bar in the sky
自分が過去に書いた記事を読み返すと、薄ぼんやりしていた概念が明確になります。ですから、以前の記事を時々記載することにしました。
bar in the skyとは、何の事だかお分かりですか? 直訳で、空にかかる横棒?オリンピックで注目の棒高跳びのことを指しているのではありません。
これは、膀胱頚部硬化症の内視鏡検査で認められる特徴的な所見です。ところが、非細菌性慢性前立腺炎と他の病院で診断された、なかなか治らないの患者さんの内視鏡で必ずと言っていいくらい見つかる所見です。尿道から順々に膀胱に向かって丁寧に観察を進めると、尿道と膀胱の移行部、つまり膀胱頚部あるいは膀胱出口が狭くなっていて、絶壁の崖の下から空を見上げるように膀胱出口がはるか上に見て取れる様子を、bar in the sky、医学用語で膀胱頚部硬化症の「柵形成・さくけいせい」と呼びます。
前立腺部の尿道から膀胱出口を観察した時に、絶壁の崖を見上げたように見えるのが、「bar in the sky」 です。(私の描いたイラストです)
膀胱出口は十分に開いた状態が、正常の所見です。膀胱出口(膀胱頚部)が大きく開いていて尿の出がよい状態です。観察をすると、膀胱出口は容易に開いているのです。
膀胱出口(膀胱頚部)が、窄(すぼ)まっていて尿の出が悪い状態です。bar in the sky の所見が確認できます。排尿機能障害の患者さんは、排尿時に膀胱出口が開こうとしないのです。すると膀胱出口に物理的な負担がかかるので、次第に盛り上がって柵形成になるのです。
1年前から会陰部の痛みがあり、地元病院、国立N大学病院、S大学病院を受診して、「慢性前立腺炎」や「気のせい」の診断を受けた患者さんです。慢性前立腺炎患者さんのよくある病歴パターンです。最近では陰嚢に痒みが出てきてGoogle検索で高橋クリニックを探し来院しました。典型的なbar in the skyの所見です。機能性膀胱頚部硬化症です。
1年前から排尿障害が出現し、排尿するたびに残尿感が強く出ます。夜間は排尿で4回も目が覚めトイレに行きます。尿流量測定ウロフロメトリー検査をすると排尿障害が強かったのですが、前立腺肥大症はなく内視鏡検査する前から膀胱頚部硬化症を疑いました。内視鏡検査では、同じくbar in the skyの所見を認めました。機能性膀胱頚部硬化症です。
【正常所見】正常所見を知らないと異常が判断できないと思いますから、ここに提示します。ただし、正常の人は膀胱鏡検査まで行かないので写真が少ないのが現状です。
以前に高橋クリニックで前立腺肥大症の日帰り手術を行った患者さんです。手術後、しばらくしてから排尿障害が再び起きたので内視鏡検査を行うと、手術後膀胱頚部硬化症の所見が認められました。真ん中の暗い部分は膀胱頚部で直径が約3mmで硬くこれ以上開きません。前立腺部尿道が二段になっています。前立腺肥大症手術後の後遺症です。再度手術の必要があります。この方にはbar in the skyの所見は認められません。器質性膀胱頚部硬化症です。
4年前から排尿障害が出現し前立腺肥大症と診断され、他の病院で手術を薦められましたが気が進まず放置していました。排尿障害が次第に強くなり日帰り手術の高橋クリニックを知り当院を受診した患者さんです。前立腺肥大症の中葉肥大所見がありましたが、写真のように極端なbar in the skyの所見を認めます。患者さんから病歴を詳細にお聞きすると、30歳の頃から頻尿で苦しんでいたとのこと。その際に受診した医師は「気のせい」と診断したのでそのまま我慢していました。この患者さんの場合、膀胱頚部硬化症が若い時からあり、加齢と共に前立腺肥大症が加わったものと考えられます。機能性膀胱頚部硬化症+前立腺肥大症(中葉肥大型)です。
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