の7週に成ると、尿直腸中隔は完成して膀胱と直腸は完全に分離独立します。膀胱の末端は、体壁皮膚の外側まで通過して「尿道」になります。胎児の11週には男性の場合は、この尿道から芽が出て、それが「前立腺」になります。背後の直腸は、大腸(S字結腸)の末端と接続して、大腸は直腸まで連続します。

ですから、直腸も膀胱も構造的には同じなのです。直腸の便意が肛門直前だとすれば、当然として、膀胱の尿意も膀胱出口だと推察できます。その証拠に、排尿困難の患者さんに、膀胱留置バルーンカテーテルを入れると、尿が空っぽになるのに、尿意を強く感じる患者さんがたくさんおられます。その理由は風船(バルーン)が膀胱出口に接触するからです。

つまり、頻尿や尿意切迫感などを主訴とする過活動膀胱や間質性膀胱炎や慢性膀胱炎などは、すべてが膀胱出口の過剰な興奮が原因なのです。そのベースが排尿障害なのです。

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コメント

お世話になっております。先生のおかげで、今は夫婦で新潟のお城巡りをしております。オペ前(8ヶ月まで)には考えられないほどの痛みでしたから、本当に感謝しております。

わたしはずっと文系分野ばかりで、理系は毛嫌いしていたのですが、先生のブログを見はじめてから、超基礎的な化学や生物の本を買い込み読み始めました。

新しいことを学ぶのは、本当に楽しいです。

【回答】
あらゆる分野に興味を持つことは素晴らしいことです。

投稿: イノマタ | 2019/11/24 13:19

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